56 裏の世界から這い出るもの
「はぁっ!! はぁっ!! はぁっ!!」
息切れが止まらない。どのぐらい戦っていたのか分からない。
チーム・グレイスの魔法少女が一人と、ユーラル・トパーズがダウンしてしまい、残された5人でガーベラと戦っている。
「ぜぇっ!! ぜぇっ!! おのれ、昨日はあの体たらくだったのに!」
ガーベラも相当に息が切れている。これまでにない手応えだ。
正直、チーム・グレイスのメンタルが昨日と違うだけでなく、私の調子もかなり良かった。バレー部の時の経験で言うなら、今日はゾーンに入れている気がする。ガーベラの攻撃がよく見える。
「くぉおっ!!」
「うあっ!!」
ガーベラの渾身の攻撃からユーラル・ラベンダーを庇ったチーム・グレイスの魔法少女がまた一人、大ダメージを負ってしまった。しかし、構わずにガーベラに反撃をし、ラベンダーもそれに続いた。
爆発が起き、ラベンダー達は力尽きて変身が解け、周囲を飛んでいる小型船に回収された。これで私達は残り3人! しかし、ガーベラも結社の船の甲板に戻って膝をついた。
「逃さない!」
私はガーベラを追った。
「舐めるな!」
ガーベラが攻撃してくる。私はピンク色の残光を残してそれを避け、ガーベラにタックルを仕掛けた。
「ぐっ!!」
そのままガーベラを甲板に押し倒す。
「喰らえぇぇ!!」
ガーベラを掴み、ピンク色の魔法力を炸裂させた。
「離しなさい!!」
ガーベラは下から赤い闇の力をけしかけてくる。
負けるもんか! 今度こそ勝つんだ!
私は歯を食いしばり、ガーベラの反撃に抗った。
「ハート!!」
「私達も!!」
グレイス・キルシェ先輩達が私の元にやってきて、3人でガーベラに魔法力を振るう。ピンク二人分と緑がガーベラの赤に対抗する。
「ぐああああっ!!」
3人がかりの攻撃で、ついにガーベラの赤い闇の光を押し込み、私達の攻撃が通った。
勝てる! 今度こそおしまいよ、ガーベラ!!
「く、くそ……!!」
ガーベラからの抵抗がなくなり、やがて動かなくなった。
「か、勝った……」
「やった、やったよキルシェ……!」
キルシェ先輩達が抱き合う。
「やりました……、ね!」
私も歓喜の声を上げると、キルシェ先輩達は私も巻き込み、3人で抱き合った。
結社No.2のダリヴァーには負けっぱなしだけど、より大きな因縁のあるNo.3ガーベラに、ようやく勝った。周囲の空で魔法少女達の戦いは続いているから、まだ終わりではないけれど。
「ハート!! ハート!!」
「そこから離れろ!!」
「えっ?」
声の聞こえる方を向くと、導き手の小型船から理人や将さんが怒鳴っている。指を差しているので、そっちの方を見た。
「し、しまった!!」
いつの間にか結社の小型船はネクロズガカの方向に移動をしていたのだ。次元の裂け目から触手が複数こちらに向かってきていた。
「先輩達! 早く逃げよう!!」
「逃さない……!」
倒れているガーベラが何か機械を操作したようで、甲板に闇の障壁が展開された。
「こ、これは……!!」
「破壊しなければ外には出られない! けれど、もうそんな時間はない! 本物のネクロズガカに色を吸われて果てろ、魔法少女ども!!」
「皆!! いったん魔法少女形態を解除するんだ!! そうすれば!」
「馬鹿め、魔法少女形態を解除したらこの闇の障壁にやられるだけよ! チェックメイトだ!」
ガーベラが怒りの表情を浮かべながら叫んだ。
私達は何とか障壁を破壊しようとしたが、確かに壊れない! 触手は眼前に迫っている! まずい!!
キルシェ先輩が盾になるように私達の前に出た。私達も叫んだし、導き手の船からも叫び声が聞こえる。状況がスローモーションのようになる。
しかし……、触手は私達に辿り着く前に、異変を起こした。次元の裂け目側から、触手が砂のようになって消滅してくる。障壁に侵入し、今まさにキルシェ先輩の身体に到達した先端部までそれは届き、全ての触手が消滅した。
「なっ……!?」
「ええっ……!?」
「一体、何が……?」
私達だけではない。ガーベラも驚きで動きが止まっているし、戦場が静かになった。
次の瞬間、ネクロズガカと距離の離れた位置で爆発が起き、次元に裂け目ができた。そこから、4つの色、赤青黄紫の何かが飛び出してきた。
「こ、紅一……!?」
「リゼもいる……!!」
私達が呆気に取られている中、さらに裂け目が大きくなって飛行船も一つ飛び出してきた。
「はぁっ……!! はぁっ……!! 第一関門突破だな……」
「そ、そうね……。まだまだ!!」
紅一とリゼの声が聞こえた。
彼らはそのまま飛行船の甲板に着地した。
「あ、あれ、結社No.2のダリヴァーじゃない!?」
「ほ、本当だ……!!」
紅一達と一緒にいた黄色い闇使いはダリヴァーだった。もう、理解が追いつかない。
「ダリヴァー……!? まさか本当にネクロズガカを!! 4人も集めたなんて……」
ガーベラが悲鳴のような声を上げた。
すると、次元の裂け目から飛び出してきた飛行船から戦場全体に音声が流れた。
「色を吸う触手器官は破壊した!! だが、終わりではない!! 油断するな!!」
破壊した? それならもう魔法少女特攻の触手に警戒する必要はないってことなの?
そんなことを思っていると、今度は空が揺れているような風が起こり始めた。ネクロズガカが揺れている。
次元の穴から黒い塊が飛び出ているだけだった状態のネクロズガカだったが、穴からドンドンと黒い塊が這い出てきた。それらは質量を増し、一つの場所に集まる。やがて出てくるものがなくなり、集まった塊は別のものに変形していった。
そこに現れたのは、例えるなら黒い竜。翼が生え、手脚もあり、尻尾がある。しかし、顔が異常だ。目があるというより、色のない何かが光っている。鼻はなく、口の場所にあるものも何かが光っているような形状だった。




