55 リベンジ戦
リゼが魔法少女形態でもないのに物凄いパワーを発揮し、紅一もかつてない力を発揮して、私達の前から姿を消した。
気絶していたメンバーもいるから全員が見たわけではないけれど、チーム・ユーラルとチーム・グレイスで集まり、状況を整理しようとした。
「あの強さ。多分、ネクロズガカの眷属の巨人を倒したのはあの子達だったんじゃないかな」
「そうか。そう考えると辻褄が合いますね」
「リゼ……」
桃華先輩、理人、私が順に言った。
「どうして私達にも隠していたのかな」
「あれは闇の力だった。なら、魔法少女関係者には黙っているでしょう」
「うん。正直、あれだけの力を持った闇の勢力だったら、魔法少女連盟の重要案件になるよ」
「そういうことですか……」
浅黄の疑問にチーム・グレイスのメンバーが答えた。
「ネクロズガカのこと、何とかするって言ってましたよね」
「うん、桜乃。確かにそう言ってた」
ユリールが私の言葉を肯定する。
まさか、リゼも紅一も、人知れずネクロズガカを倒そうとしていたというのだろうか。魔法少女が勝てないなら別の力で戦う、と。
「リゼも紅一君も、想像以上にスケールの大きい子達だったんだね」
桃華先輩がそう言いながら下を向く。
「なんか、何も言えないですね……」
「ホントね……」
私は桃華先輩の隣で、彼女に寄りかかった。決戦の前夜にも、二人でいた時にリゼに会った。
思えば、あの時のリゼは悲観していないように見えた。リゼは、勝つつもりだったんだ。終わった後、魔法少女連盟に逮捕されることになるだろうに。
期待してしまう自分もいる。ネクロズガカを倒せるのなら、チーム・グレイスは生贄になんてならなくて済む。けれど、リゼも紅一もどれだけのものを失うことになるのだろう。
リゼは魔法少女でありながら闇に傾倒したことになるし、紅一は二度目の発覚だ。どんな対応が取られてしまうのか、想像もつかない。
私は、紅一から逃げた。気持ちを伝えられたのは驚いたけれど、それが原因というわけではない。理人との事に夢中で紅一と疎遠にしてしまったのが始まりだったし、赤い闇使いの正体だった事に混乱したのもある。
私達を助けようとしてくれたのは間違いないのだろうけれど、闇に堕ちる事と隣り合わせである事を思うと、どうしても向き合えなかった。私達と離れれば、闇の力を使う動機もなくなるだろうかと考えもした。
けれど、紅一もまたネクロズガカを倒そうとしているようだ。闇の力を使って。
紅一との向き合い方は、私とリゼは全然違っていたんだ。
◇
一晩の回復期間をおいて、再び魔法少女による結社への攻撃が行われた。こんな時に、ランク1位のチーム・ブレイブが別任務で一時離脱していたので、攻撃開始は昼過ぎとなった。魔法少女連盟も混乱しているのだろうか。
前日、チーム・グレイスが結社の襲撃を受けたので、援護が厚くなっている。私達、チーム・ユーラルも援護組に入った。
魔法少女連盟は依然として封印の儀式を行おうとしているけれど、私達は、紅一やリゼ達の動きが気になった。人知れず、戦っているのだろうか。
「結社No.1とチーム・ブレイブが接触!」
飛行船に乗っている職員から情報が伝えられた。昨日は出番のなかったチーム・ブレイブだが、どうやら結社No.1のブロードと激突しているらしい。しかし、以前、ランク2位のチームと合同でも倒し切れなかった相手のはずだ。恐らくランク2位のチームも投入されることになるだろう。
「桜乃、あれ」
「え?」
紫帆が窓から見ている先に結社アルコの小型船があり、甲板にNo.3のガーベラが立っていた。こちらに気づいているようだ。
「ガーベラ……!」
「きっと、あいつを倒さないと何も始まらない」
「そうね。行きましょうか」
チーム・グレイスからも戦うべきだという声が出た。生贄である彼女達が消耗することを職員は気にしたが、昨日のこともある。結局、今回は結社アルコがいるからこれまでの封印の儀式と全く違うのだ。
チーム・グレイスとチーム・ユーラル合同で、ガーベラを倒しに行くことにした。
「リゼも言ってた。上手く連携すれば負けないって」
「うん、やろう、桜乃!」
私と桃華先輩はそのまま魔法少女に変身した。他のメンバーも次々と変身する。私とチーム・グレイスのメンバーはアルティメットフォームだ。
No.4のノレクスと、私達が会った事のないNo.6は、他の魔法少女達が頑張って抑え込んでくれていた。No.5とNo.7は魔法少女連盟が拘束しているし、No.2のダリヴァーは姿がないらしい。
だから、私達はガーベラとの戦いに集中する。
甲板から飛び出し、ガーベラの待っている小型船まで飛んだ。
「昨日の今日でご苦労なことね、魔法少女達。リゼと奈雲紅一はいないのね」
「リゼ達は、どこかへ行ってしまった。きっと……」
「ネクロズガカを倒すために何かやっているようね。確かにとんでもない強さだったけれど、流石にネクロズガカは倒せないでしょう」
ガーベラはステッキを取り出した。
「あなた達だけなら私一人で十分。今度こそ生贄もろとも消えてもらう!」
ガーベラのステッキから赤い光がほとばしる。
しかし、何度も見たその光の隙をつき、私は思い切って突撃した。私の通った経路にはピンク色の残光が残る。
「へぇ」
ピンク色に光る拳をガーベラに繰り出し、ガーベラは手に赤い光をともしてそれを受けた。ユーラル・アクアがいればここで追撃をしてくれる気もしたが、今回はいないから私達だけでやるしかない。
その想いを汲んでくれたのか、ユーラル・トパーズとユーラル・ラベンダーも突撃してきた。
トパーズの黄色い攻撃とラベンダーの紫の攻撃を、ガーベラは赤い光で受け流す。
「ふっ、甘いわね!」
ガーベラが一瞬後退し、ステッキを横薙ぎにすると、赤い爆発が起きた。私は防御姿勢を取ってそれを受けたものの、トパーズとラベンダーは態勢を崩しながら吹っ飛んでしまった。
「はぁぁ!!」
チーム・グレイスの魔法少女達が、ガーベラの隙を見逃さず、攻撃に移る。青と緑とオレンジの光が発火し、いくつかはガーベラに直撃した。さらに、グレイス・キルシェ先輩のピンク色の魔法光弾がガーベラに届く。
「あらあら、昨日よりも動きが良いわね」
ガーベラは余裕の声色だったが、着実に攻撃は届いていた。
恐らく、チーム・グレイスの皆の精神状態も違うのだと思う。昨日は生贄として責務を全うする想いに押しつぶされていたのだろうが、紅一やリゼが思わぬ行動に出た。今日の皆は、何かが変わると思っているのではないだろうか。
ガーベラはちょくちょく理人や将さんを狙ったが、誰かが着実にカバーし、攻撃を当てさせない。
「今!!」
私は両手にピンク色の光刃をまとわせ、ガーベラに近接攻撃を仕掛けた。
「うっ! 目障りな攻撃を!」
ガーベラが慌ててそれを捌く。昨日、紅一が赤い闇の力で繰り出した攻撃だ。紅一ほどの威力は出せないかもしれないけれど、見よう見まねでやってみた。ガーベラのメンタルに少しでも影響が出れば儲けものだ。
「ハート!!」
「っ……!!」
キルシェ先輩の声が聞こえ、私は身体を横に移動させた。キルシェ先輩がそのままガーベラにピンク色の魔法衝撃を与えた。
「なにっ!?」
ガーベラが大きく態勢を崩した。技が当たった場所にピンク色の残光が舞っている。
「グレイス・キルシェぇ!!」
ガーベラはムキになったようで、キルシェ先輩に突撃する。冷静さを欠いた行動だ。その隙をついて、私を含む他の魔法少女達の攻撃がガーベラに届いた。
しかし、ガーベラも相当にタフだ。いつまで経っても、戦闘に決着がつかなかった。




