54 災厄との戦い
ネクロズガカは俺達を異物と判断したのか、攻撃してくるようになった。色を吸い尽くされた後とはいえ、魔法少女達の遺体を解放したことに反応したのかもしれない。
体組織から黒い光弾を放ってきたり、魔物をけしかけてきたりする。この魔物達も眷属なのだろうか。
しかし、俺達はそれらを難なく撃退し、さらに深部に向かう。ネクロズガカの鼓動が近づいているのが分かった。
途中、おかしな広間に入った。中には大きなカプセルが複数あり、中央には色をなくした男らしき影が椅子に座っている。
「あれは何者だ?」
「分からない」
ダリヴァーの言葉に俺が答えた。
その色のない男は、俺達を見据えると立ち上がって口を動かした。
『間もなく我々の悲願は成就する。ネクロズガカが世界を滅ぼすのだ』
「声が!?」
「頭の中に!?」
古代人と思われるその男の声が、俺達に理解できる言葉で頭の中に響いているようだった。
「でも、あれはきっと抜け殻よ。もう生きてはいない。それでも動くなんて、なんていう執念」
色のない男に向かってリゼが言う。
『封印などと小賢しいことを。だが、封印も効果が薄れてきているぞ。封印ができるのはせいぜい後二回だ』
「封印のことまで判断できるの」
「後二回なんていらないさ。今日、ここで終わらせる」
リゼと俺が言った。
『私の娘を奪った魔法少女。まもなくお前達全員に地獄を見せてやれるぞ。そして、魔法少女などに守られていた世界も、必要ない!』
色のない男の声が叫びのようになって頭に響いた。
何があったのかは知らない。結局、ネクロズガカの誕生の背景には、この男のように魔法少女に恨みの感情を持つ者がいたということだ。結果として、魔法少女だけでなく、多くの人間を巻き込んで苦しめることになった。
「それは、ただのあなたの夢だ。それも、結局は自分本位の」
リゼが言った。言葉が届いているのかは分からなかったけれど。
俺達は、喚き続ける男の横を通り抜け、先へ進んだ。
すると、通路に並行して走っていたネクロズガカの肉体の中に、触手が多数存在して、たまに色が光る部位を発見した。
「あの部分、これまでに魔法少女から吸い取った色が溜まっているんじゃないか」
「なら、あそこが色を吸い取る器官なのでしょうか」
俺の言葉にハヤテが続く。
色を吸い取る触手の大元が目の前にある器官だというのなら、破壊する価値はありそうだ。
すると、その部位が蠢き始めた。俺達が魔法少女ではないからか触手が引っ込んでいき、代わりに大きな腕が二つ生え、巨大な目が一つ発現した。
「あたし達を外敵だと判断したみたいね」
「来るぞ!」
腕から無色の光弾が飛んできた。
各自、残光を残してそれらを避ける。俺が通った後には赤い残光、リゼの所には青、ダリヴァーは黄色、ハヤテの軌跡には紫の残光が残った。
「これもネクロズガカとの戦いの一部だな!」
ダリヴァーが接近し、右手を前に突き出して左腕を振りかぶり、黄色い光を帯びて地面に向かって振り抜いた。ダリヴァーの得意な大技だ。
そこへリゼが、サイファーギアの先端に展開した青い光刃で斬撃を放つ。すると、ネクロズガカの身体が揺れた。効いている手応えがあった。
ネクロズガカの目が光り、黒い炎が渦を巻いて飛んでくる。
「うおおっ!」
俺は赤い光をまとわせた右腕でそれを思い切り叩きつけ、別方向に弾き飛ばした。
間髪入れず、ネクロズガカの腕が周囲を横薙ぎにしてくる。
「はぁっ!」
しかし、ハヤテが高速に動き、紫の波動が二つの腕を弾き返した。
ダリヴァーは接近戦を挑み、黄色い光の拳を連打する。リゼも中距離から青い光弾を連射する。俺も近接に近い位置で赤い光刃を振るい、ハヤテはリゼと同様に中距離から紫の光弾を放つ。
「流石に硬い!」
「こう来なくちゃよ!」
俺とダリヴァーの声が揃う。
戦いは続き、徐々にこちらが被弾することも多くなっていった。
「ぬっ!!」
「ぐっ!!」
ダリヴァーとリゼが攻撃を喰らって吹っ飛ばされる。俺とハヤテがカバーに入って追撃は許さない。しかし、その俺やハヤテも少しは被弾してしまう。
可能な限り回避をするも確実ではなく、ダメージの蓄積は避けられなかった。しかし、それは相手も同じで、少しずつ動きに余裕がなくなってきているようにも見えた。
「いいねぇ、いい相手だぜ、ネクロズガカ!」
一人戦う理由が違っているダリヴァーはそんな楽しそうな発言をしている。
「紅一! 一発撃とう!」
「分かった! ダリヴァー、ハヤテ! 少し頼む」
「了解です!」
「へっ、やってみろ!」
俺はリゼの左隣に立ち、赤い闇のパワーを右手に込める。リゼの右手のサイファーギアからの青いフィールドの密度が一層増し、俺の右手にまとわりつく。
右手をネクロズガカの方へ向け、リゼも左手をそちらに向け、パワーを込める。
俺の右手から極太の赤いビームが発射され、リゼの左手からも物凄い出力の青い波動が放たれた。
俺の赤とリゼの青が混ざった部分は、ピンク色の魔法少女が放つような神秘的な色のようになり、二人の連携技はそのままネクロズガカを直撃した。
辺りに地響きが巻き起こる。ネクロズガカは声を発する器官はないから声こそ出さなかったものの、肉体全体でダメージを表しているかのようだった。
「おー、凄ぇ威力だな」
「流石ですね」
ダリヴァーとハヤテから声が飛ぶ。
奈雲一族によって編み出され、受け継がれてきたものの、サイファーギアなしでは使いようのなかった技だ。しかも、サイファーギアの介入があるおかげで、トータルの威力は何倍にもなっている。
ダメージを目視確認すると、ネクロズガカの色吸収器官から生えていた左腕が消し飛んでいた。しかし、右腕はダメージを負った様子があるものの、まだ健在だ。
「まだだ、油断するな!」
「今のは連発はできないからね。引き続き4人で攻めよう!」
俺とリゼはそう言うと、再び通常攻撃に加わっていった。




