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48 裏の世界へ

 リゼは祖母である凜香(りんか)と会っていた。大きな窓のある大部屋で、座って空を眺めている。


「私が生きている内に、またあの災厄を見ることになるとは思わなかったわ……」

「やっぱり見るのは辛い?」

「そうね。あの怪物のせいで風香(ふうか)とお別れになってしまったんだもの」

 風香というのは凜香の妹であり、リゼの大叔母にあたる人物だ。


 魔法少女として活躍し、ネクロズガカ封印の生贄として身を捧げた。


「風香達を生贄にした魔法少女連盟も憎かったけれど、私はやっぱり元凶であるネクロズガカが許せなくてね」

「そこから闇の研究に没頭したんだよね。それでここまで来たんだから、凄いことだよ」

「いいえ、きっと他にも同じ想いだった人はいるはず。リゼのお友達の奈雲(なぐも)さんもそうだったのでしょう」

「うん、そうらしい。きっと、紅一(こういち)の一族や、あたし達以外にもネクロズガカに挑んだ人はいるんだと思うよ」


 凜香はリゼを見つめる。当然、凜香の想いを継いだのはリゼだけではなく、凜香の息子、すなわちリゼの父親も同じだ。リゼの母親も、研究部門にはいないものの、密かに社内外の工作などを手掛けている。


 それでも、リゼが特殊な才能を持って生まれてきたのは、凜香達がやってきた研究を加速させた。研究成果であるサイファーギアは、起動するだけならリゼがいなくてもやりようはあるのだ。しかし、それでは単に闇を浄化する装置に過ぎない。


 サイファーギアが喰らった闇をパワーに変えて自在に使いこなせるのは、リゼが持っている特殊能力だった。


 サイファーギアが成果として形になってきたタイミングでリゼが生まれてきたのは、打倒ネクロズガカを誓った全ての先人達の執念がそうさせたのではないかとも、凜香は思っている。


「リゼには、色々と背負わせてしまったわね」

「背負ってるなんて思ってないよ、おばあちゃん。あの災厄はくそったれ。あたしがあれを倒したいと思ってるからやっているだけだよ」

 リゼはいつものような飄々とした表情で言い切る。凜香はそんなリゼを笑顔で見つめ、頭を撫でた。


「見てて、おばあちゃん。きっと、あたし達が終わらせる」

「ありがとうね。頑張れ、リゼ」

「うん」

 凜香は、危なくなったら逃げたっていいとでも言うべきかとも思った。しかし、リゼの表情は揺るぎない。自信でも使命感でもない。ただ、やるべきことをやって帰ってくるよという顔だと、凜香はそう思った。だから、応援の言葉だけをリゼに伝えた。


 しばらくすると、リゼは部屋を出ていった。



    ◇



 リゼは、紅一とダリヴァーとハヤテの待つミーティングルームへ移動した。中では職員達も作業をしている。


「もういいのか?」

「うん。おばあちゃん、頑張れってさ」

「そうか」

 紅一と軽く話した後、リゼも席についた。


「で、今回の生贄にはチーム・グレイスが選ばれたんだってな」

「正直、そうなるんじゃないかと思ってた。全員がアルティメットフォームになれるし、封印の地が日本にあるから、日本のチームってことで可能性としては高いんじゃないかと」


 生贄の情報が共有されているのは、桜乃(さくの)がチーム・ユーラルに話したからだった。その情報をリゼが持ってきたのだ。


「桜乃は思い詰めちゃってたよね」

「あいつはまあ、そうだろうな。チーム・グレイスへの想いも強かったし」

 リゼの言葉に紅一が続く。


「僕の知らない話ですね……」

「お前は魔法少女とはほとんど絡んでねーからな」

 ハヤテとダリヴァーも言葉をかわす。


「ま、魔法少女の連中のことだから、導き手(ビーコン)との想いがどうとか、愛情深くお涙頂戴物語でも展開してるんじゃねーのか」

 ダリヴァーのその辛辣な言葉に、紅一もリゼも苦笑いを浮かべる。


「でも確かに、あっちはあっち。こっちはやるべきことに集中しよう」

「チーム・グレイスが行動を始める前に動かないといけないか?」

「いや、その前に封印の儀式は結社アルコが妨害するだろうぜ。オレが結社にいた時からそういう話になっていた」


 封印の儀式は、ネクロズガカの身体の大部分が存在している次元の狭間、いわゆる裏の世界に突入して行われる。空に浮かぶ、ネクロズガカの一部の近くには次元の歪ができるので、そこから突入するのだ。その裏の世界ごと、この世界とは遠い所に追放する。


 結社はそこを妨害してくるだろうというのが、ダリヴァーの情報だった。


「僕達も、裏の世界に行くんですよね?」

「うん。こちらの世界に顕現しているネクロズガカは一部分に過ぎないからね」

「裏の世界にある本体の方を叩くってわけだよな」

「でも、そうなると僕達も結社とやらに妨害されるんでは?」

 ハヤテのその疑問はもっともだった。


「だろーな。結社の連中を蹴散らして突入ってのも一つだぜ」

「けど、そこは紅一が別の手を持ってる」

「ああ。奈雲一族が考えていた、裏の世界への行き方があってね。ある密林に生息している魔物、次元竜を利用する」

「次元竜は次元に穴を開ける能力を持ってるんだって。その穴から、ネクロズガカ本体のいる裏の世界に突入できる」

「なるほどですね」


 魔法少女達がこれまで利用してきたのとは違う方法で裏の世界へ行き、ネクロズガカ本体を叩く。それが戦いの流れだった。

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