45 闇使いチーム出撃
リゼから、ネクロズガカの眷属が出現したという情報を得た俺達は、ダリヴァーやハヤテ、数人のスタッフと共に現場に急行することにした。
魔法少女連盟の魔道具のようなものは使えないので、自動車での移動だ。リゼと合流できなければ俺達も無茶はできないので、それで向かうしかなかった。
分かっていることは、眷属の巨人を倒せずに、魔法少女達が敗走しているということだ。ランク4位のチームがいてもその結果とは、俺達も予想していなかった。
「眷属というのは、そんなに強いんですか?」
「緊張するな、ハヤテ。俺達ならきっと大丈夫だ」
「紅一も言うようになったじゃねーか。へっ、ネクロズガカを倒そうって時に眷属なんかで足踏みしている場合じゃないからな」
そんな会話をしつつ現場に向かっていると、途中でリゼが手を振っていた。自動車が停止し、リゼが乗り込んでくる。
「リゼ、どうだった?」
「魔法少女はいったん退避になった。まだ残っているチームもいるし、活動拠点が近いチームは一度引き上げたりもしている」
「いずれにせよ、近くには魔法少女が大勢いるってことだな」
「俺達の存在を知られるリスクはあるけど、俺としては倒す方が良いと思う」
「うん、あたしもそう思う。放ってはおけないし、今後の指標にもなるからね」
基本的に全員同意見だった。俺達のチームとしての実戦も重ねておく必要があるし、その意味では絶好の相手だ。
「魔法少女連盟を相手にどこまで通じるか分からないが、人払いの工作はしておくよ」
スタッフの一人がそう言い、俺達は頷き返した。
◇
巨人近くに作られたという魔法少女の拠点とは遠い位置から、俺達は山に入って巨人の元を目指した。巨人は目覚めたばかりで混乱しているようで、まだ人里を攻撃したりはしていない。そうなる前に叩く。
「あれだな」
ダリヴァーが呟いた。その方向には確かに色のない黒い巨人がゆっくりと歩いている。
静かに巨人に近づくと、巨人は俺達に気づいたようで振り返ってきた。その目は、先ほど魔法少女の集団を撃退した余裕が感じられるものだった。
俺が先頭に立ち、リゼがその隣に出る。
「やあ、さっきぶり。魔法少女の総出で勝てなかったけど、今回は取らせてもらう。サイファーギア!」
リゼの声にサイファーギアが電子音を返し、青いフィールドが展開された。
「先手だぜ!」
ダリヴァーが魔物化した左腕に黄色い光をまとわせ、巨人を殴りつけた。巨人は驚愕の目を浮かべ、上体が後ろに傾く。
「今!」
すぐさまリゼがサイファーギアから青いビームを発射。追撃を受けた巨人は見事に背中から転倒した。
「行くぞハヤテ!」
「はい!」
俺は両手に赤い光刃を展開し、ハヤテも両手に紫のオーラをまとわせて、高速でステップを踏みながら倒れた巨人を右へ左へ斬りつけた。
巨人は焦ったような声を上げ、態勢を立て直して立ち上がる。身体中に俺達の攻撃の痕が出来ていた。
「ほう、流石は魔法少女達の猛攻を退けただけはある。タフだな。だが……!」
ダリヴァーはさらに攻撃態勢に入る。巨人は今度は迎撃をしたが、その攻撃すらダリヴァーは受け止めた。それを見た残りの3人の攻撃が巨人を襲う。
俺が放つ赤い光弾、リゼの青い光線、ハヤテの紫の光が飛び交った。赤黄紫は、サイファーギアの青に巻き込まれた瞬間だけ、淡い神秘的な色と化す。着弾した巨人は、たまらないといった様子で暴れまわる。
これは、行けるな。
そう思った。こいつに勝てないようではネクロズガカになど手は届かないと感じた気持ちに嘘はないが、俺達のチームのパワーを実戦で試すと、この巨人程度の相手なら無理なく倒せると実感した。
俺やダリヴァーの力は直接戦ったりして分かっていたことだが、ハヤテも相当に強いし、何より闇使い3人が発する闇を吸収するリゼのサイファーギアの力が凄まじい。俺達は不自由なく戦えるようになる上にリゼとサイファーギアはパワーを増すのだから、強力なシステムだ。
巨人は咆哮を上げ、口に色のない闇を集中させ、放ってきた。リゼはサイファーギアを地面に突き立て、青い防御壁を展開し、それを受け止めた。たちまちその闇が四散する。
間髪入れずに俺達は4人で大威力の技を放つと、巨人はついに爆散した。
「ふむ、あっけなかったな」
ダリヴァーが呟いた。
「ふぅ、やったな」
「お疲れ、紅一。これ、手応えあったんじゃない?」
「そうだな。正直、ここまでできるとは思わなかったけど」
俺とリゼはお互いを労った。
「さて、これからどうするんです?」
ハヤテが辺りを見渡しながら言った。
「巨人が倒されたことは魔法少女達もすぐに気づくだろう」
「うん。余計な詮索をされない内に撤収しよう」
「リゼはチーム・ユーラルに合流しないといけないよな」
「そうなるね。まあ、何か聞かれても知らぬ存ぜぬで通すよ。今はまだ、知られたくないから」
◇◇
巨人が何者かに倒された。
その情報はすぐに魔法少女達にも共有された。ランク4位のチームがいて大勢で攻撃してもびくともしなかった巨人が倒されたのだ。混乱する者も少なくなかった。
チーム・ユーラルも、集まった上でその話題に持ちきりだった。
「一体誰があんな化物を!?」
「不明だよ。調査中とのことだ」
桜乃の言葉に理人が反応する。
「もしかして、結社アルコ?」
「いや、あいつらはネクロズガカって怪物に世界をリセットさせたいわけでしょ?」
「ならあの巨人を倒すのはおかしいよね」
ユリールと浅黄と紫帆も思い思いに言葉を発する。
チーム・ユーラルは紅一のことをよく知っている。純粋に超パワーを持った人物として、紅一が疑われてもおかしくはない。だから、リゼは先にその情報に触れることにした。
「一応言っておくけど、紅一はうちの施設にいるってさ」
リゼのその言葉は当然嘘だ。それでも、まだリゼ達の暗躍は公になるべきではないのだ。
「そっか」
桜乃が神妙な顔つきで答えた。心のどこかでその可能性を疑っていたのかもしれない。
魔法少女でも結社アルコでもない勢力による攻撃。その結論が出るのに、時間はかからなかった。




