44 災厄の眷属
高校の時間が終わると、あたしはチーム・ユーラルの活動に参加する。それが終われば紅一達と闇使いの活動に移るわけだが、この日はチーム・ユーラルの活動が重くなりそうだった。
「ネクロズガカの眷属が出現!?」
「ああ。並の魔物とは比較にならない」
「チーム・ユーラルは討伐戦の援護をするよ」
桜乃、理人、ユリールが順に言った。
「ついに現れたのね……」
「大丈夫かな……」
浅黄と紫帆が不安そうな声を上げる。
「眷属が出てきたってことは、ネクロズガカ本体の出現も近いんでしょ? そっちの対策はどうなってるの?」
あたしは思い切って聞いてみた。きっと理人もユリールも知らないだろうけれど。
「そちらは魔法少女連盟の上層部が受け持っている」
「ボク達には情報は降りてきてないよ」
「そっか」
そうだと思った。けれど、ネクロズガカの再封印のための生贄の選抜は進んでいるはずだ。アルティメットフォームが必須になるから、必然的に上位チームに白羽の矢が立つことになる。
チーム・ユーラルは桜乃だけがアルティメットフォームになれるが、一人のみではまず選ばれない。
勿論、封印の儀式などさせるつもりはないが。
◇
あたし達はとある山まで移動した。魔道具の乗り物による空中移動だ。既に眷属と魔法少女の戦いが始まっている。山中で魔法少女の攻撃による色のついた光線や爆発が発生していた。
「ランク4位の魔法少女チームが来てくれているようだけど」
ランク3位で、あたし達もよく知るチーム・グレイスは、エースのグレイス・キルシェこと桃華先輩が未だ療養中だった。だからここはランク4位をメインアタッカーにしたのだろう。
眷属は色のない、真っ黒な巨人だった。都市部までの距離はまだあるものの、侵攻されてしまったら大きな被害は免れない。
巨人が全身から放つ黒い光弾に魔法少女達は押され、巨人の動きを止めることすらできていない状態だった。
「理人、最初からアルティメットフォームで行くわ!」
「分かった!」
ユーラル・ハートがアルティメットフォームに変身し、空から下降する。ユーラル・トパーズとラベンダーも続き、その後にあたしも続いた。
「加勢します!」
ユーラル・ハートが叫びながらピンク色の魔法光弾で巨人を攻撃する。
「チーム・ユーラルね!」
「ありがたいわ!」
ランク4位のチームから声が上がる。ユーラル・ハートがアルティメットフォームになれることといい、チーム・ユーラルの名前は魔法少女の中で浸透してきているようだった。
「け、けど……!」
「こ、これは……!」
周囲で援護する魔法少女達からは悲観的な声が上がっている。アルティメットフォームが3人いるランク4位のチームの猛攻を受けても倒せないようだったから、アルティメットフォームが一人増えても厳しいと思ってしまうのは無理もないことだ。
「背後から攻めます!」
巨人の後ろに展開していた魔法少女達が一斉に攻撃を放つ。多種多様な色の爆発が巨人の背中で起きた。
しかし、巨人は意に介することなく尻尾を一振りする。直撃を受けた魔法少女達から悲鳴が上がった。
「このぉ!!」
ユーラル・ハートが叫びながらピンク色の魔法ビームを放つ。援護になるよう、あたしも青い魔法光弾を飛ばした。ユーラル・トパーズやラベンダーも黄色と紫の攻撃をしたし、ランク4位チームの魔法少女達も攻撃に参加した。
「はぁっ、はぁっ!!」
「な、なんてこと……」
「これだけやってもダメなの!?」
あちこちから悲鳴とも取れる声が上がる。
巨人は腰を落とし、右手を横薙ぎにした。射程内にいた魔法少女達が吹っ飛ばされていく。
「危ない!」
ランク4位チームの魔法少女が、一人の魔法少女を突き飛ばして窮地を救ったが、そのまま巨大な手に掴まれてしまった。
「ぅぁああああっ!!」
巨人の手が魔法少女を握りつぶそうとする。
「まずい!」
「その手を離しなさい!!」
ランク4位チームの他の魔法少女や、チーム・ユーラルの皆で必死に右手に攻撃を加える。巨人は左手を使ったりしてあたし達の攻撃を振り払った。
「はぁぁぁぁああ!!」
ユーラル・ハートが渾身の攻撃を右手首に喰らわせると、巨人はついに掴んでいた魔法少女を離した。カバーにはあたしが入り、魔法少女を抱きかかえてその場を脱出した。
「ダメだ、退避!!」
「全員、下がるんだ!!」
各チームの導き手や妖精から声が上がった。その声に従い、魔法少女達は後退を余儀なくされた。
◇
巨人から少し離れた位置に拠点が作られ、退避してきた魔法少女達が集結する。
「結社といい、あの怪物といい、一体何なのよ……」
「ランク4位がいても勝てないなんて……」
周囲から悲痛な声が上がる。結社アルコが活動を始める前は、どの魔法少女もそれなりに邪気を祓う活動ができていたはずだ。ここへ来て、どうにもならない事態が続いていて、精神的にも参っているのだと思う。
「くそっ!」
変身を解いた桜乃が壁を殴りつけていた。あたしはそんな桜乃の隣に並ぶ。
「桜乃はよくやってるよ」
「でも、無力だわ……」
桜乃の肩を抱いてさする。浅黄と紫帆は、理人やユリールに言葉をもらっていた。
「……」
あたしの立場は微妙だ。奥の手を隠しながら魔法少女をやっているのだから。
ふと、巨人のいる方向を睨みつけた。
魔法少女達の悲観した空気とは裏腹に、あたしの考えていることは違っている。眷属さえ倒せないならネクロズガカの打倒なんて夢のまた夢。
恐らく、魔法少女連盟はいったん引くだろうから、その間に、あの巨人はあたし達で倒す。




