43 新しい仲間
「ハヤテ!?」
大部屋の入口から声がして、中年の女性と神社の装束らしき服を着た老人が入ってきた。
「き、君達はここで何をしているのだ!?」
老人が血相を変えて叫んだ。
「静かにしろ。闇に堕ちたガキから闇を吸収しているところなんだからよ」
「き、吸収!? 一体どういう!」
ダリヴァーの言葉に女性が続いた。
「魔法少女にバレないよう、このハヤテという子をここに封印していたんでしょ?」
「そ、そうだ。魔法少女にバレたらハヤテは討滅されかねんから。し、しかしその青い光は一体……?」
「順を追って話します」
リゼ、老人、俺の言葉が続いた。さらにリゼはサイファーギアのことを説明した。
「そ、そんな……。闇の侵食から回復する手段がこの世にあったなんて……」
「俺も、驚いていますよ」
女性の言葉に俺が続く。
ハヤテは神社に封印されていた妖刀を好奇心で抜いてしまったらしい。そこで妖刀の闇の力に飲まれてしまったそうだ。神社の精鋭で何とか押さえつけ、ここに封じたとのことだ。
女性はハヤテの母親だった。一時は魔法少女の助けを借りようと思ったこともあったそうだ。しかし、神社の人達に止められて今に至っていたとのことだった。
「ふぅ、これで吸い尽くしたかな」
リゼがサイファーギアの青いフィールドを解除し、俺がハヤテをおぶった。
「詳しい話は別のところで。もう邪気は無いから魔法少女が反応することはないよ」
リゼがそう言ったが、魔法少女もやっているリゼの言葉なので不思議な感じはする。
その後、ハヤテの母親と老人を連れ出した。
ハヤテはしばらく目を覚ましそうになかったので、俺達は宿に戻り、スタッフ達に報告をした。ハヤテを交えて話すのは後日ということになった。
◇
翌日の朝早く。俺はリゼやダリヴァー、数名のスタッフと共に神社に向かった。ハヤテはいったん神社に預けられていたからだ。到着すると、ハヤテも起きていて、ハヤテの母と神社の老人が出迎えてくれた。
「ありがとうございました!」
部屋に集まるなり、ハヤテの母に頭を下げられた。
「ハヤテが元に戻れるなんて、何とお礼を言っていいか!」
「へっ、礼はしてもらうことになるけどな」
「おい、ダリヴァー!」
「んだよ紅一。結局オレ達はそいつをスカウトに来たんだろうがよ」
「まあ確かにそうなんだけど、あんたは話をすっ飛ばしすぎ!」
リゼがダリヴァーに文句を言い、改めてハヤテ達に向き合った。
「ハヤテをスカウト?」
「それは一体どういう……」
「昨日見た通り、この杖、サイファーギアの範囲内なら闇の力を行使することができる。妖刀に飲まれることもない。ハヤテ君には妖刀の使い手として一緒に来てほしい」
リゼのその言葉を聞くと、ハヤテの母と老人が顔を見合わせた。
さらにスタッフから説明が続く。古代から続く災厄ネクロズガカ打倒のため、戦力を整えていること。それにハヤテの力を貸してほしいということだ。
「ハヤテは、どう考えているのだ?」
「僕は……」
老人の言葉にハヤテが反応する。
「僕は妖刀に操られるままにいただけです。お役に立てるのでしょうか?」
「お前はその妖刀と相性がいいんだよ。並の人間が操られたって、昨日みたいな力は発揮できねー。闇に飲まれてたのかもしんねーが、オレ達とやり合って、高揚感あっただろ?」
「そ、それは……」
ハヤテが目を白黒させる。
その様子を見て、俺はリゼに小声で話しかけた。
「ダリヴァーの奴、俺の時にも似たような挑発してきたよな」
「ああ、そうだったね。紅一の時はどう感じたの?」
「正直、俺はあの時、調子に乗ってしまったし、大なり小なりダリヴァーの言うことは一理あると思う」
「ふぅん、なるほどねぇ」
そんな俺達の話していた内容の通り、ハヤテは戸惑いながらも俺達についてくることを決めた。ハヤテの母は恩を返してこいという言葉を残したし、老人は村に伝わる曰く付きの妖刀がどこまで世界の役に立つか見極めてきてほしいとハヤテに伝えていた。
こうしてまた一人、新しい仲間が増えた。ハヤテは学年的には中3だった。つまり俺やリゼの一個下だ。そして、年齢にしては童顔な方だと思う。
◇
村を後にする前に、戦闘組でハヤテがどれだけ力を使いこなせているかを見ることになった。
「じゃあサイファーギア、お願い」
リゼの声に電子音で反応し、サイファーギアが青いフィールドを作る。
「本当に大丈夫なんでしょうか……?」
「大丈夫だよハヤテ。さあ、妖刀を解放するんだ」
「は、はい……」
俺の言葉に答え、ハヤテは腰に装備している妖刀を抜いた。たちまちハヤテの身体を紫のオーラがまとい始める。しかし、心と身体を侵食しようとする闇はサイファーギアの青いフィールドに吸収されていった。
「へぇぇ、凄いですね、これ」
「さあハヤテ。少し撃ってくるんだ」
「ええ、良いんですか?」
「俺も闇使いの一人だ。そう簡単にはやられたりしないから大丈夫だよ」
急に先輩面をすることになり、俺自身に苦笑する。けれど、悪い気分ではなかった。チーム・ユーラルを指導していたチーム・グレイスもこんな感じだったのだろうか。
ハヤテは妖刀を腰に戻すと、両手に紫の光を帯びさせて殴りかかってきた。かなりの速度だ。俺は両手に赤い光刃をまとわせ、その攻撃を捌く。赤と紫の光が明滅し、さらにそれらの光は青いフィールドに当てられた時に、まるで魔法少女の色のような神秘性を帯びるのだった。
「はぁっ!!」
ハヤテが腰を落としてから渾身の一撃を放ってきた。俺は赤い残光を残してそれを避ける。さらに右手から赤い光弾を発射してハヤテを撃った。
「うわっ!!」
ハヤテはバランスを崩して倒れてしまった。様子を見ていたダリヴァーが近づいてくる。
「威力もスピードもいい。だが、洗練されていねーな。今んとこ能力任せってところだ」
「は、はい……」
ダリヴァーの言葉を聞くと、ハヤテはいそいそと立ち上がった。
「少しずつやっていく必要があるね」
「そうだな。ハヤテは訓練をしてきたわけじゃないんだからな」
リゼの言葉に俺が反応する。
急に戦う力を得てしまったという意味では、ハヤテは桜乃と境遇が似ているかもしれない。桜乃はその後の努力でどんどん強くなっていったし、ハヤテもこれからだと思う。
「まあ、俺もまだまだなんだけどな」
「そりゃあ、あたしだってそうだよ」
リゼはそのままサイファーギアの青いフィールドを解除した。リゼと談笑しながらハヤテの元に向かう。
「さてハヤテ。今後はあたし達の拠点で訓練もしてもらうことになるけど、今日のところは別に……」
「今日のところは別に?」
「観光案内頼むわ! 残りの時間は楽しみましょ!」
リゼの言葉にハヤテは拍子抜けしたようだったが、すぐに笑みを浮かべて準備をしてくれた。
俺達はスタッフ達も含めて、ハヤテの案内で観光をしてから帰ることになった。




