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42 新たな生活

 4月になると、俺の新しい生活が始まった。俺はリゼの会社の研究部門の施設に住むことになり、闇汚染を回避してリハビリもこなしたという体(てい)で高校生になった。新しい制服になり、新しい友達もできた。


 桜乃(さくの)とは違う高校だったし、俺はチーム・ユーラルから外れることにもなったので、彼女との関わりは本当に少なくなった。


 高校でのクラスメイトには、魔法少女をやっている生徒がいた。恐らく俺の監視役としてクラスが同じになるように手配されたのだと思う。


 高校の授業が終わって施設に帰ると、自分の能力を高める活動や、ネクロズガカの状況の情報共有を受けたりする。リゼは、チーム・ユーラルの活動が終わってから合流してくる。


 リゼは中学の頃から、学校とチーム・ユーラルとこの研究部門での活動と、三重生活を送っていたということだ。リゼは、俺と桜乃のことを気遣うようなことを言っていたが、こんなに活動の幅が広かったらそうそう出来ることではなかっただろうと思う。



    ◇



 ある日、今後に向けてのミーティングを行っていた。


「ネクロズガカの封印が時間切れで解けた場合、眷属も一緒に出現する」

「今回は結社アルコが途中で解いたから、タイミングが少しズレているみたいだ。けれど、眷属が出現し始めたらネクロズガカの顕現も近い」

「眷属の対応は、魔法少女もするだろう。魔法少女特攻を持っているのは、あくまでネクロズガカ本体だから」


 ネクロズガカは、魔法少女の色を吸い取る触手を持っている。模倣品をけしかけられた桃華(ももか)先輩が長期間療養の身になっているのが、その恐ろしさを物語っている。


 本物に捕まったら命が危ないし、魔法少女では勝てないと言われる所以でもあった。ネクロズガカとは、俺達が戦う必要があるのだ。ただ、眷属はその魔法少女特攻は持っていないから、魔法少女でも戦えるということだ。


「サイファーギアは闇を喰えば喰うほど強力になるから、紅一(こういち)君とダリヴァーと、二人も同志が増えたのはかなり大きい」

「ただ、戦力が増えるほど有利になるのは間違いない。戦闘要員が増えるとさらに盤石だ」


 研究部門のスタッフによれば、ある山奥の村に、闇にまつわる曰く付きの妖刀があるとのことだった。その妖刀の闇に堕ちた者がいると。


 俺達はその場所を訪れることにした。



    ◇



 移動の日、リゼはいつものようにチーム・ユーラルの活動をこなしてから俺達に合流した。


「ふぅ、おまたせ」

「リゼ、どうだった?」

「今んとこ何も。ていうか、チーム・ユーラルにまでは情報は降りてこないんじゃないかな。封印の生贄(・・)になる魔法少女チームは、今頃上層部が選んでいるだろうし」

「生贄か。くだらんやり方だな」

 リゼを出迎え、俺とダリヴァーの3人で話している。


 リゼが言った通り、ネクロズガカの封印には生贄が使われる。醜悪なやり方だ。今回も、ごく少数の魔法少女にしか知らされないのだろう。無論、封印の儀式をさせる気はないが。


 リゼが大急ぎで準備をすると、俺達は帯同するスタッフと共にバスに乗り込んだ。魔法少女チームでもないのに魔法少女連盟の魔具は使えないので、移動は現代技術に頼る。もっとも、隠し持ってはいるので、いずれは使うことになる。


 バスで高速道路を経由し、山道を走り、目的の村に到着した。社員旅行に、家族とその友人がついてきたという名目になっている。


「ようこそいらっしゃいました」

 古風な宿で女将さんが出迎えてくれる。向こうからしたらただの観光客なのだから当然だ。


 温泉を堪能させてもらい、夕飯は広間とは呼べないような場所だったが、古風な雰囲気のある部屋で全員でいただくことになった。


「おお、美味しい!」

「本当ねぇ!」

 リゼと女性スタッフが目の前で目を輝かせている。せっかく地方に来たのだから楽しむことは楽しむべきなのだと思う。実際、めちゃくちゃ美味い!



    ◇



 夕飯を堪能し、スタッフはただの社員旅行を装う目的も兼ねて宴会を始めたが、一部のスタッフは部屋を移し、俺とリゼとダリヴァーは静かに宿を出た。


「さて、楽しい時間は終わりにして、本来の目的に移らないとね」

「妖刀と取り憑かれた人を探すんだよな」

「うん。紅一もダリヴァーも何か感じる?」

「いや、感じねーな」

「隠されているんだろうな」


 ならば逆に自然に存在する程度の邪気すら消えていたり、不自然になっている箇所を探そうと、俺達はセンサーを手にスタッフと連絡を取りながら村の中を歩いた。


 古い蔵のような建物の前で、通信先のスタッフが反応した。


「リゼ、その近辺、少し邪気の分布がおかしいです」

「ということは……」

「この建物の中ってわけか」

 3人で蔵を睨む。リゼはサイファーギアを次元収納から取り出し、背中に装着した。いつでも使えるようにするということだ。


「よし、俺が先頭で行くよ」

「任せた」

「なら、オレが殿(しんがり)を務めよう」


 入口には鍵がかかっていたが、魔道具で鍵を外して内部に侵入する。中は思ったより広く、様々な道具が置いてあったが、その中に地下への入口を発見した。


 地下に降りて初めて、俺達は邪気を感じることができた。


「これは……、予想以上だな……」

 俺が思わず呟く。正直、結社アルコのNo.付きよりも圧力を感じるぐらいだった。


 最奥まで進むと広い空間があり、牢が中と外の行き来を拒んでいる。


「誰だ……?」

 中からは男の声がした。紫を基調とした服を着た、俺より歳下に見える少年だった。


「何者だ! どうしてここに!?」

「落ち着け、俺達は妖刀の調査に来たんだ」

「妖刀の調査!? なら、僕もろとも祓いに来たのか!」

 たちまち、少年からドス黒い紫色のオーラが発生して辺りを覆った。


「へぇぇ、強そうじゃねーか!」

 ダリヴァーはそう言うと、黄色く光らせた左腕を一閃して牢を破壊し、中に侵入した。


「お、おい、ダリヴァー!」

「無茶するなぁ……」

 俺とリゼは呆れた声でダリヴァーに続いた。どちらにせよ少年とは話さないといけない。


「あれ、牢を壊してくれたのかい? ありがとう、これでここから脱出できる!」

「勘違いすんなよ、ガキ。まずはオレと戦え!」

「うるさい、どけ!」

 少年は紫のオーラを帯びた蹴りを繰り出し、ダリヴァーが吹っ飛ばされた。


「うおっ! へへへっ、やるな、小僧!」

 ダリヴァーは楽しそうに身を翻して着地する。


「騒ぎが大きくなる前に終わらせよう。リゼ!」

「勿論よ。さあ、やるよ、サイファーギア!」

 リゼの背中に装着されていたサイファーギアが電子音を返し、リゼはサイファーギアを手に取る。周囲に青いフィールドが構築された。


 少年は目を紫に光らせ、俺達に飛びかかってきた。明らかに闇に堕ちている様子だ。


 少年の一振りで紫色の光弾がいくつも俺達に向かって飛んできた。物凄い威力だ。ダリヴァーの攻撃の威力にだって匹敵している気がする。


 しかし、俺は赤い光をまとった腕でそれらを弾き飛ばし、リゼはサイファーギアを巧みに操って、青い残光が紫の光弾を撃ち落とした。


「うおおっ!!」

 少年は体格の小さいリゼから倒そうとしたのか、リゼに近接戦を仕掛けた。しかし、リゼは右手だけでサイファーギアを操り、さらに左手にも青い光をまとわせて少年の紫の近接攻撃を捌(さば)く。青と紫の光が凄まじい速度で明滅した。


 魔法少女ユーラル・アクアの場合は援護が中心だが、サイファーギアを操るリゼは近接も行けるのだった。


「オレを忘れんなよ!」

 ダリヴァーが少年の背後から黄色の横薙ぎを放つと、少年は上手く避けた。しかし、そこへ俺が赤い光刃で追撃する。


「くっ!!」

 少年は必死に俺の攻撃を防いだが、リゼがサイファーギアから発射した青い光線に吹っ飛ばされ、地面に倒れた。


「流石に3対1ではこんなもんか。1対1なら面白い戦いになっただろうによ」

「悪いね、ダリヴァー」

「時間をかけるわけにはいかないからな。で、どうだ、リゼ」

「うん、サイファーギアで吸い尽くせると思う」


 少年が倒れてもリゼはサイファーギアによる青いフィールドを解除せず、少年を蝕んでいるであろう闇を吸い続けた。

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