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39 青いフィールドの正体

 目が覚めると、俺は病室らしき場所にいた。辺りを見回すと、医師と看護師らしき人達がいる。


「奈雲(なぐも)君、目が覚めたかね」

「ここは……、あっ!?」

 急速に記憶が蘇っていく!


 ダリヴァーとの戦いには勝ったが、ガーベラと戦っている最中に俺は闇に侵食され、そこからの記憶がない。一体、どうなったんだ!


「俺が倒れてから、どうなりましたか!?」

「落ち着いて。まずは君の容態だが、まったくもって問題ない。君を侵食していた闇は、サイファーギアが全て吸収した」

「サイファー……、ギア……?」

 知らない単語の登場に思考が止まってしまう。なんだ、それ?


「サイファーギアというのはだね」

「いや、ちょっと待った! それより、ネクロズガカはどうなりました!?」

「あ……、ええっと、それはだね……」

 医師のその困った態度に嫌な予感が募る。さらに問い詰めると、医師は状況を説明した。


 ネクロズガカの封印は解かれ、魔法少女連盟が対応策を協議中という内容だった。俺はベッドの上で崩れ落ちてしまった。


「俺の……、俺のせいじゃないですか……!」

「いや、結社アルコは用意周到だったよ。あの状況では時間の問題だった」

「でも、俺が闇に堕ちそうになったせいでガーベラを通過させたのは事実でしょう!」

 俺は思わずベッドを降り、両手を地面について、そのまま頭を地面にぶつけた。


「すいませんでした!!」

 ネクロズガカが復活してしまった。これで誰かがあの痛ましい封印の儀式の犠牲になってしまうんだ。


 俺は誰に謝っていいか分からず、目の前にいる人に向けて何回も額を地面にこすりつけ、謝罪の言葉を繰り返した。



    ◇



 額から出血してしまったようで、医師に絆創膏を貼られた。自責に駆られる時間があっても良いが、これからは自分に何ができるか考えてほしいと言われた。


 何ができるんだろう、何ができると思ったんだろう。ネクロズガカ復活の報の衝撃が強すぎて、あの時の戦いで起きたことを振り返る余裕もなかった。


 それでも、自分のやってきたことは振り返れる。一族がネクロズガカ打倒のために作り上げてきた力で、俺は桜乃(さくの)を助けようとした。


 しかし、それに一体どんな意味があったというのだろう。桜乃の心は離れていってしまったし、誰に感謝されることもなく、結果として最悪の事態を引き起こしてしまった。


 その虚しさが、たまらなく嫌だった。




 しばらく時間が経ち、病室を母が訪れた。


「母さん……」

「いつか、こんな日が来るんじゃないかと思ってたよ」

「ごめん」

 俺は母にも謝罪する。ずっと、心配してくれていたのに、結局俺は闇に堕ちかけてしまったのだから。


「でもね、道が開けたなら、紅一は信じる道を進みな」

「え?」

 何の話だろう。道が開けた?


「多分、私から伝えることじゃない。後で説明してくれるらしいから、ちゃんと聞いて、自分で決めな」

「あ、ああ……。何のことだか分からないけど……」

 母はそこまで悲観していないような顔をしている。笑みさえ浮かべているのではないか。一体、何の説明があるっていうんだ?



    ◇



 母が退出し、しばらく経った頃、リゼがやってきた。


「やあ、紅一。目が覚めたって聞いて早めに魔法少女活動を切り上げてきたよ」

「リゼ?」

 ここがリゼの親の会社の研究部門だというのは聞かされていた。しかし、まもなく高校生になる程度の年齢のリゼが来る場所でもないと思っていたので、意外だった。


「もう立てるよね? 話が沢山ある。ついてきて」

「あ、ああ……」

 俺は身支度を整えて、歩き始めたリゼの後を追った。


 そういえば、先の戦いで俺が倒れる直前、俺はユーラル・ハートを攻撃しようとしたところをユーラル・アクアに救われた。あの時に感じた違和感が蘇る。


 アクアは俺の赤いオーラを青い光でねじ伏せようとしていたように見えたが、すぐに変身が解けてしまった。ただ、変身が解けた後も青い光が続いていたような気がする。


 そもそも、申し訳ないがアクアの力では俺の赤いオーラは防げないと思う。なのに、あの時、俺の攻撃は確かにかき消された。一体どういうことだったんだろう。


 リゼが大きい扉の前で端末に何やら操作をすると、扉が開いた。中は、随分と広い、まるで魔法少女のトレーニングルームのようだった。


 中まで歩くと、リゼはこちらを向いた。


「紅一も色々とあって悩んでたみたいだけど、戦いの振り返りはした?」

「い、いや、まだだけど……」

「ダリヴァーを倒したこと、ちゃんと覚えてる?」

「……もちろんだ」

 あそこで成功体験を得たから、調子に乗ってガーベラの前で闇に侵食されたわけでもある。そしてネクロズガカの復活に繋がったのは、恥ずべきことだった。


「あのさ、ダリヴァーに連れ去られたの、あんただけじゃなかったのは覚えてるのかしら……?」

「え? あ、ああ……。でもユーラル・アクアとははぐれたよな?」

「いや、実はあたしもあの場にいたんだよね」

「そうだったのか……。って、え!?」


 あの時、俺の闇の力は謎の青いフィールドに補助されていた。リゼが、その場所に自分もいたと明かすことに意味がないはずがない!


 そして、あのユーラル・ハートを攻撃してしまった時も、青い光に闇を吸い取られたんじゃなかったか!? あの青い力が存在した時の共通点は……!


「うん、多分、紅一の想像通りだよ」

 リゼはそう言うと、右手を横に突き出した。手の先の空間が歪み、中から長い杖のようなものを取り出す。


「やるよ、サイファーギア」

 リゼの言葉に杖が電子音で反応し、リゼの持つ杖の位置を中心に青いフィールド(・・・・・・・)が発現すると、風のようになって吹き荒れた。


「こ、これは!?」

 同じだ! ダリヴァーと戦ったあの時と! つまり、この青いフィールドの出どころは、リゼだったんだ!


「あ、青い闇喰い……」

「ダリヴァーがそう呼んでるらしいね。概ねその理解で合ってる」

 青い風を巻き起こすリゼは、ユーラル・アクアの時より存在感があるのではないかと思うほどだった。俺は正体を隠してチーム・ユーラルにいたわけだが、リゼも秘密を抱えていたのか。


「リゼ……、お前は……。お前は、一体、何者だ!?」

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