34 闇の対決、紅一vsダリヴァー
青く吹き荒れる謎の風が作るフィールド。その中で、赤い闇使い紅一と黄色い闇使いダリヴァーの戦いが始まった。
ダリヴァーは右手を突き出し、左手を上に挙げる姿勢を取ると、黄色い光がほとばしった。先ほどチーム・グレイスを撃破した大技だ。
紅一は構わずに接近し、ダリヴァーが左腕を地面に向かって振り抜くところに突っ込む。黄色の爆風は紅一を覆う赤い光に遮られ、紅一には一切のダメージが入らなかった。
「何と、それほどまでか!」
ダリヴァーが思わず叫んだ。
(グレイス・キルシェでさえ、防御に集中しなきゃ耐えられなかった技だぜ! それを無造作に無効化するとは、いいねぇ!!)
ダリヴァーは笑みを浮かべながら思った。
ダリヴァーはそのまま黄色く光る拳を繰り出すが、紅一は赤い残像を残しながらそれらを避け、または受け流した。
「うおおっ!!」
「ぬぅぅん!!」
紅一は両手に赤い光刃をまとわせ、ダリヴァーの拳と撃ち合う。今までチーム・ユーラルの援護をしてきた時とは比べ物にならない密度だ。
赤い光と黄色い光が物凄いスピードで発火しては消えた。闇の力であるはずの赤と黄色は、青い風に覆われると、一瞬まるで魔法少女の色のように淡く神秘的な色と化した。
ダリヴァーが黄色く光る蹴りを繰り出す。紅一は赤く光る腕でそれを受け、逆の手の赤い光刃で横薙ぎにした。それはダリヴァーに衝撃を与え、ダリヴァーは後ろに吹っ飛ばされる。
「うぐっ!」
「はぁぁっ!」
一瞬怯んだダリヴァーに紅一が追撃をかける。ダリヴァーは身を翻して着地し、紅一の攻撃を右手で防ぎ、黄色く光る左腕を横薙ぎにした。しかし、紅一は赤く光る右腕一つでその攻撃をはじく。
「うおっ!!」
ダリヴァーが距離を取り、停止した。紅一も一度攻撃を止めてダリヴァーを睨むが、赤い闇の力の効果なのか息切れもしていない。
「へっ、今の技、チーム・グレイスのオレンジの嬢ちゃんを倒した技だったんだけどなぁ。全然通用しないじゃねえか」
「……そいつぁ、どうも」
紅一が怪訝な顔をした。
「自分が強者だって自覚できてきたか? 影に潜んで魔法少女の援護なんかしてるだけの器じゃなかったんだよ、お前は」
「……」
ダリヴァーに言われ、紅一が自分の両手に目を落とす。
「気分が良いだろうよ。この国で最強のはずの魔法少女を倒した相手とやりあえてるんだからな」
「そんなことは……」
「隠すな、楽しいんだろ? 顔を見れば分かるぜ!」
ダリヴァーが紅一に突進し、紅一はそれを迎え撃つ。
青い風のフィールドの中、再び赤い光と黄色い光が交差する。
(小僧の正体が露見しないよう1対1で戦うのが約束だったからここでやり合ってるがな。さっきの場所で戦ってたら、さぞ魔法少女どもの士気が上がったことだろうなぁ!)
ダリヴァーにチーム・グレイスが撃破され、魔法少女達は絶望していた。もしそこで紅一がダリヴァーと互角に戦う姿を見せたら、失われていた戦意を取り戻させていたかもしれない。
しかし、それでも紅一は闇の戦士だ。その後は、魔法少女連盟からの脅威度判定レベルが上がり、結社アルコに次ぐぐらいの包囲網が敷かれるのは容易に想像できる。それは、今はまだ、ダリヴァーの望むところでもなかった。
(それに、魔法少女達の士気が戻ったらガーベラは苦労するだろうしな!)
紅一は、今まで結社からダリヴァーに報告されていた情報にない大技を繰り出す。強敵と出会って笑顔を続けるダリヴァーだったが、ダメージは着実に蓄積していた。
「ダリヴァー! お前、何故ネクロズガカの封印を解こうとする!」
「なんだ会話かぁ! 心に余裕が出てきたなぁ!」
「答えろ! お前も世界をリセットするとか、そういうくだらない理由なのか!」
「いいや、オレは違うね!」
「なに……?」
「予想外だったか!? オレはただ、強い奴と戦いたいだけだ!」
「は……? ま、まさか……!」
「そうだ、オレはネクロズガカと戦いたいんだよ! それは最も強い敵との戦いになるだろう! その時には結社とは対立することになるだろうが、オレと結社とはそういう前提でいるんだぜ!」
「……なんて大バカ野郎だ! そんなことのためにあの怪物を解き放とうってのか!」
「その通り! 強者と戦うことがオレの望み!!」
「狂ってる!!」
紅一はダリヴァーを攻撃するペースを上げた。ダリヴァーの言葉を聞いて使命感でも湧いたのだろうかと、ダリヴァーは思った。
「お前はどうなんだ、奈雲紅一!」
「なに!?」
「調べはついてるぜ! お前の一族は、ネクロズガカを怨んでいる! その憎しみが闇の技を磨く原動力となり、今のお前の代にまで継承されているんだろうが! なら、お前はネクロズガカを倒したいとは思わないのか!?」
「馬鹿な! 今の俺では無理だ!」
「何故そう思う!?」
「全力を……」
そこまで言うと、紅一の言葉が止まった。自分で言っていて違和感を覚えたのだろう。紅一が動きを止めたので、ダリヴァーも付き合うことにし、静止した。
「全力を……、出せない……、はずだったから」
「そうかそうか。少し力を入れてしまうと闇に侵食されちまうはずだったもんな! それだったら躊躇するかもな! だが、ならば、今のお前は何だ!?」
「……」
ダリヴァーの言葉に、紅一は惑う。一族の悲願が頭をよぎる。




