33 決戦
3月のある日、ついに結社の攻撃が始まった。防衛戦力に認定されている魔法少女チームが現場に急行する。俺のいるチーム・ユーラルもそうだった。
「結社No.1出現!」
端末から入ってくるその情報に俺達にも緊張が走る。チーム・グレイスを単騎で撃破したNo.2ダリヴァーより数字の低い、結社最強と思われる相手だ。
その相手には、ランク1位の魔法少女チームが派遣されたが、情勢が好転せず、ランク2位の魔法少女チームも追加投入された。
「つまり……」
「少なくとも現状では、残りの戦力でそれ以外を撃退しないといけないね」
ユリールに理人が続く。
「それ以外って言ったって……」
ユーラル・トパーズが不安げに言った。当然、ダリヴァーとNo.3ガーベラも含まれるからだ。
「きっと大丈夫! 私達だってさらに強くなった!」
ユーラル・ハートが自分に言い聞かせるように言った。しかし、この短期間の無茶な訓練でハートがいくらか伸びていたとして、ダリヴァーとガーベラ相手にどこまで通じるだろうか。
封印の地は洞窟だった。中に入ってみると、何の仕掛けなのか、辺りが明るい。広い空洞もあり、集団戦もできそうだった。
「来たよ!」
ユーラル・ラベンダーが叫んだ。洞窟の入口の方から魔物達が走ってくるのが見えた。
俺達より先に洞窟に潜んでいた魔法少女達と共に、迎撃戦が始まった。その中には、怪我の治りきっていないであろうチーム・グレイスの姿もあった。当然、グレイス・キルシェ先輩だけが来ていない。
「凄い数だね」
ユーラル・アクアはいつも通り後衛から援護に回る。
成長著しいハート、トパーズ、ラベンダーの攻撃力に加え、アクアの援護も洗練されていたチーム・ユーラルは、チーム・グレイスと共に戦いの中心にいた。
俺はどうするか。戦闘スーツを着るチャンスはいつでもある。やはりNo.持ちが来てからヘルプに入るべきか。
そんなことを考えていると、轟音が響いた。
「きゃああ……!!」
「うあああ……!!」
悲鳴の聞こえた方向を見ると、黄色い残光が飛び交っていた。
「出たわね!」
「ダリヴァー!!」
「ガーベラぁぁぁぁああ!!」
魔法少女を何人か倒したダリヴァーと、その隣にいたガーベラに向かって、チーム・グレイスの3人が突っ込む。
ガーベラもいたためか、ユーラル・ハートも後を追うように突っ込んでいった。
「いやいや、それは無茶だろ、怪我人ども」
ダリヴァーは右手を突き出し、左手を頭上に構えるポーズを取った。報告にもあったダリヴァーの大技のようだ。
ダリヴァーが左腕を地面に向かって振り抜くと、激しい黄色の爆風がほとばしる。
チーム・グレイスの3人の悲鳴が響き、彼女達は一撃でダウンし、変身解除させられてしまった。
「え……?」
その光景を見たハートが怯む。ガーベラがハートに赤い光弾を放ったのを見て、ハートは慌てて停止し、後退した。
「う、嘘でしょ……」
「チーム・グレイスが一瞬で……」
惜しい戦いすらできなかったチーム・グレイスの敗北に、魔法少女達に動揺が走った。
「こないだは防げた技だぜ。まあ、無理してここに立ってたってところだな」
ダリヴァーのその言葉に、ざわめきが起こる。
前回敗れたとはいえ、チーム・グレイスは依然として魔法少女達の心の支えだったはずだ。それが瞬時に倒されてしまったのだから、動揺するに決まっている。
「む、無理よ……」
「勝てるわけがない……」
周囲から戦意喪失とも取れる声が聞こえ始めた。
俺にもこの窮地を脱する方法はさっぱり思いつかない。せめて、ランク1位と2位が来てくれれば好転するのだろうか。
「で、今日のオレの関心はな……」
ダリヴァーが向きを変えた。
「そこだぜ」
「ん!?」
ダリヴァーはこっちを指さしているように見える。俺のはずはない。ならばと振り返ってみると、ユーラル・アクアがいた。
アクアが標的!? 何故だ! 前回の戦いで対話を仕掛けたからだとでも言うのか!
「じゃ、ガーベラ。ここはよろしくな」
「まあ良いけど。何がしたいんだか」
「うぉぉぉおおお!!」
ダリヴァーは叫ぶと、黄色く発光してこちらに飛んできた。
「うあっ!?」
「なにっ!?」
ダリヴァーはアクアだけでなく、俺まで標的にしてタックルしてきた。二人して洞窟内を移動させられる。物凄い速度だった。
「紅一!!」
「アクア!!」
ハートとユリールの声が聞こえたが、あっという間に元の戦場の音が聞こえなくなった。
爆音が響くと、身体に浮遊感が起きた。落下しているようだった。
◇
地面に叩きつけられてはまずいので、着地の瞬間、俺は闇の力を解放した。威力を殺し、地面に着地する。
「アクア、どこだ!?」
俺はアクアを探し、辺りを見回したが見当たらない。俺が邪魔だったから途中で振り落とされて、アクアだけ連れていかれてしまったのだろうか。
「よお、赤い闇使い」
しかし、その声が聞こえてきて、この場にいるのが俺だけではないことが分かった。
言い方に、心臓が飛び跳ねる。当然、俺に言ったのだ。俺をここに連れてきた、黄色い闇使いである、結社No.2ダリヴァーが!
「なん……だと……!?」
「バレてねえとでも思ったか、小僧」
「……」
「魔法少女連盟は本腰入れて捜索しなかったようだが、オレ達は違ったってことさ」
ダリヴァーから黄色いオーラが吹き荒れる。
「用があったのは、アクアではなく、俺……?」
「そうだ」
「一体どういうことだ!?」
「オレは強者と戦うのが好きなんだ。この国の魔法少女とは概ねやり合ったし、残ってる強者はお前ってわけだよ」
「馬鹿な、ランク1位だって近くにいるのに!」
ダリヴァーが何のつもりか分からないが、俺を闇に堕とそうとしているなら大正解の行動だ。こいつ相手に抵抗などしたらあっという間に闇に侵食される! 想像したら冷や汗が止まらなくなってきた。
「勘違いすんなよ。闇汚染抜きで全力でやり合おうってことだぜ」
「闇汚染抜きで、全力……? そんなの……」
そんなの不可能だ。それができるなら、うちの一族は苦労していない!
「まあ待て。会場のセッティングまでよ」
「会場だと……?」
「さあ、来たぞ」
ダリヴァーがそう言うと、地面を這うように青い何かが辺り一面を覆い尽くした。まるで青い風だ。
「な、何だこれ!?」
意味が分からず、俺は叫んだ。
「青い闇喰い、とでも呼ぶべきか」
「あ、青い闇喰いだと……!?」
「このフィールドに闇は喰われる。範囲内にいる限り、闇の侵食を心配する必要はない。だから……」
ダリヴァーが腰を落とし、黄色く発光する。
来る!?
俺は反射的に戦闘スーツを展開した。変装以外にも俺の力を高める効果があるからだ。もはや変装の意味がなかったので、マスクはつけなかった。
「さあ、オレと戦え!! 奈雲紅一ぃぃぃぃ!!!!」
突っ込んできたダリヴァーが黄色く光る左腕を振るう。
「くっ!?」
チーム・グレイスをも粉砕する攻撃!! 力を入れなければ止められない!!
「うおおっ!!」
俺は闇の力を全開にし、赤く光る両手でダリヴァーの攻撃を迎え撃った。
目の前で赤い光と黄色い光が混じり、さらに周囲の青い風に覆われる。ダリヴァーの攻撃と俺の防御は相打ちになった。
「っ……!?」
一度に大出力をしてしまったので、俺は反射的に闇の侵食を警戒した。しかし、俺の身体には何も起こらないし、心に囁くものも何もなかった。
「どうだ? 何ともなかっただろ?」
「な……、そんな馬鹿な……!?」
奈雲一族が長きに渡って求め続けたものが、こんなところにあったっていうのか!?
「これで身に染みただろ! ここではお前は全力を出せるんだよ! 来いよ! 戦いの続きだ!」




