32 防衛準備
ネクロズガカの封印の地は日本国内。チーム・ユーラルにもその情報は展開された。戦力として期待されているということだろう。
実際、新人チームとしてはかなりの実績だ。それでも、チーム・グレイスのエース桃華先輩が戦闘復帰できず、結社アルコとの戦力差は明らかで、分の悪い戦いが予想される。
海外から、ランク1位と2位の魔法少女チームが来てくれることになったのがせめてもの救いだった。
チーム・ユーラルは、来たるべき戦いに向けて訓練をしていた。
「はぁぁ!!」
ユーラル・ハートがピンク色の魔法光弾を放つ訓練をしている。しかし、毎日毎日、鬼気迫るペースだった。
「ハート、飛ばしすぎだ」
「理人。いいえ、まだまだ!」
「ダメだ! 休むのも訓練のうちだ」
「……分かったわ」
ハートは変身を解除し、理人と共に休憩スペースへ向かう。
正直、桜乃はかなり背負い込んでしまっていると思う。桃華先輩が敗北してしまったのが効いたのだろう。何度かペースを落とすよう声をかけてきたが、俺の声は桜乃には届かなかった。
「だって! 早く桃華先輩に追いつかないと!」
「落ち着くんだ。焦っても結果がついてくるわけじゃない」
理人が桜乃の頭を抱き締めるのが見えた。
「はぁぁ……」
こんな時だというのに、桜乃の行動にため息は出る。追い詰められて、頼れる人を頼っているということなのだろう。しかし、俺と話す時間は極端に減った。ここ最近は近所付き合いとしても疎遠だ。
女子が想い人を作るってのはこういうことなのか。今まであったはずの関係すら消えていくのだろうか。
「紅一、どした?」
「リゼか」
リゼはマイペースさを崩していない。桃華先輩の前で啖呵を切ったと聞かされて、リゼにもそんな一面があったのかと驚かされたが、桜乃のように自分を痛めつけるように訓練をすることはなかった。
「いや、これまでの関係すら消えていくのかと思ってさ」
「桜乃か。うーん、そうねぇ」
「こんな時にそんなことを考えているのもどうかと思うけど」
「いやいや。人の感情を蔑ろにするもんじゃないよ」
リゼはちょこんと俺の隣に座った。
「紅一にも誰か紹介しようか?」
「いや、流石にこのご時世でそれは気が引ける」
「そっか。まあ、確かにね」
「リゼは、訓練しないのか?」
「……やるべきことはやっているつもり。あたしは桜乃とは違うアプローチ、ってとこかな」
「そうか」
リゼの横顔に少し真剣味が帯びる。
確かにリゼの本質は魔法少女としてのパワーではなく、技巧派なところだと思う。結社アルコまでもがそれを評価していたというのだから。
そんな考えに至ったところで、俺は聞いてみたかったことを聞いてみることにした。
「結社No.2のダリヴァーと話をしようなんて、よく考えたな」
「あいつはね。ちょっと結社の他の連中と違うような気がしたからさ」
「ちょっと違う?」
「……うーん」
リゼはどう説明するかを考えているようだった。
「何でネクロズガカの封印を解きたいのかって辺りだったね」
「何で解きたいか? 結社は世界をリセットするとか言ってたんだろ?」
「そ。でもダリヴァーはちょっと違った。だから会話して時間を稼いだってところかな」
「なるほどな。正直、動機がどうあれ、復活させられては困るわけだけど」
「まあ……ね」
そこまで言うと、リゼは少し黙った。
「仮に復活を阻止できなかった場合、紅一なら再封印と撃破、どっちを目指す?」
「魔法少女では勝てないって話だろ? 魔法少女以外で撃破を目指すって言ってもなぁ」
俺の一族はそれを目指している。しかし、俺では夢のまた夢だった。
「力があったなら?」
「それなら撃破を目指したいよな」
俺に力があったなら、きっと撃破を目指す。魔法少女による再封印が現代で起こるなど、胸糞悪くてやり切れない。知人が関わるかもしれないというのに。
「そっか。まあいいや、話がそれちゃったね。前にも言ったけど、桜乃については紅一のしたいようにすればいいと思うよ」
「う、その話が最初だったな、そういや。サンキュな」
そこで会話を終了し、リゼは訓練に入っていった。
俺はふと桜乃を見る。まだ理人と一緒だった。浅黄と紫帆は、こういう時は邪魔しに行かないようにしているらしいが、最近は桜乃が自分を追い詰めているだけあって譲っていることが多い。
「どうなんのかね。人間関係も、ネクロズガカとのことも……」
俺はふとそんなことを呟いた。




