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30/61

30 敗北の後

 結社アルコにネクロズガカの封印の地の情報を奪取され、結社No.2とNo.3にランク3位のチーム・グレイスが敗北。


 俺が目を覚ました後、入ってくる情報はどれも衝撃的だった。No.4を倒しただけで使い物にならなくなっていた自分を呪ってやりたい。


 怪我をした魔法少女が多数おり、研究施設の防衛は失敗に終わった。チーム・ユーラルも全員が倒れていたらしく、俺も含めて魔法少女連盟の医療施設に搬送され、俺は今そこにいる。


 うちのチームの魔法少女達とは違う場所だったが、理人(りひと)とユリールは同じ病室で治療を受けていた。


「これからどうなるんだ」

「分からないよ」

 理人とユリールが言う。


 恐らく、結社アルコの次の一手は、封印の地への襲撃。今度こそネクロズガカの封印を解きに来る。そうなったら、世界の危機だ。


 俺は怪我自体は大したものではなかったので、ふと病室を抜け出して、施設内を歩いた。すると、チーム・グレイスの面々が集まっているところに出くわした。エースの首藤(しゅとう)桃華(ももか)先輩だけがその場にいなかった。


「あの……」

 懇意にしてもらっていたチーム・ユーラルの一員として話しかけてみたものの、女性陣が泣いていた。


「あ、チーム・ユーラルの……」

「紅一(こういち)君……」

 彼女達には包帯が巻かれていたりして、俺が眠ってしまった後の戦いが激闘だったことを窺わせる。泣いている彼女達に代わって、チーム・グレイスの導き手(ビーコン)である将(しょう)さんが状況を教えてくれた。


 桃華先輩が、再起不能かもしれないとのことだった。チームとして負けたショックもあったのだろうが、桃華先輩の状態に他の女性陣は心を痛めていたようだ。


「どんな、状態なんですか……?」

「すまない、本人もあんなボロボロな状態を知られたくはないだろうから」

「そうですか、すみません」

「ごめんね。私達もいっぱいいっぱいなんだ。何か伝えられそうなら後で伝えるから……、ぐすっ」

「はい。桃華先輩だけでなく、皆さんもお大事にしてください」

 チーム・グレイスにお辞儀をし、俺はその場を離れた。


 病室に戻ると、理人も起き上がっており、ユリールは理人の近くを浮遊していた。軽症の判断をもらえたようだ。


「これから皆の病室に行くよ」

「そっか、分かった」

 理人の言葉に答え、俺は理人とユリールについていった。


 うちのチーム・ユーラルも重症者はいなかった。桜乃(さくの)はベッドの上だったが、初めてアルティメットフォームに変身したことによる消耗が大きかったためのようだ。


 しかし、精神的なダメージが皆大きい。


「嘘……、嘘よ! 桃華先輩が負けただなんて……!」

 桜乃がベッドの上で俯く。椅子に座っている浅黄(あさぎ)と紫帆(しほ)も下を向いていたし、リゼにもいつもの飄々とした元気がなかった。


 皆、チーム・グレイスが負けた場面は見ていなかったらしい。結社No.2のダリヴァーという男の大技を喰らって倒れていたとのことだった。


 ダリヴァー1人に日本最強のチーム・グレイスが壊滅させられたのは重い結果だ。もっとも、桃華先輩をボロボロにしたのはダリヴァーではないようだが。


「リゼさん、大変なところすまないが、ちょっと話を聞けるかな?」

「え?」

 魔法少女連盟の職員がリゼを訪ねてきた。


「ダリヴァーを足止めしてくれたようだったけど、一体何をしたんだい? ダリヴァーが君を追いかける様子は監視カメラに記録されていたんだけど、途中からはカメラのない位置だったようで、情報がなくてね」

「ちょっと対話に持ち込んだだけですよ」

「対話……かね?」

「結社は何がしたいんだ、お前は何がしたいんだ、とかそういう話をね。結局最後はぶん殴られてKOされましたけど」

「なんと、それでダリヴァーをしばらくあの場から引き剥がせたとは……」

 リゼ、そんなことをしていたのか。本当にやることが独創的だ。


「それで、何か、聞き出せたのか?」

「結社は、ネクロズガカという怪物の封印を解きたいようですね」

「そ、その名前を聞いたのか!」

 リゼからついにネクロズガカという名前が出た。桃華先輩も名前は桜乃に知らせていなかったようだから、俺以外のチーム・ユーラルにとっては初だろう。


 魔法少女連盟は高ランクのチーム以外には伏せる方針だったようだが、リゼが独自にその情報に辿り着いたわけだ。


「ネクロズガカ?」

「それが魔法少女が隠している大問題とやらなの?」

 浅黄と紫帆が職員の方を見ながら言った。


「チーム・グレイスには伝えてあったんですよね? 桃華先輩、ずっと不安そうにしていました」

 桜乃が憔悴しながらも口にした。


「ふぅぅ……。まあ、君達はチーム・グレイスが目をかけていたからね。君達にも伝えるべきか。すまないね、魔法少女全体に知らせると不安が大きくなるという上層部の判断だったんだ」


 世界を滅ぼす災厄ネクロズガカ、古代から続く因縁。魔法少女でも勝てなかった相手で、封印しか手立てがなかったこと。結社アルコに封印の地が知られてしまったので、次は総力で守りに入らなければならないことが語られた。


「そ、そんな……」

「魔法少女でも勝てなかった……?」

「嘘だろ……、何でそんな事実をボクにまで隠しておくんだよ……」

 浅黄、紫帆、ユリールが順に言った。


 そうか、ユリールも知らなかったのか。だったら、魔法少女の活動に対してポジティブでいられただろうな。


 職員が封印の方法(・・)については触れなかったので、俺はそこを突いてみることにした。


「で、その封印ってのはどんなことをやってきたんですか?」

「え!? そ、それは……!」

 この反応……、知っているな。


「あー、確かにそれは興味あるかも」

 リゼが俺の質問に続いた。勘の良いリゼのことだ。職員の反応が普通でなかったので、違和感でも感じたのだろう。


「も、申し訳ない! 私は知らない! 上層部なら知っているのではないかな!」

「そうですか」

 まあ、言えないのは分かる。あれは相当に醜悪な方法だから、知るのは少人数に抑えたいはずだ。ただ、気分は良くない。


「復活……、阻止しないとね……」

 浅黄がふと呟いた。


 誰もその言葉に続くことができなかった。その難しさを誰もが分かっている。


 チーム・グレイスが大敗した影響は、着実に俺達や他の魔法少女チームにも広がっていた。

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