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28 チーム・グレイス危うし

 ダリヴァーが発したその技で広間の広範囲が攻撃された。グレイス・キルシェは防御に集中し、ダメージは受けたものの、すぐに被害を確認した。


 チーム・グレイス以外の魔法少女はダウンしており、変身が解けて元に戻ってしまっている。各チームの妖精や導き手(ビーコン)までもが倒れて動いていない。


 チーム・グレイスの導き手(ビーコン)である将(しょう)だけは、チーム・グレイスの魔法少女に守られて無事だったが、彼女は攻撃を受け流しきれずにダメージを受けたようで、冷や汗をかきながら呼吸を乱している。


「そ、そんな……!?」

「おい、勘違いすんなよ。どいつも死んじゃいねぇ。気にせずオレに集中しろよ」

「ぐっ……!」

 いつでも殺せるが、キルシェ達の集中力が分散しないように配慮してやったと言わんばかりのその言葉に、キルシェは動揺する。


「さあ、続きだ!」

 ダリヴァーがキルシェに向かって突撃した。


「キルシェ!!」

 チーム・グレイスの青い魔法少女がダリヴァーとキルシェの間に入り、青い光でダリヴァーの黄色い攻撃をガードした。すかさずキルシェはピンクの光で攻撃する。


「いい連携だ!」

 しかし、ダリヴァーは難なくそれをいなした。


 そのまま4対1の混戦となり、ダリヴァーの黄色い光と、チーム・グレイスのピンク、青、緑、オレンジの光が乱れ飛ぶ。


「つ、強い……!」

 チーム・グレイスの魔法少女が口にした。


(ほ、本当に化物だわ!)

 キルシェもそう思った。結社アルコのNo.3以上の強さが桁外れとは知っており、ずっと嫌な予感もしていたキルシェだったが、いざ対峙してみると焦りを隠せなくなってしまった。


「ずああっ!!」

「がはっ……!?」

 ダリヴァーの黄色い拳が青の魔法少女の腹部を捉える。彼女は腹を抑え、悶えながら倒れ込んで変身が解除されてしまった。


「おっと、お前は終わりか。また強くなって相手してくれよ。じゃあな」

 ダリヴァーが追撃しようとしたところをキルシェが阻止する。


「なんだよ、別に殺そうってわけじゃねえぞ」

「黙りなさい!」

 キルシェはそのままダリヴァーと打ち合う。


 キルシェの攻撃もダリヴァーに当たっているはずなのにダリヴァーは弱る気配がなく、ダリヴァーからの攻撃が重すぎてキルシェにはダメージがみるみる蓄積していった。


「はぁぁ!!」

 オレンジの魔法少女が、キルシェと打ち合っているダリヴァーの背後からオレンジの魔法光弾を放つ。


「うりゃあ!!」

 ダリヴァーは少しバックステップし、蹴り上げでオレンジの光弾を破壊する。その隙をついてキルシェが攻撃を仕掛けたが、


「二人まとめて吹っ飛べ!」

 ダリヴァーが左腕を振り回すと、黄色の光が爆発的な薙ぎ払いとなった。


「あぐっ!!」

「ぅあああ!!」

 キルシェは何とか耐えたが、オレンジの魔法少女はそのまま地面を転がり、黄色の闇の力の残光の中、変身が解けてダウンしてしまった。


「あらあら、これで残り二人ね。ランク3位も大したことないわね」

 座ったままの結社No.3ガーベラが姿勢を崩しながら言った。


「はぁっ……! はぁっ……!」

「ついに息が切れ始めたな、グレイス・キルシェ」

「キルシェ!」

 緑の魔法少女も加わり、キルシェと共にダリヴァーと打ち合う。


(ダ、ダメだわ……!!)

 チーム・グレイスの4人がかりでもいなされてしまったのだ。ダリヴァーにダメージを与えられているのなら希望はあったが、疲労すら見せないダリヴァーと、満身創痍の二人では、勝ち目があるようには思えなかった。


「きゃああ!!」

 緑の魔法少女についに渾身の一蹴りが入ってしまう。壁に叩きつけられ、ダリヴァーの攻撃による黄色の残光が散る中、変身が解けて気絶したように倒れた。


「み、皆……!!」

 肩で大きく息をしながらキルシェは戦況を確認する。立っているのはキルシェだけだ。非戦闘員を含めても、もう将以外に動けている者はいない。


(ま、負けるの……?)

 チーム・グレイスは聞かされていた。結社アルコが狙うものの封印が解ければ、世界の危機。何としても止めなければならないと。だから、チーム・グレイスは負けるわけにはいかなかった。しかし、現実を突きつけられて絶望がキルシェの心を襲う。


「あとはお前一人だな。まあ、よく頑張った。確かに、今までやり合った魔法少女の中では一番強かったぜ」

 ダリヴァーが攻撃姿勢に入る。


「くっ……!」

 キルシェが迎撃しようと身構える。



 その時、青い光がダリヴァーを襲った。


「うおっ!?」

 ダリヴァーは予想外の方向からの攻撃に一瞬たじろいだが、その青い光を左腕で消し飛ばした。


「な、なんなの!?」

 キルシェが青い光の飛んできた方向を見ると、そこにはチーム・ユーラルの青い魔法少女、ユーラル・アクアが立っていた。


「ア、アクア!?」

 キルシェはその後輩の姿に驚く。この場にいなかったから分断されていたと予想はしていたが、救援に来てくれたのかと思った。


 しかし、ユーラル・アクアが得意なのは援護であって、正直、実力的にはチーム・ユーラルの中でも劣る。逃げるように言った方が良いのかどうかと、キルシェは一瞬悩んだ。


「おいおい、お前、ユーラル・アクアだっけ? 今の攻撃は一体どうやったんだ? ああん??」

「……」

 アクアは沈黙したままダリヴァーを睨みつける。アクアの攻撃は、ダリヴァーが何らかの興味を示すものだったようだ。


「さて、ね? 興味あるのかしら」

「ああ、あるね。お前は技巧派だって情報もある。なんかおもしれーことでも仕掛けてくれんのか?」

 ダリヴァーがアクアを挑発する。


「なら……、捕まえてみな!!」

 アクアは突然背を向けて走り出した。


「ええ!?」

「あぁ!?」

 キルシェとダリヴァーが呆気に取られる。


(ほ、本当に逃げた……??)

 キルシェがそう思っていると、ダリヴァーはアクアを追いかけ始めた。


「てめえ、それは予想外すぎるぞ! 待ちやがれ!!」

「本日二回目の逃走劇!! キルシェ先輩、あたしは大丈夫だから! そっち(・・・)に集中して!!」

 キルシェ達に背を向けて走るアクアの怒鳴り声が響いた。


「ち、ちょっと! こいつら全員倒すんじゃなかったの!?」

「てめえに任せる!!」

 座って戦闘を眺めていたガーベラの言葉に、ダリヴァーが叫び返した。



    ◇◇



(この魔法少女、本当に何を考えてやがる!?)

 ダリヴァーはユーラル・アクアを追いながらそう思った。先ほどの攻撃は相当に異質なものだったから、何か奥の手を持っているのではと考えたのだ。しかし、いきなり逃げを打つとは予想していなかった。


 戦闘力では明らかにダリヴァーに分があり、たちまちアクアに追いついてきた。するとアクアは突然停止し、ダリヴァーの方を向いた。


「ん!?」

「……」

「ようやく戦う気になったか?」

 ダリヴァーが言葉を発すると、アクアは突然変身を解除し、両手を上げた。


「は……? てめえ、一体なんの真似だ……!」

 ダリヴァーが低い声で言う。


「ちょっと、あなたと話がしたいと思ってね」

「話……だと??」

 ダリヴァーは、これまでに出会ってきた魔法少女達を力でねじ伏せてきた。先ほどのグレイス・キルシェは戦闘不能ではなかったが、ほぼ勝利だった。日本最強の魔法少女でも自分に及ばなかったことになるが、だからこそ、目の前のリゼが何をするのか、ダリヴァーは関心を寄せた。


(こいつ、力は弱いが注意って情報が出てたもんな。何を仕掛けてくるのか)

「いいぜ、乗ってやる。ちょうど、ただの力押しの戦いでは大した相手はいないって分かったところだからな。さあ、言葉で何をしようとしているのか、やってみろよ!」



    ◇◇



 ユーラル・アクアを追って去っていったダリヴァーを見送り、グレイス・キルシェは座っているガーベラを睨む。


(アクアにどんな手があるのか分からないけど、実際、ダリヴァーをここから引き離してくれた。なら、私はこっちを倒さないと!)

 キルシェはもう満身創痍だった。しかし、それでも戦う力はまだ残っている。立ち向かわないという選択肢はなかった。


「気に入らないわね。確かに私にダリヴァーほどの力はないけれど、結社No.3ではある。そこまでボロボロで勝ち目があるとでも思っているのかしら?」

 ガーベラは椅子から立ち上がり、赤い闇の魔力を放出し始めた。


「いいでしょう、相手をしてあげるわ、グレイス・キルシェ」

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