27 終わらない絶望
結社No.4のノレクスを倒した。私は力を使い果たして地面に座り込み、浅黄と紫帆も限界を超え、変身が解けて気絶しているようだった。赤い闇使いも去ってしまい、また捕まえることができなかった。
「けど、まだ終わりじゃない!」
ノレクスは倒したけれど、この先に結社の作業員がいるはずだ。それも止めなくては。
「あっ!」
しかし、私は上手く立ち上がれず、前のめりに倒れてしまい、理人に受け止められた。
「桜乃、無理するな!」
「今日はもう戦えないよ」
理人とユリールに言われた。
「で、でも……」
「桜乃、大丈夫! 本当によくやったわ!」
「え!?」
振り返ると、桃華先輩ことグレイス・キルシェが歩いてくるところだった。ランク3位のチーム・グレイスのエース、現在の日本最強の魔法少女。
「キルシェ先輩、良かった、来てくれたんですね」
その姿に安心し、私は力が抜けてしまった。そこをキルシェ先輩に抱きとめられた。
「ナイスファイト、桜乃!」
「はい……」
チーム・グレイスの他の3人も当然いるし、ランク入り前の強豪チームが二つもついてきていた。理人と協力して浅黄と紫帆の介抱もしてくれている。
「あ、先輩、まだ奥に工作員がいるらしくて」
「分かってる。任せといて」
キルシェ先輩は私に笑顔を向けた。何も心配するな、大丈夫だと思わせてくれる。本当に強い人だから。
No.4は倒すことができたし、その上でこの救援は安心感があった。
「さて、奥も制圧しないといけないところだけど……、えっ!?」
キルシェ先輩が声を上げると同時に、上から轟音がした。
「な、なに!?」
「気をつけて、何か降りてきた!!」
地面でも大きな音がし、何かが衝突したことが分かった。
なんだ! 何が来たの!?
私はキルシェ先輩の腕の中で身体をよじってその方向を見ると、何者かが二人立っていた。
一人は赤を基調とした衣装の女性、もう一人は黄色の服を着た金髪の男だった。男にはキバが生えており、右腕に比べて左腕が太く、左手の先が怪物のようになっていて、闇の侵食を受けた人間だと理解できる。
「そう、負けちゃったのね、ノレクス。可哀想に」
「へっ! まだ精進が必要だったな、緑野郎」
女と男が言葉を続ける。ノレクスの知り合いという時点で、明らかに結社アルコの者達だった。
「私は結社No.3のガーベラ」
「オレは結社No.2ダリヴァー」
その言葉に、広間中の者達に緊張が走る。
No.2とNo.3!? キルシェ先輩の話ではNo.3以上の実力は桁違いで、ランク4位と5位の魔法少女チームが負けてしまったと聞いている。まさか、それが今ここに現れるなんて!
「広間の中の魔法少女は、戦闘不能を除くと12人もいるわね。どうする、あなただけでやるの?」
「おう、当然だ! 腕がなるね!」
ダリヴァーが拳を鳴らす。
「一人だけで戦うって!」
「舐められたものね」
チーム・グレイスのメンバーが口にした。
「じゃあ、私はここに座っているから。戦いぶりを見せてもらうわね、ダリヴァー」
ガーベラは本当に椅子に座ってしまった。結社No.2のダリヴァー、そんなに自信があるというの!?
「こぉぉ!!」
ダリヴァーが腰を落として気合を入れると、とんでもない闇の力が黄色の風となって広間を駆け巡った。
「こ、これは!」
「皆、初手から全力で行こう!」
キルシェ先輩がそう言うと、チーム・グレイスは全員がアルティメットフォームに変身した。
「アルティメットフォームが4人に、通常魔法少女が8人か。楽しませてくれよ!」
すると、ダリヴァーが消えてしまった。次の瞬間、壁から音が聞こえた。
「え……?」
音が発せられたのは何かが衝突した結果だ。衝突したのは一人の魔法少女だった。ダリヴァーに吹っ飛ばされたのだ。今の一撃で変身が解除されて気絶しているようだった。
「ああん? 今の一発で終わりか? つまんねえな」
ダリヴァーは涼しい顔で言った。
「皆、動いて!!」
キルシェ先輩の掛け声と共に、チーム・グレイスともう1チームが攻撃に移る。仲間を一手で倒されたチームは呆気に取られてすぐには動けなかった。
「来てみろ、魔法少女ども!!」
チーム・グレイスの魔法少女が放つ青と緑とオレンジの魔法光弾を、ダリヴァーは右腕と半分魔物化した左腕で粉砕し、キルシェ先輩が近接距離に入ってピンクの光を帯びた腕を振るう。ダリヴァーは黄色く発光する腕でガードした。
ダリヴァーが何らかの攻撃態勢に入ったのを見てキルシェ先輩が後退し、代わりに別の魔法少女チームが連撃に入る。ダリヴァーは追撃をやめ、その魔法少女チームからの攻撃を迎撃した。
二つ目の魔法少女チームは、仲間の介抱に向かおうとしたが、そのチームの導き手が制止し、ダリヴァーへの攻撃に切り替えた。しかし、ダリヴァーはその攻撃も難なく捌く。
「そんなんじゃダメだな。お前らはもういい、寝てろ」
ダリヴァーは左腕に黄色の光を込め、目の前の魔法少女チーム3人に向かって横薙ぎにした。しかし、キルシェ先輩が間に入り、攻撃をとめる。
「ぐぅぅ……!!」
キルシェ先輩は歯を食いしばり、その攻撃を押し返した。
「キルシェ先輩!」
「ありがとうございます!」
救われた魔法少女が言葉を発する。
流石だ、キルシェ先輩は凄い! やっぱり、あの人が負けるはずなんてないんだ!
「お前はなかなかだな。だが、弱者を庇って無駄に消耗するのは良くないな」
「お気遣いどうも……!」
キルシェ先輩はそのままピンク色の魔法光弾をダリヴァーに放つ。ダリヴァーは避けることはせず、それを拳で破砕する。
「へへへっ、お前らランク3位ぐらいでないと話にならないな。悪いが、弱者には寝ていてもらうぜ!」
ダリヴァーは右手を前に突き出し、左腕を上に振りかぶる。ダリヴァー自身に凄まじい闇の力が発現して黄色の光が強まった。
「な、なに……!?」
「す、凄い力!!」
「皆、気をつけて!!」
魔法少女達が警戒する中、ダリヴァーが地面に向かって左腕を振り抜き、その技は発動した。
辺りを黄色い爆風が襲い、魔法少女達が吹っ飛ぶのが見えた。
爆風の余波は私達にも及び、ダリヴァーから距離はあったにも関わらず、吹っ飛ばされて壁に激突した。
「あっ……!?」
私はうめき声を上げ、地面にひれ伏す。激痛を感じたのを最後に、私の意識は途切れた。




