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26 アルティメットフォーム

 結社No.4のノレクスとチーム・ユーラルの戦いが始まり、俺はしばらく様子を見ようとしたが、ユーラル・アクアが無理やり分断されたのを見て、早期に介入することを決めた。


 アクアの援護についても考えたのだが、彼女が背中を向けて逃げ去る姿に啞然とし、あれなら逆に大丈夫だと判断して、他のメンバーの方に向かったのだった。


「うわっ!」

 理人(りひと)が目の前を通り過ぎた緑のブーメランに声を上げた。理人に攻撃が向かないように立ち回っていたのは主にアクアだったから、今は俺達でそれをカバーしなければならない。


「導き手(ビーコン)! 油断するな!」

 理人の名前を知らないふりをして、俺は理人の援護も適宜行った。


 両手にまとった赤い光での斬撃を繰り出すも、ノレクスもその動きについてくる。もう少し出力を上げれば捕らえられる可能性はあるが、闇の侵食を受けてしまうので、今のままで抑える方が良い。しかし、


「決め手がない!」

 ノレクスは俺の弱点を知っている。長時間やり過ごして、俺が限界を迎えるのを待っているかのような動きだ。このまま膠着状態が続けば俺が真っ先に脱落してしまう。


「ハート!」

「あれ、やってみなよ!」

 ユーラル・トパーズとラベンダーがハートに言う。


「で、でも! ……ううん、分かった!」

 ハートはそう言うと、理人の近くに向かった。


「ふぅ、そういうことか……」

 チーム・グレイスの訓練を受けた時に試したアルティメットフォームを使う気らしい。その後も一度も成功していなかったようだが、確かにここはそれにかけるしかないのかもしれない。


「ボクも可能な限りサポートするよ!」

 ハートと理人の元にユリールが向かい、何やら助言が始まっていた。


「おい、赤いの!」

「しばらく、私達3人だけになるよ!」

「いいだろう!」

 ラベンダーとトパーズの言葉に答え、俺は彼女達の援護に回る。


 ハートが抜けた穴は大きく、俺達が被弾するケースも増えてきた。


「うあっ!!」

「あぐっ!!」

 ブーメランがトパーズとラベンダーに直撃し、二人が壁に叩きつけられた。ノレクスが放った追撃のブーメランを、俺が叩き落とす。


「はぁっ、はぁっ!!」

「ぜぇっ、ぜぇっ!!」

 二人とも限界が近い。肩で大きく呼吸をしていた。


「少し出力を上げるしかないか」

 俺は闇の力の段階を少しだけ上げることにした。しかし、こうしてしまうと恐らく後1分も持たない。


「ぬぅ、ちょこまかと!」

 俺のスピードが上がったのを見てノレクスが反応した。トパーズとラベンダーからも黄色と紫の魔法光弾が飛び交う。


「うっ!」

 胸がうずく。限界が近い。これ以上続けると、闇に飲まれる。


 まだかハート! やっぱりまだ無理だったのか!


 そう思っていたその刹那、ピンク色のオーラが部屋中に溢れた。


「ハ、ハート!!」

「やった!!」

 満身創痍になりつつあるトパーズとラベンダーが叫ぶ。俺も胸を抑えながら彼女を見た。


 衣装に変化が起き、これまでのピンクはより彩度が落ちて神秘的に、しかし力が溢れてまるで風のような、アルティメットフォームに変身したユーラル・ハートがそこにいた。


「アルティメットフォームか!」

 ノレクスはそれでも、絶望することなくハートを迎え撃つ。


「はぁぁ!」

「ぬぅぅん!」

 アルティメットフォームのハートから放たれるピンクの魔法光弾を、ノレクスは弾き飛ばした。


「まさか!」

「そんな!」

「いや、続けるんだ! 君達も!」

 一瞬焦りを見せたトパーズとラベンダーだったが、俺は彼女達を鼓舞した。状況は大きく好転している。ここは押し切る場面だ。


 ノレクスの緑のブーメラン、トパーズとラベンダーの黄色と紫の力、俺の赤い闇の光、そしてハートのピンクのパワーが、広間中を駆け巡る。


「がっ!!」

 ユーラル・トパーズが腹部にブーメランを喰らい、そのままダウン。


「きゃあっ!!」

 ユーラル・ラベンダーにはノレクスが手から放った緑の光弾が撃ち込まれ、戦闘不能に。


「はぁぁ!!」

 俺の赤い攻撃がノレクスに命中し、ノレクスは態勢を崩した。


「今!!」

 最後はハートの極太のピンク色の魔法ビームが、ノレクスを撃ち抜いた。


「はぁっ、はぁっ!」

 流石のハートも大きく息切れしている。


 俺は急いでノレクスの様子を確認した。気絶しているようだったので、ハートに手で合図を送った。


「よ、良かった……」

 ハートは初めてのアルティメットフォームで力を使い果たしたのか、尻もちをついて一気に魔法少女形態が解除されてしまった。


「桜乃(さくの)、お疲れ様」

「よくやった! これで結社の企みも阻止できたね!」

「えへへ」

 理人とユリールが桜乃の元へ行き、労っている。


 俺は、限界だった。桜乃に挨拶することなく、その場を後にする。


「あ、ちょっと!」

 桜乃の声が聞こえたが、本格的にまずかったので、気にせずに部屋を出て、人の来なさそうな場所に座り込んだ。


「はっ、はっ、はっ!!」

 冷や汗が止まらない。視界がぼやける。身体と心を侵食しようと闇が語りかけてくる。


『自由になれ』

『心のままに暴力を』

『闇に従え』

 俺は戦闘スーツを解除すると、代わりに魔具を一つ取り出した。効果は微弱ながら、闇の侵食を抑える効果がある。副作用として眠ってしまうのだが、もう躊躇している場合ではなく、急いで吸い込んだ。


 視界が白くなり、地面に倒れる。本当に闇に飲まれてしまった後ではまったく意味はないが、今ならまだ間に合うはずだ。


 しかし、こんなことでは、ネクロズガカの打倒など、夢のまた夢だな。


 そのまま、意識が途絶えた。

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