25 災厄への道
通路の奥には広間があり、邪気を撒き散らしながら、緑色の闇のオーラを身にまとった男がいた。着ているローブも緑だ。
「遅かったな、魔法少女。やはりここまで到達できたのはチーム・ユーラルだったか」
「結社アルコの者か?」
緑の男に、理人が声をかける。
「いかにも。私は結社No.4のノレクス」
「No.4!」
「それが目の前に!」
ユーラル・トパーズやラベンダーも緊張の混じった声を上げる。
「この先で結社の者が作業中だ。邪魔をしないでいただこう」
「作業?」
「魔法少女が隠す災厄の封印の地の情報を取得中でね。うちの腕利きがハッキングを頑張ってくれている」
災厄? 結社が、魔法少女が隠している大問題とは言っていたが、災厄とは何なのだろう。
「そんなことをペラペラと喋って良いのかしら!?」
「同志の元に到達できなければ問題はない。君達チーム・ユーラルはここで私が食い止める」
目の前の男の闇の力が急激に増した。
「な、なんて力!」
「だけど、私達だって強くなってきた!」
「うん、やろう!」
トパーズとラベンダーの鼓舞に、私も答える。
「君達は知らないだろうが、チーム・ユーラルは我々も評価していてね。弱点をつかせてもらうよ」
「じ、弱点だと!?」
理人がそう言うと、ノレクスの背後から4足歩行の中型の魔物が出現した。
「行け、分断しろ!」
「な、なにっ!?」
ノレクスが私とトパーズとラベンダーに攻撃し、私達が避けている間に、魔物がユーラル・アクアを突き飛ばしてしまった。
「アクア!?」
「後衛が狙われた!?」
なんてことだ! チーム・グレイスに指摘されたうちのチームの脆さを結社も把握していたということだ!
アクアは吹っ飛ばされ、これまで通ってきた通路を大きく後退させられた形だ。魔物はそのままアクアを追っている。
「あたしは大丈夫!! ノレクスに集中して!!」
通路の向こうで見えなくなったアクアが、私達に怒鳴る。
「さて、君達は優秀な後衛抜きでどこまでやれるかな?」
ノレクスは笑いこそしていなかったものの、してやったという余裕を感じた。
◇◇
吹っ飛ばされた先で態勢を立て直し、ユーラル・アクアは魔物が突っ込んでくるのを見ると、さらに後方にジャンプした。
魔物はここは絶対に通さないという気迫で停止し、アクアを睨む。
「そう来たか。チーム・グレイスの先輩達と一緒に想定した通りになっちゃったよ」
魔物を突破してチーム・ユーラルの仲間と合流するのは難しいと思われた。
「さて、どうしたもんかな。今の状態でこいつを単騎討伐はできなさそうだけど」
アクアは辺りを確認した。
「皆と合流できないなら……、こうだ!」
アクアは突然、背中を向けて逆方向に走り出した。魔物は呆気に取られたような様子だ。
「さあ、どう出る?」
アクアがちらっと後ろを振り返ると、魔物は咆哮を上げてアクアを追いかけた。
「オッケー、それなら、このまま別のチームのところまで、逃げる!!」
アクアも気合を入れ、全力で逃げ始めた。他のチームが奮闘しているエリアまで逃げて、集団戦に持ち込もうというのだ。
アクアらしい、柔軟な考え方だった。
◇◇
ノレクスは二つのブーメランを操り、私達を攻撃した。手を離した後も自在に操ることができるようで、避けたと思ったら軌道を変えて向かってくる。
「思ったよりやるな、チーム・ユーラル」
「そりゃあ」
「このケースを想定して訓練したからね!」
ユーラル・ラベンダーとトパーズが言葉で返す。
「なるほど、君達も援護に頼っていたことを自覚していたわけか。流石だな。だが!」
緑に光るブーメランは辺りを自在に動き、撃ち落とそうにも捕らえるのが難しかった。
「くっ、切りがないわ!」
本体にピンク色の魔法光弾を放っても、ブーメランが戻ってかき消してしまう。ユーラル・アクアがいない状況の訓練はしたとはいえ、やはり4人がフルで揃っている時に比べればチームの総合力は落ちていた。
「左に飛べ!」
「えっ!?」
聞こえてきた声に従い、左にジャンプすると、私のいた位置を赤色のビームが駆け抜けた。
「うおっ!」
ノレクスは回避行動を取ってそのビームを避けた。ブーメランでは打ち消せないと判断したようだ。
ビームの出どころをみると、やはり赤い闇使いがいた。
「出たわね」
「赤い闇使い!」
ユーラル・トパーズとラベンダーが反応した。赤い闇使いは一足飛びで私達のところに着地した。
「いつも助けてくれるのはなぜなの?」
「勘違いするな、成り行きだ。結社の目的が災厄の封印を解くことだというなら、私の敵だ」
「噂の闇使いか。なるほど、あれを知る者のようだな?」
「あの災厄は制御することなどできない。利用しようとしているならお門違いだ」
「制御など必要ない。我々が望むのはこの汚れた世界の浄化だ」
「何だかよく分からないけど、やっぱり破滅願望だってこと?」
「破滅だなどと。世界を正しい世界に戻すのだよ。この世界にくだらぬ生命など必要ない!」
ノレクスは滅茶苦茶なことを言う。それが破滅願望でなくて何だと言うのか。
「調べはついているぞ、赤い闇使い! 貴様は闇の侵食を恐れている! ならば戦いが長引けば役立たずとなろう!」
「その通りだ。その前に終わらせる」
赤い闇使いはそう言うと、両手に赤い光刃を展開してノレクスに襲いかかった。ノレクスは緑のブーメランでそれを牽制する。
「トパーズ、ラベンダー! 私達も!」
「オッケー!」
「敵の敵なら利用しないとね!」
ユーラル・アクアの援護がない状態でも、赤い闇使いが来てくれたおかげで、戦況はかなり落ち着いた。
しかし、赤い闇使いには力を使う上限がある。彼に限界が来る前に決着をつけたいが、それにはまだ何かが足りなかった。




