23 後を託せるかも
私達は必死にユーラル・アクア抜きでのチーム戦に取り組んだ。最初はあっさり倒されていたが、理人からのパワー供給で無理やり訓練を継続し、立っていられるケースも増えてきた。
そして、
「ここまでにしようか」
グレイス・キルシェ先輩が言った。心なしか、笑っているようにも見えた。
「チーム・ユーラルは良いね。姿勢がいい。すぐに言われたことを出来るようにしてくるから」
「そうでしょうか……?」
「そうだよ。いい後輩だ!」
チーム・グレイスからの言葉に、私達は顔を見合わせて笑顔が漏れた。
「そうだなぁ、直接的な訓練はここまでにして、ちょっとアルティメットフォームチャレンジをしてみようか」
「えええ!?」
「わ、私達がですか!?」
「今日すぐになんて無茶は言わないけど、経験しておくことは大事。理人君もちょっと頑張ってもらうよ!」
「は、はい!」
理人と密着しているチーム・グレイスの導き手将さんの力で、チーム・グレイスの魔法少女達がアルティメットフォームに変身した。
「うわっ!」
「な、何もしていないのに凄い圧力!」
「4人でのアルティメットフォーム!」
私達は口々に驚きの言葉を言った。
「さあ理人、俺がやっているようにやるんだ」
「ぐぅぅ……!」
理人から私達に送られてくるパワーが強まる。将さんのやり方を直接踏襲しているような形だ。
「頑張れ理人君。チーム・ユーラルは本当に頑張っているから、君次第で本当にできるかもしれないぞ」
チーム・グレイスの魔法少女からも檄が飛ぶ。
あれ……? 確かにいつもと違う……? 何か、あと少し何かがあれば、目の前の人達と同じ領域に行けるような……。
「目の前にいる見本は大事だよ! こうなれるようにするにはどうすれば良いか、感覚を掴むんだ!」
私達の様子を見て、キルシェ先輩が言う。そこに近づいているのだろうか。
そんな時間がしばらく続いたけれど、誰も結局アルティメットフォームに変身することはできなかった。
◇
「ご指導、ありがとうございました!」
終わりも理人が代表して挨拶をした。チーム・グレイスが帰りの準備をしていると、グレイス・キルシェこと桃華先輩が話しかけてきた。
「桜乃、お疲れ様」
「桃華先輩、本当にありがとうございました!」
「いや~、君は本当に頑張っているねぇ」
「ええ、どうしたんですか?」
桃華先輩は私を抱き締めてきた。
「正直、さっきのアルティメットフォームチャレンジ、桜乃は結構惜しかったよ」
「ほ、本当ですか??」
「うん。後ちょっと、何かきっかけがあれば行けると思う。凄いよ、今年魔法少女になったばかりでしょ?」
「いいえ、私なんて、まだまだです。先輩達に助けられてばっかり」
「なぁに、すぐに助ける側に立つよ、君は」
「は、はぁ……」
褒めてくれるのは嬉しいけれど、やっぱり桃華先輩との差は大きいと思う。その差が埋まる日が来るのだろうか。
「桜乃、もし私に何かあったら……」
「え?」
「桜乃になら後を任せられるかな?」
桃華先輩は、妙にリアルなトーンになってしまった。
「そ、そんなこと言わないでください! 桃華先輩はいつまでだって最強ですよ!」
「……嫌な予感がするの」
「嫌な……予感……?」
「実はさ、結社アルコがやろうとしていること、結構ヤバいんだ」
「えっ!?」
桃華先輩がこういうことを言い出すということは、私達が知らないだけで、ランクの高い魔法少女には伝わっている情報があるということか。
「それに結社アルコ自体も、No.5のファルコンが言っていた通り、No.3以上は本当にヤバい。秘密なんだけど、ランク4位と5位の魔法少女チームが負けちゃったの」
「そ、そんな!?」
急に聞かされた信じられない情報に、私は驚愕する。4位と5位なら、桃華先輩達とそこまで差はないのかもしれない。それが負けてしまっただなんて。
「私達も負けちゃうのかなって、最近は思うことも多い。だから、桜乃なら私達を超えて、あいつらを倒せるようになってくれるかなって」
「桃華先輩が負けたわけではないじゃないですか……」
「……」
「嫌です、負けないでください、桃華先輩! 私の将来を頼る必要なんてないです! 桃華先輩が負けるはずなんてありません!」
「そっか……。うん、ごめんね、弱気になった!」
ランク3位チームの大先輩が後輩に弱音を吐くなんて、事態はそんなに深刻なのだろうか。
私を抱き締めていた腕をほどくと、桃華先輩はいつもの笑顔に戻った。
「いや、ホントごめん! 怖かったよね、あんな情報聞かされて! 私がどうかしてた。私達も頑張るよ!」
「いえ、話してくれて、嬉しかったです」
「さっきの情報は内緒にしてほしいけど……、まあ、チーム・ユーラル内なら良いかな。でもそれ以上はやめといて、お願い!」
そう言うと、桃華先輩はチーム・グレイスのメンバーと合流し、拠点を後にした。
「桃華先輩が、チーム・グレイスが負けるもんか……」
去っていったチーム・グレイスに向かって、私はそう呟いた。




