21 やるべきこと
学校が終わると、理人の管理する魔法少女チーム・ユーラルの拠点で活動をする。その日々は変わらない。
変わったこともある。桜乃は自分の気持ちを自覚したからか、理人に話しかけたりスキンシップを取りに行くことが多くなった。
そして、浅黄や紫帆が頑張っている時には何もしていない。外から見ていると歪な気もするが、彼女達が決めたことなのならば。
俺も完全に吹っ切れているわけではないから、桜乃のそういう姿を見て傷つきはする。いっそ、魔法少女関連の活動をやめるかチームを変えてもらうのも手だとは思う。
しかし、結社アルコのターゲットが、俺の一族の宿敵ネクロズガカと思われる以上、手を引く選択肢はなかった。
「理人、ユリール」
「紅一?」
「どうしたんだい?」
「結社アルコが廃村で言っていたこと、何か分かっていないのか?」
廃村に結社のNo.5とNo.7がいたのは囮、次の一手を待てと、そう言っていた。それが何なのか、魔法少女連盟が突き止めているのかどうか。
「すまない紅一。僕達には知らされていない」
「神経質な案件だと思うからね。例え何か分かっていたとしても、知らされる魔法少女チームは一部だと思うよ」
「そうか……」
情報が落ちてくるのを待っているだけなのは嫌な感じがしたが、ネクロズガカのことは魔法少女連盟も大事にはしたくないだろうから、仕方ないのかもしれない。
一方、女子4人は魔法少女の訓練をしていた。出撃予定も連盟からの仕事依頼もなかったので妥当ではあったし、廃村で改めて魔法少女ランク3位のチーム・グレイスの凄さを見て気合が入ってもいるようだった。ユーラル・アクアだけは相変わらずマイペースだったけれど……。
◇
魔法少女達の訓練が終わらない中、俺は帰宅させてもらった。これまでなら桜乃と一緒だったけれど、少なくとも今はそうしたくない。
家に着くと、来客がいた。
「こんばんは、紅一くん」
「山崎さん、もういらしていたんですね」
俺のもう一つの顔、闇の勢力としての知り合いだった。父の親友でもある。奈雲一族が研究してきた闇の力の使い方をレクチャーしてくれた人でもあった。
母が既に応対してくれていたが、俺は早速話を切り出してみることにした。
「山崎さん、結社アルコについて、何か分かりますか?」
「いや、恐らく君が知っている以上の情報はないよ。結局、今の奈雲家は闇の勢力としては潰された後の残党にすぎないから、私も情報を得るツテがなくてね。すまない」
「いえ、無理を言ってすみません」
山崎さんとて、俺が父の成果を引き継ぐのを手助けしてくれた以外は普通の仕事をしているのだ。あまり無理を言ってはいけないだろう。
「しかし、紅一君の言うように、結社アルコが言っていた『魔法少女が隠している大問題』という言い方は十中八九、ネクロズガカのことだろうね」
「封印を解こうとしているとしたら、目的は何だと思いますか?」
「難しいな。既に心が闇に染まっている連中だとしたら、何かしらの破滅願望でもあるのかもしれない。この世のリセット願望とかね」
「それは、後先のことを考えないでいいでしょうから、厄介ですね」
二人で話していると、母も会話に入ってきた。
「もし、ネクロズガカの封印が解けてしまったら……?」
「誰かが止めなければ、世界を滅ぼすまで暴れまわるでしょう。あれはそういう怪物です。無論、魔法少女では倒せないことは歴史が証明しています」
「かと言って、奈雲一族の闇の力も現時点ではネクロズガカを倒せないし」
「結局、そうなったら魔法少女連盟に再封印してもらうしか手はないでしょうな」
「封印の儀式、あの酷い方法ね……」
母は顔をしかめながら言った。
いくら世界のためとはいえ、知れば知るほど醜悪なやり方なのだ。そういえば、リゼは魔法少女のシステムをくそったれと言っていた。彼女がこれを知ったらどういう反応をするのだろう。
「話は変わるけど紅一君、魔法少女に関わっているんだって?」
「ええ、まあ……。近所の娘が魔法少女になってしまって成り行きで……」
「誰も、感謝してくれないかもしれないわよ?」
「そうかもしれない。でも、ネクロズガカの件は、誰かがやらないと。もし、復活なんてさせられてしまったら……」
そこまで言って、ふとチーム・ユーラルの皆の顔が浮かぶ。桜乃絡みで嫌な想いをすることになったとはいえ、皆頑張っているのは知っている。可能性は低いが、彼らが封印に関わるかもしれないことを思うとゾッとする。いや、チーム・ユーラルに限らず、誰かが確実に関わることになるのだから。
「もっと前の代で倒すことができていればね」
「仕方ないですよ。現時点でも全く足りないんですから……」
結社アルコがネクロズガカの封印を解くことを目的としているのなら、断固阻止。少なくとも、それが俺のやるべきことだ。




