17 魔物の製造
「結社アルコが魔物を製造している」
冬が近づいた頃にもたらされた情報だった。
「いかれているわね……」
「その魔物で何をしようっていうのかしら」
浅黄と紫帆が憤る。
「しかも、よりによって日本国内か」
「当然、日本の魔法少女で対処するんでしょ?」
リゼと桜乃が理人とユリールに確認する。
「ああ。複数のチームが集められる」
「チーム・ユーラルも選ばれている。君達の努力が認められているってことさ」
理人とユリールが答えた。
編成表を見ると、ランク入りしている魔法少女チームが多数いた。ランク3位で、日本国内では最強のチーム・グレイスもいる。新人チームがここに名を連ねているのは凄いことだと思う。
「俺もいつものようにサポートしないとな」
「そうだ、紅一。その心が大事だよ。いつもと違うことをしようと思う必要はない。皆も平常心でね」
理人が俺の言葉に続いた。もっとも、俺のサポートというのは別の意味もあったのだけれど。
◇
決行日になり、ターゲットである田舎の廃村に侵入する。確かに邪気が異様な乱れ方をしていた。至る所に現代文明とは異なる道具が置いてあり、怪しく光っている。
カプセルのようなものもあったので、この中で魔物を製造していたと思わせる代物だった。
「襲撃! 襲撃!」
廃村とはいえそれなりの広さがあるため、チームは散開していたが、他のチームが襲撃されたとの連絡が入った。
「相手は!? 結社か!」
「いいえ、魔物です! 大型の!」
同行している魔法少女連盟の職員が怒鳴り、各チームに伝令が入る。
「こっちにも来たよ!」
「応戦だ!!」
チーム・ユーラルの位置にも魔物が現れた。姿としてはゾウ、しかし、翼があり、肩から触手が二本生えているあたり、キメラと言っていいかもしれない。
ゾウのような鼻と、肩から生える触手からビーム形状の攻撃が繰り出される。
「くっ!」
「威力が高い!」
ユーラル・ハートでさえも、直接受けるのは危険そうな威力で、避けるのに徹していた。
「チーム・グレイスが超大型と交戦中!」
戦闘中でも周囲の情報が入ってくる。ランク3位のチーム・グレイスはヘルプには来れそうもないので、各チームは自力で何とかする必要があった。
チーム・ユーラルも強いチームのはずが、キメラ型に相当に手こずっている。4人とも理人の導き手連携を受けているのに。結社に造られた魔物は本当に強力らしい。
「連盟と連携するよ!」
俺はチームの皆に怒鳴った。
「分かった!」
「気をつけて!!」
理人とユーラル・ハートから声が返ってきた。
当然、それは建前で、俺は適当な場所で戦闘スーツを展開し、戦場に戻った。いつもはユーラル・ハートを中心に援護していたが、今日は4対1の戦いになっているので、チーム・ユーラル全体のヘルプに入る。
「あっ、赤い闇使い!」
ユーラル・ハートが俺に気づき、声を上げた。俺はすかさず魔物を指差す。魔物をどうにかするぞという合図だ。
「また来たの」
「でも、ありがたくはあるね」
ユーラル・トパーズとラベンダーが言葉を続けた。
鼻を合わせると、触手形状で様々な方向にビームを撃てる器官が3つ。ハートとトパーズとラベンダーが前気味に、アクアが後ろ気味に援護をしている状態が膠着している。
俺は赤い光弾でヘルプに入った。主にハートの眼前にある鼻とやり合う。
「いつも来てくれるのはありがたいけど、闇の侵食は大丈夫なの?」
ハートが俺に言う。
「くだらない心配をするな。危なくなるまで粘ったりはしない。君達も私がいる内にせいぜい利用することだ」
「あら、そう!」
この姿で応対する中で、ハートは初めて笑顔を見せたかもしれない。何度もヘルプに入ったから少しは信用してもらえただろうか。
鼻から発せられる闇のビームをハートが避ける。さらにハートを横薙ぎにしようとした鼻を俺が赤い光を帯びた蹴りで防御。一部位に二人が入ったことで、ハートの負担もだいぶ減ったように見えた。
「今だ!」
「はぁぁ!!」
俺の攻撃で怯んだキメラ型を、ハートは極大の魔法光弾で撃った。後方から青いビームも飛んでくる。それはアクアが撃った攻撃だった。ピンクと青の光が交錯し、凄まじいエネルギーとなり、魔物は消滅した。
「ふぅ、何とかなったか」
俺がそう言うと、ハート達はチャンスと見たのか俺に向き合った。
「今回は話ができるタイミングね」
「助けてくれるのは良いんだけど、あなたには逮捕命令が出ている」
「一緒に来てくれるかしら?」
ユーラル・ハート、トパーズ、ラベンダーに囲まれた。いつも鋭く俺の後を追ってくるアクアは少し離れた位置にいる。
俺はため息をつきながら、上空を指差した。魔物が多数飛んできていたのだ。
「えっ!?」
「上からも!!」
俺に意識を向けていたハート、トパーズ、ラベンダーの3人が上を向いたと同時に、俺は上方向に赤い攻撃を放った。すると、アクアの青い攻撃も同時だった。ふとアクアを見ると、ウィンクを返してくる。
本当に、アクアはよく分からない。攻撃力は他の3人の方が遙かに上だとは思うが、アクアから感じる凄みはそこではない。回りをよく見ているということなのだろうか。
引き続き、連携の一角を担って魔物達を撃退していたが、途中でユーラル・アクアに突き飛ばされた。
「うおっ!?」
「一応、評価はしてあげる。やるじゃん」
「なに……?」
「初めて会った時よりよっぽどコントロールできてる。その上で威力も上がっているのは素晴らしいね」
「……」
辛辣なことを言われ続けていたが、今回は何やらポジティブな言葉だった。一応、俺もこの数ヶ月、どうすれば良いか考えて、闇の力を使う効率、力を抜くポイント、最大威力を増す訓練はしてきたつもりだ。
「でも、そろそろやめときな。後は大丈夫だから離脱を」
「君は、一体……」
どうして分かるのか。確かに、そろそろ限界を迎えつつあった。なぜ俺でない君がそこまで正確に把握できる?
「すまない」
俺はアクアに礼を言い、離脱した。




