12 闇使い
紅一を離脱させたものの、私達チーム・ユーラルは魔物の数に押されて分断されてしまった。
「あたしは大丈夫!! 皆、自分の守りを優先して!!」
「こっちも大丈夫よ!!」
ユーラル・アクアとユーラル・トパーズの声が響く。私は二人を信用し、魔物を不用意に追撃せずに戦況を見極めようとした。
魔物の攻勢に位置を移動させられ続けていると、他のチームと思われる魔法少女が3人、変身が解けた状態で倒れていた。魔物はさらに危害を加えようとしており、まだ健在な魔法少女が二人で何とか応戦している。
「このぉ!!」
私はピンクのオーラをまとった拳で魔物達を撃退した。
「皆、大丈夫!?」
「ハート、ありがとう!」
「助かったよ……」
倒れている3人を移動させ、私達は状況確認をする。
「敵が多すぎるよ!」
「いったいこれはどういう……」
そんなことを言っていると、また別の位置から悲鳴が聞こえた。私がこの声を間違うわけはない。これは、
「まさか、ラベンダー!?」
「え、ハートのチームのユーラル・ラベンダー!?」
「ハート、ここは大丈夫! 行って!」
「っ……!! うん、ありがとう!!」
このチームも心配だが、明らかにラベンダーがピンチだ。助けに行かなくては!
◇
尋常ではない様子のユーラル・ラベンダーの悲鳴に、私は全力で声のした方向へ急いだ。
そして、現場に辿り着くと、変身を解除された女子が3人、魔法少女が一人倒れており、ラベンダーは、
「あ……」
ラベンダーは理人に抱き締められて声を上げて泣いていた。
ラベンダーともう一人の魔法少女から煙が出ている。相当に酷いダメージを負わされたと予想できる。別の位置に魔物が消滅した形跡があり、そこには紫の光の残り香があったから、倒したのはラベンダーだ。
「そっか、至近距離でのパワー供給……。理人が助けてくれたんだ……」
良かったはずだ。ラベンダーは無事だったのだから、喜ぶべきだ。
だけど……、理人と抱き合うラベンダーを見て、私は言いようのない抵抗感を覚えてしまう。
なんで……、どうして……。
戦いの最中だというのに私は混乱し、静かにその場を離れた。
◇
どうしてか動揺する心を落ち着けるかのように、別のチームを襲っている魔物を撃退したりした。
「ほお、流石ですね、ユーラル・ハート」
「えっ!?」
青より濃い、藍色の閃光が轟き、私は何とかそれを避けた。
「強化した魔物を次々と撃退した上に、私の攻撃も避けるとは。想像以上ですよ」
「何者!? 魔物なの!」
私の前に姿を現したそれは、藍色のフードを被った、声質からして男だ。
「いえいえ、私は人間ですよ。名前はゲルマ。以後、お見知りおきを」
「ゲルマ? 人間? でも、その邪気は!?」
「おや、知らないのですか? 人間だって闇の力を使いますよ。向いてはいませんがね。今の時代は平和な方ですが、一昔前は、魔法少女と戦う闇の組織が沢山あったものです」
「そ、そんなこと……」
「強くても新参者ですね。順調に行けばその内に教えてもらえたのかもしれませんが!」
ゲルマが懐から小剣を取り出した。闇の力をまとっていて、物凄い圧力を感じる。
「あなたは我々の脅威となりうる魔法少女だ。お友達の紫の魔法少女は強化した魔物にそれはそれは苦戦していたのに、あなたは同格を導き手なしで何体も倒している。ここで消えてもらいます」
「うっ!?」
ゲルマが小剣を横薙ぎにすると、藍色の斬撃が飛んできた。
範囲が広い! 避けるよりもいなす!!
私はピンクの光を帯びさせた両腕でそれを受け、後ろに受け流した。
「流石ですが、一つではありませんよ!」
「なっ!!」
ゲルマは次々に攻撃を繰り出してくる。
全部を受け流すのは無理だ! 回避も併用しないと!!
信じられない強さ! けれど、訓練で対峙した桃華先輩ことグレイス・キルシェに比べれば、十分に何とかなるレベルだと思う。何か、考えないと。
「はぁっ!! はぁっ!!」
しかし、ついに息が切れ始めてしまった。疲労が蓄積すれば勝機が遠ざかってしまう!
「そろそろ限界ですね。君のチームの導き手が合流する前に勝負を決めさせていただきますよ」
「り、理人のこと!?」
そこまで調べられていたとは。しかし、その名前を出されて、先ほどの理人とラベンダーの姿を思い出し、戦闘中だというのに集中力が飛んでしまった。
「隙あり!!」
「あっ!!」
油断したところにゲルマが小剣を横薙ぎにした。まずい、状況が分からない、当たる!!
私は本能的に防御姿勢を取った。その時、
「ぬおおっ!!」
ゲルマが悲鳴を上げたかと思えば、木の上から赤い光弾がいくつも降り注ぎ、ゲルマ本人を撃ち、私を狙っていた斬撃を叩き落とした。
ふと、顔を上げると、目の前に赤い服を着た人物がいた。両手に赤いオーラが光っている。赤いマスクをかぶっていて、顔が分からない。
「苦戦しているな?」
人間の声ではあるが、声が変えられている印象だ。ただ、男の声だと思う。
「え、ええ……」
私はその人物の手を取って立ち上がった。
「一体あなたは? それ、闇の力でしょう?」
「話は後だ。まずはこいつをどうにかするぞ」
赤い服の男は、ゲルマを指さした。
「ええ、そうね」
何者かは分からないし、闇の力を使っている以上油断はできないが、少なくともゲルマという人物と敵対していることは分かった。敵かどうかの判断は後にし、まずはゲルマを何とかしないと。




