↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
説明不足な6つのチート ~使いこなして、破滅するヒロインたちを救うまで~  作者: タカツキビヨン
第四章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

110/148

第110話 なんか変なんだよねー

 しばらく休んだあと、宣言どおり今度はエリルが相手になった。

 何度かやり合ったが、全くお手柔らかにはしてくれなかった。


「うーん」


 エリルは腕を組み、少し考え込む。


「なんか変なんだよねー」


「……はぁ、はぁ。何がだ?」


「最初の魔法は普通。でも、そのあとだけ妙に間が空く」


「……キュルが遅いって言ってたのも、それか?」


「たぶん。ただ、なんでそこだけ間が空くのかが分かんないんだよね」


 キツキは息を整えながら、自分でも考えてみる。

 最初の魔法が普通なら、おかしいのはそのあとだ。なら、何を間違えてるんだ、俺は。


「もうちょっと見てみるよ」


「頼む」


 エリルは小さく頷いた。


「あ」


 不意にキュルの声が聞こえた。


「ん?」


 キツキがそちらを向くと、キュルは少し離れた場所を見ていた。

 その視線を追うと、いつからいたのか、ホンペクがそこに座ってこちらをじっと見ていた。


「お前、また勝手に……」


 そんなキツキをよそに、キュルはホンペクの方へ歩いていき、そのまましゃがんで白い毛に手を伸ばした。


「かわいい」


 ホンペクは特に嫌がる様子もなく撫でられている。キュルがそのまま抱き上げると、大人しく腕の中に収まった。


 キュルがホンペクを抱えたまま戻ってくると、エリルが顔を近づける。


「ああ、この子が例の精霊獣ちゃんか」


 ホンペクはエリルへちらりと目を向けたが、すぐにキツキへ視線を戻した。


「……?」


 相変わらず、じっとこちらを見ている。

 そのあと鍛錬を再開してからも、その視線は変わらなかった。


「……なんかデジャブだな」


 前にも、鍛錬している時にこんなふうに見られていた気がする。

 まあ、気にしてても仕方ない。今は鍛錬に集中しよう。


 そうしてキツキが意識を戻す一方で、エリルはその動きをじっと目で追っていた。

 最初の魔法は普通。遅れるのは、そのあとだ。自分なら、その間にどう動いているか。


 いつもの自分の動きと重ねると、ふと1つの可能性が浮かんだ。


「……もしかして」


 キツキは額の汗を拭い、エリルへ顔を向けた。


「……なんだ?」


「キツキ。魔法を使う時の流れは分かってるよね?」


「そりゃまあ。最初に魔力を巡らせて、術式を組んで、そこに魔力を通す、だろ?」


「うん」


 魔法を発動するまでの流れは、大きく3つに分けられる。


 まず、体内に魔力を巡らせ、魔法を扱える状態を作る。

 次に、その状態のまま、使う魔法の術式を組む。

 最後に、組み上がった術式へ魔力を送り、魔法として発動する。


 使う魔法を考えたり、知っている術式を頭の中で思い浮かべたりするだけなら、最初の段階は必要ない。

 ただし、実際に術式を組み始めるには、魔力を巡らせている必要がある。


 キツキも、この順番自体は知っていた。


「で、1発撃ったら、魔力を巡らせるのも止めてる?」


「……普通そうじゃないのか?」


 エリルが少し黙った。


「……ああ。たぶんそれだ。次の魔法に移るのが遅い理由」


「どういうことだ?」


「私は戦ってる間、魔力を巡らせた状態を途切れさせないよ」


「……途切れさせない?」


「うん。まだ魔法を使うなら、そのままにしておく。その分、魔力は使うけど、次は魔力を巡らせるところから始めなくて済むでしょ?」


「……そんなやり方できるのか?」


 キツキの中では、魔法を発動すればそこで終わりだった。魔力を巡らせるのも止めて、次に使う時はまた最初から始める。

 魔法を撃ったあとも、その状態を保っておくなんて、そもそも考えたことがなかった。


「それだけじゃないよ。次に使う魔法が決まってるなら、今の魔法を使ってる間に次の術式を組み始めることもある」


「今のを使いながら、次も?」


「そうそう」


 なるほど。だから最初は同じように動けても、そのあとのやり取りになると追いつけなかったのか。


 自分だけでやっていたら、しばらく気づけなかったかもしれない。


「……やっぱ見てもらって正解だったな」


「ふふ。エリル様に感謝したまえ」


 エリルは満足そうに、少しだけ胸を張った。


「はいはい」


 そうは返したものの、実際かなりためになったので文句は言えない。

 そのままキツキは近くの標的へ向き直った。


「ちょっとやってみる」


「どうぞ」


 まずは、魔力を巡らせた状態を残すところからだ。


 術式を組み、青白い雷を標的へ放った。

 いつもなら、ここで体内の魔力を巡らせるのも止める。だが今回は、その状態を保ったままにした。


 少し落ち着かない感覚はあったが、魔力の流れは保てている。


 続けて同じ雷の術式を組み、もう1発。

 間を置かず、2発目の雷が標的へ飛んだ。


「……お」


 明らかに早い。

 魔力を巡らせた状態を残しておくだけで、こんなに違うのか。


 続けて、1つの魔法を使っている間に2つ目の術式を組むやり方も試した。


 魔力を巡らせ、最初の雷の術式を組んだ。

 そして雷を放つのと同時に、次の雷の術式も組み始めた。


「あ」


 雷が標的の端をかすめた。


「次の術式を組む方に気を取られすぎだね~」


「……分かってる」


 もう1度。


 今度は最初の雷に意識を多めに割いたが、その分、次の術式を組むのが遅れてしまった。


 その後も何度か繰り返したが、次の術式に意識を割きすぎれば今使っている魔法が雑になり、逆に今の魔法に集中すると次の術式を組むのが遅れる。


「……ムズイなこれ」


「慣れだよ慣れ」


 簡単に言うなと思ったが、実際にエリルはそれをやっている。

 なら俺も、とにかくやって慣れるしかなさそうだ。


 それからも何度も雷を放ち、最初の魔法と次の術式に割く意識の加減を探っていく。


 繰り返すうちに、動かない相手なら最初の魔法を崩さず、次の術式も途中まで組めるようになってきた。

 2発目を放つまでの間隔も、試し始めた頃より明らかに縮まっている。


「……よし」


 自然と口元が緩む。キツキはそのまま標的から視線を外し、キュルを見た。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。