4話12
大声を上げるカーラをほっといて、俺は店内を物色する。大人びた物だとか、足を長くみたいなものはいらないんだ。
仕事道具を吟味するように辺りの服を散らかし、しばらくしてようやく目的の物を見つけた。
それは白いワンピースのようなものだ。
派手な装飾は少なく、裾や袖に控えめな刺繍が施されている。上等な生地を使っているらしく、布地には柔らかな光沢があった。
これで良い。俺はそれを手に取り、カーラに差し出す。
「ほら、試着室は多分あっちだ。これ着てこい」
「・・・は?」
「さっさと行け」
「いや、ちょ、ちょっと待っておくれよ!なんでアタシがそんなの着なきゃならないんだい!」
「うるせえなあ。早くしろって」
「い、いや。こ、こんな可愛いの、アタシにゃ似合わないよ」
カーラは差し出されたワンピースを受け取ろうともしない。
なるほど。自分がこんな可愛い服を着る姿なんて想像もつかねえって顔だ。
まあ、普段のこいつを見ていれば簡単に想像がつく。勝気でお転婆で、気にいらねえことがあったらすぐに手が出るような小娘だ。
普段だって見た目よりも動きやすさで服を選んでるんだろう。
時間も勿体ない。俺はカーラをおおよそ試着室だろうカーテンの中に無理やり放り込んだ。
カーテンが閉まる直前まで、何やら文句を垂れていたような気もするが、まあいいだろ。
「お客様、差し出がましいようですが・・・」
後ろからさっきの女店主が、申し訳なさそうに声をかけてくる。
「なんだ?」
「その、お嬢様のような体格でしたら、もう少し大人びたデザインの方がよろしいかと。こちらのような可愛らしいものですと、どうしても幼い印象になってしまいますので」
「いや、ガキのままがいいんだ」
「・・・はい?」
女店主がきょとんとした顔をする。
まあ仕方ない。服屋がわざわざガキっぽく見せる服を勧めるはずはないだろうしな。
だが、今回だけはガキっぽい方がいいんだ。
そうだな。まるで世間知らずな良いところのお嬢様みたいな、真っ白のワンピースの方が。
その方が、目をつけられやすいから。
「お客様がそうおっしゃられるのでしたら・・・」
納得いかない様子ではあったが、女店主は下がっていった。
しばらくすると、カーテンの奥から声がし始める。
「・・・なあ」
「着たのか?なら、さっさと出てこい」
「き、着たけどさ。やっぱり、似合わないよアタシにゃ・・・」
「それを決めんのはお前じゃない。ほら、早く」
何やらクソでも我慢しているような唸り声がカーテンの奥から聞こえる。
慣れねえスカート履いて腹が冷えたようだ。
そうして、腕組みをして片足を揺らしながら俺が待っていると、カーテンがほんの少しだけ開いた。
赤い髪が覗いて、白い肩が見える。その後、恐る恐る、夜中に墓地にでもやってきたのかって様子でカーラが姿を現した。
俯いて、肩をすぼめ、いつもの威勢が嘘のようだ。頬は赤く、今にも泣きだしそうな瞳は下に向いていた。
「に、似合ってないだろ。ちゃんと着たんだから、そろそろ説明しておくれよ」
俺はカーラの姿を、露わになった足元から順に上へと視線を動かした。
白いワンピースは、カーラの赤い髪によく合う。きっと誰もがその高価な純白に視線を奪われる。そして次は、この赤い髪に。
元々こいつは整った顔立ちをしている。しかし、普段はその性格と、適当にしている好き勝手跳ねた髪に隠れちまってるだけだ。
「よく似合ってる。可愛らしい」
「か、かわっ!」
カーラの顔がさっきよりも赤くなる。ガキに興味はねえんだ。ハンサムな顔も作ってねえし、別に口説いてるわけじゃねえ。
これだからガキは。
「ちょっとそのまま顔上げてじっとしてろ」
俺はカーラにそう伝え、後ろに控えた女店主の元に行く。
「すまねえが、クシはあるか?あったら貸してほしいんだが。あと髪くくる紐も」
「は、はい。かしこまりました」
女店主は未だ眉をひそめたまま、仕方なさそうに奥からクシと紐を持ってきてくれる。多分さっき自分が勧めた服の方が似合うはずだって思ってんだろう。
そんな顔すんなって、美人が台無しだ。まあ待ってろ。今にわかるから。




