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4話11


 さて、と。じゃあ次の目的地に行こう。

 確かさっきの男が言うには中央広場か。この前孤児院に行くときに通ったこざかしい噴水のあるところだろう。

 俺はそうして大通りへと向かおうとする。が、後ろの三人が立ち止まっている。

 あれだけアヒルの雛みたいに着いてきてたってのに、一体どうしたってんだ。

 これからこいつらを使おうと思ってんのに、特にカーラを。


 「どうした?いくぞ?」


 俺が声をかけると、何故か互いに顔を見合わせて笑顔になり、俺に走り寄ってきた。

 なんなんだ。よくわからんし気持ちが悪い。

 そして大通りに出て、東に見えるデカい門とは逆の方向へと向かう。

 

 「どこ行くんだろうな?」


 「次は、邪魔しないようにしないと」


 「・・・あのさ、さっきはありがとうね。かばってくれて」


 「いいって。結局最後はハンドラーに助けられたし」


 「うん。オレたち、何もできなかった」


 「ふふ、良い奴らだよアンタたち」


 「しっかし、カーラのケツなんて触ったっていいことねえのにあのおっさん。いでっ!殴りやがったな!?」


 「このガキ許しちゃおかないよ!」


 「ふ、リーチはやっぱり末っ子」


 また後ろがうるさくなってきた。黙って歩くこともできないのかこいつらは。

 しばらく石畳を真っすぐ進むと、円形の広場に出てきた。中央には噴水、周りには露店も多く出ている。

 丈夫そうな石やレンガで出来た店が作る外周に沿って、一つ一つ確認しながら歩いていく。


 「何か買い物かな?」


 「そろそろお昼。食い物かもしれない」


 「奢ってくれるんかしらね?」


 「でも、さっきオレたちのせいで、ハンドラーお金使った・・・」


 「ああ・・・」


 何の話してんだ全く。そうこうしているうちに、店先に色とりどりの巻物(スクロール)みてえに丸められた生地を置いた建物の前につく。同じ場所に、綺麗に畳まれた上質そうな服も置かれてある。

 店自体もかなりデカい。いいね。ここならあるだろう。


 「じゃあお前ら二人は外で待ってろ」


 俺はリーチとガバルにそう告げる。


 「え!?なんでだよ!」


 「なんで、カーラだけ?」


 「そ、そうだよ。服屋じゃないかいここは。アタシに何しようってんだい」


 「いいから早く」


 説明するのも面倒臭いので、二人を置いてカーラを店内に連れ込んだ。

 中に入ると、数人の女の店員が待ち構えている。俺好みの肉付きの良い年上の女、まだ未完成ながら素質のある若い女。他にもすぐに口説いてしまいたい女がいる。

 店内の作りも良い。外とは段違いの量の生地や、服が置いてある。上質なドレスが着せられたマネキンだってあるし、驚いたことに全身が確認できそうな縦長の一枚鏡だってある。中央っていう立地に、これだけの品ぞろえ、貴族だって使いそうな店だ。

 信頼できそうだ。


 「いらっしゃいませ。この度はどんなものをお求めでしょうか?」


 一番年上の女が俺の前に来る。真っ先に手から零れそうなくらいの大きな胸に視線を奪われる。

 視線を上に動かしていくと、不用心に白い首を露わにしていた。どうやら俺は吸血鬼だったらしい、今すぐにでも彼女の首に噛みついてしまいたい欲求が頭の中を支配している。

 魅惑的な朱色の唇に生唾を飲み、サファイアのような瞳に恋して、ようやくその綺麗な茶色の髪が頭頂部で結ばれていることに気付く。だから隙だらけに首があんなに出ているんだ。


 「君の美しいその白い首が俺の牙を誘ってるんだ。噛みついてしまってもいいだろうか、きっと優しくできないだろうが」


 「す、すみません私旦那も子供もいるので!」


 またやってしまった。たまに自分の性(さが)が憎くなる。しかも他人(ひと)の女だった。盗賊だからな、他人(ひと)の物は大好きなんだが、他人(ひと)の女にゃ興味ねえんだ。女は物じゃねえから。

 

 「間違えた。すまねえ。今日はこいつにドレスを見繕ってほしい」


 「え、ちょ、待ってどういうことだい!?」


 俺はカーラをほっといて、美しい女店主に金貨二枚を渡す。


 「き、金貨、二枚。か、かしこまりました!ただちに!」


 店主は金を確認すると、慌てたように周囲の店員に指示を出し始めた。

 そして何着か高価そうなドレスを俺の元へと持ってくる。

 女店主はそのうち一着をまずは広げて見せた。それは濃紺のドレスであった。

 

 「お、お嬢様は小柄でいらっしゃいますので、胸下にくる高めのウエストラインのこちらなら脚が長く見えてよろしいかと。色もダークネイビーで、引き締まって見え、大人っぽさを演出します」


 「違う」

 

 俺が却下すると、女店主はまた慌てて二着目を広げる。今度は緑色のドレスだ。


 「す、すみません。こちらはタイトな物で、全身をスッキリ見せ身長を高く見せることができます。色はグリーンで落ち着いた印象と上品さを出すことが」


 「ダメだな」


 「すみません、では次は」


 「いや良い、もう俺が選ぶよ」


 そうして俺は店員たちの持ってきたドレスに見向きもせず、他に良いものがないか探しだす。

 すると、カーラが慌てて俺の方に寄ってきた。


 「な、なあ説明しておくれよ!何するつもりなんだい!」


 何するつもりって。


 「お前をお姫様にすんだよ」


 「は、はああ!?」

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