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現代解釈桃太郎 ~大都会鬼討伐戦記~  作者: はの


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第49話 玉野市

 ヒュルルル。

 何かが飛んでくる音がする。

 

 青鬼は目の前にいる四人の市町長から目を逸らし、音のする方向へ振り向いた。

 

「な!?」

 

 振り向いた青鬼の目の前には砲弾が届き、その場で爆発した。

 爆風が水の体を散らし、爆熱が水の体を蒸発させる。

 が、海から吸い上げた海水ですぐさま顔を再生し、玉野ねねを睨みつける。

 

「なんだ!! 次から次へと!!」

 

 驚いたのは、青鬼だけではない。

 四人の市町長も同様だ。

 

「? 玉野殿は、赤鬼の討伐に向かう話だったはず」

 

「私もそう聞いてたー」

 

 市町長たちの様子を知ることもなく、玉野ねねは再び船上に現れて、海へと跳んだ。

 そして、海上を駆け、青鬼の方へと向かっていく。

 

「船は遅くて駄目よね」

 

 玉野ねねは、海のスペシャリスト。

 水泳だけではなく、海上を走ることさえ朝飯前だ。

 ではなぜ、そんな芸当が可能なのか。

 それは、玉野市が保有する、巨大な海水浴場に起因する。

 

 渋川しぶかわ海水浴場。

 白砂青松はくしゃせいしょう――白い砂と青い松により形成される、美しい海岸である。

 その美しさは、『日本の渚百選』、『快水浴場百選』にも選出された程である。

 また、海岸の長さは一キロメートルで、岡山県下最大の海水浴場でもある。

 海水浴場でありながらウォータースライダーも存在し、バーベキューも可能。

 まさに、友達とも恋人とも家族とも来ることができる、万能の海水浴場なのだ。

 

 そんな玉野市に生まれた玉野ねねにとって、海と触れ合うことは必然。

 海で泳ぐも走るも、自由自在に成長した。

 

 遠隔操作により、遠方からの砲撃が絶え間なく続く。

 青鬼の体は何度も何度も崩される。

 

「糞たわけが!!」

 

 青鬼が体を再生している間に、玉野ねねは青鬼の足元へと辿り着く。

 

「はあーい」

 

「この鬱陶しい砲撃を止めろ!!」

 

 青鬼は脚を上げて、玉野ねねの立っている場所を踏みつける。

 海面に大きな穴が開いて、波が四方八方へと広がる。

 玉野ねねは発生した波の上で、サーフボードに乗って青鬼を見ていた。

 

「あっぶなー。ねえ、ウサちゃん?」

 

『ナイス回避だよ、ねねちゃん!』

 

「えへへー。ありがとう!」

 

 玉野ねねはサーフボードからさらに跳び、ウサギのぬいぐるみを青鬼の頭上に叩きつける。

 

「ぐおっ……!!」

 

 玉野ねねは、海と友達。

 友達だからこそ、殴り合うこともできるのだ。

 

「てめえも!! 触れんのか!!」

 

「? まあね」

 

 青鬼は思い出す。

 炎の体に触れてきた、備前紅葉の存在を。

 

「くそつ!!」

 

 青鬼は水の体を崩し、滝のように海へと還っていった。

 水の体は、通常の体に比べて動きの鋭敏さを失う。

 それ故、青鬼は水の体で、海中での戦いに切り替えた。

 人間もまた、海中では動きが鈍くなるのだから。

 

「!?」

 

 が、海中で青鬼が見た物は、無数の潜水艦だった。

 そのすべてが、大砲を青鬼へと向けている。

 

 防衛省向け潜水艦救難艦『ちよだ』。

 長さ百二十八メートル、幅二十メートル、深さ九メートル。

 海上自衛隊の保有する潜水艦救難艦である。

 潜水艦の乗組員を救出するための潜水艦や、海中で人間を探すための遠隔操作式無人探査機を搭載しており、遭難潜水艦から乗員を救出することを主任務としている。

 余談だが、『ちよだ』という名前は『千代田城』、即ちかつての江戸城に由来している。

 

 そして、この『ちよだ』を製造したのが、岡山県玉野市に存在する三井造船株式会社玉野事業所である。

 玄関港として宇野港を有してきた岡山県は、高い造船技術を持つ。

 太平洋戦争下においては軍用艦の建造にも関わったほど、造船の歴史は長い。

 また、造船を土台として築いてきた技術力は、造船以外にもエンジニアリング事業から社会インフラ事業まで展開している。

 現在は造船事業を譲渡しているが、それでも玉野市には残っている。

 圧倒的な、造船技術が潜んでいる。

 即ち、造船大国岡山。

 

 その技術力をもってすれば、鬼退治のための潜水艦をずらりと並べることなど、容易なのだ。

 

「三、二、一。ファイヤー!」

 

『ファイヤー!』

 

 無数の砲弾が、海面ごと青鬼の水の体を消し飛ばす。

 

「ぐ……ぐおお!! 糞!! が!!」

 

 水の体でも駄目だった。

 そう悟った青鬼は、水の体から魂を脱出させ、元の体を呼び寄せる。

 

 

 

 

 

 

「はい、残念。体はもう、あたしゃの物だよ」

 

 が、来なかった。

 元の体は、備前紅葉の耐火煉瓦の下敷きになっており、地面にねじ伏せられていた。

 

(俺の体を!!)

 

 魂となって浮遊する青鬼の元に接近するのは、瀬戸内瀬戸。

 魂を切る、山鳥毛を振りかぶる。

 

「ここまでのようだな?」

 

(!? 待て!?)

 

 一閃。

 体外に放出されて、圧縮されていた魂の核が、二つに分かれる。

 

(お……あ……!!)

 

 二つに分かれた魂は、再びの接合を試みるが、瀬戸内瀬戸が再び斬る。

 二分割。

 四分割。

 八分割。

 十六分割。

 

 青鬼の魂は、千を超える数に分かれたところで、再生能力を失って消滅した。

 魂の消失と同時に、元の体も後を追うように消滅し、耐火煉瓦の下は空となった。

 

「やっほー。皆、無事?」

 

 海から上がって来た玉野ねねが、ウサギのぬいぐるみを振りながら備前紅葉へと近づく。

 

「ええ、あたしゃたちは無事よ」

 

「そ。良かった良かった。来たかいがあったよ」

 

「ところで、何でこっちに? ねねちゃんは、赤鬼退治の担当じゃなかったっけ?」

 

「あー、それがね。きっと青鬼とは海での戦いになるだろうから、そっちに回ってって岡山市長が」

 

 

 

 残る鬼は、後一体。

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