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現代解釈桃太郎 ~大都会鬼討伐戦記~  作者: はの


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第42話 赤磐市

 青鬼は、地上を生きる生物だ。

 それ故に、青鬼が地上に落ちることは、青鬼の戦闘力を最大化することを意味する。

 

 だから、和気麻琉古を含む市町村長たちは話し合い、青鬼を空中で葬ろうと決めた。

 上空戦闘のプロフェッショナルである和気麻琉古が先発なのは、そのためだ。

 

「むう、いかん。青鬼が地上へ落ちてしまう」

 

 和気麻琉古は急いでドローンと鯉のぼりを動かし、青鬼を上空に引っ張り上げようと試みる。

 が、和気麻琉古自身、複数の小型ドローンの上という不安定な状態にある。

 ドローンと鯉のぼりを操作するには、あまりにも集中できない状況だった。

 

 一方の青鬼は、近づいてくる地上を前に、落下の衝撃を最小限にとどめようと受け身の形をとる。

 そして、地上についた瞬間、周囲の物を投げつけてドローンを落としてやろうと画策する。

 

 

 

「麻琉古の馬鹿! 青鬼を地上に落としちゃって!」

 

 が、現実は、青鬼の思惑と大きく外れた。

 

 雲から伸びる巨大なブランコが、青鬼に向って近づいてきた。

 巨大なブランコの上には一人の少女が乗っており、ブランコに乗ったまま片足を曲げた。

 

「何だ!?」

 

「えーい!」

 

 そして、ブランコの移動速度も加わった速度で、青鬼を蹴り上げた。

 

「ぐおっ!?」

 

 地上に落下中の青鬼の体は、無理やり上空へと蹴り戻される。

 和気麻琉古は、自身の横を通過をして上空へ飛んでいく青鬼を見た後、蹴り飛ばした少女に視線を移した。

 

赤磐あかいわ殿……」

 

「麻琉古の口下手っ! 計画から反れそうだったら、すぐに言いなよ! 言ってくれれば、ちゃんとサポートに入るのに!」

 

 平安貴族の格好をした大人が、子供向けの水色ワンピースを着た女の子に怒られるという光景。

 外部から見れば異常な光景であろうが、ここは岡山県。

 完全な平等を実現した理想郷。

 実力さえあれば、性別も年齢も問われない。

 

 赤磐市あかいわし

 岡山県の中南部に位置する市である。

 人口は四万と三三九二人。

 南部に市街地が集中しており、岡山市のベッドタウンとして機能している市である。

 

 そして、赤磐市を束ねるのが史上最年少の市長。

 赤磐あかいわすももである。

 年齢は、実に八歳。

 赤磐李は上空に吹き飛ばした青鬼の姿を確認し、雲に向かって叫ぶ。

 

「おーい!!」

 

 瞬間、雲から無数のブランコが垂れ下がる。

 ブランコは振り子運動を続けており、赤磐李はブランコを足場にぴょんぴょんと飛び移りながら、青鬼の方へと登っていく。

 が、ブランコが足場になるのは青鬼も同じ。

 

「たわけが!!」

 

 垂れ下がってきたブランコの一つに飛び乗り、近づいてくる赤磐李を迎え撃とうとする。

 

「たかが人間の餓鬼一匹!! 俺に勝てると思ってんのか!?」

 

「あはは! 一人じゃないよ?」

 

 赤磐李は青鬼の言葉に大笑いし、パンパンと両手を叩く。

 

「みんな! 出ておいで!」

 

 赤磐李の手拍子に応じて、空中に花が咲く。

 コスモス、ひまわり、菜の花、チューリップ。

 青い空は、一斉に季節の花で埋め尽くされた。

 

 さらに、花と花の間を駆け抜けて、動物たちが姿を現す。

 カピバラ、カンガルー、アルパカ、ブタ、ヤギ、ヒツジ、ロバ、馬、牛。

 その姿はまるで、空中のフォレストパーク。

 ドイツと見紛う、美しい自然公園である。

 

 おかやまフォレストパーク『ドイツの森』。

 広大な敷地に咲く花を愛で、動物たちとの触れ合いもできるテーマパークである。

 料理にはこだわりの地元素材が使われており、岡山県の自然を存分に味わうことができる。

 

「さあ、皆! やっちゃって!」

 

 花の廊下を、動物たちが駆ける。

 青鬼の四方八方から、自慢の角と手足を使って総攻撃。

 

「糞たわけが! うっぜえぞ!!」

 

 青鬼は両手を振り回し、迫ってくる動物たちを退けようとする。

 が、青鬼の腕は二本。

 動物たちは無数。

 二匹同時に振り払ったところで、残りの動物たちの攻撃が直撃する。

 

「こ……の!!」

 

 青鬼は動物たちから逃げるように跳び、動物たちの駆ける花へと飛び移ろうとする。

 動物たちの囲みの中にいれば、四方八方からの攻撃を受けるのが当然だ。

 逆を言えば、囲まれなければ相手が何匹いようと、一対一の形をとることができる。

 青鬼の戦闘本能が、逃亡さえも迎撃の準備へと変えた。

 

「見てろよ! 畜生ども!!」

 

 青鬼が花に着地しようとした瞬間、青鬼の体の側面に強い衝撃が走った。

 無人のブランコが、青鬼にぶつかったのだ。

 

「ぐぼっ……!」

 

「逃がすわけないじゃん」

 

 再び青鬼が宙に放り出されたところで、赤磐李は和気麻琉古に視線を送る。

 

「麻琉古! そろそろ準備できたでしょう? 鯉のぼりで鬼を捕まえて!」

 

「お、おお。承知した」

 

 和気麻琉古は五匹の鯉のぼりを集め、鯉のぼりに鯉のぼりを食べさせる。

 さながらマトリョーシカの様な、五重の鯉のぼりを作り出した。

 単体で破られるなら、多重にする。

 オーソドックスだが、悪くはない対処だ。

 

「ゆけ! 麻呂の鯉のぼりたちよ!」

 

 五重の鯉のぼりは空を泳ぎ、空に放り出された青鬼を飲み込んだ。

 

「ぐ! またっ……!」

 

「さあいくよ! 皆!」

 

 赤磐李の指示で、動物たちが青鬼の元へと再び集まる。

 鯉のぼりの外に出された青鬼の顔を、これでもかというほどに踏みつける。

 

「止めねえか!! 糞どもが!!」

 

「うん、いける! このままいけば、きっと鬼を倒せるよ!」

 

 赤磐李はブランコから青鬼の苦しむ様子を確認し、明るい未来に希望を寄せた。

人口は、令和五年一月一日時点の住民基本台帳人口に基づきます。

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