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現代解釈桃太郎 ~大都会鬼討伐戦記~  作者: はの


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第34話 井原市

「はれまに!」

  

 吉備中央風太が、膝をつく黄鬼の周囲にドームハウスを作り出し、黄鬼を閉じ込める。

 先のドームハウスと違うのは、一か所穴が開いていることだろう。

 井原電次はドームハウスに近づき、穴から子守唄を内部に届ける。

 

「ぐうぅ!?」

 

 音は、反響する。

 子守唄はドームハウスの中で反響し、その威力を何倍にも高める。

 耳を塞ぐ手をすり抜けて、黄鬼の脳に干渉する。

 

「おおお!? 貴様、ら!」

 

 黄鬼は鋭い爪を自身の頭に刺し、脳を貫き、激痛によって睡魔を退ける。

 鬼は、人間よりも高い回復能力を持つ。

 それ故に可能な芸当。

 

 覚醒を以って、黄鬼は次に起きるだろうことを予測する。

 即ち、ドームハウスによる押し潰し。

 

「うおおおおおおお!!」

 

 黄鬼は鋭い爪を筋肉に刺し替え、筋肉を刺激する。

 無理やりにパンプアップを引き起こし、一回り大きくなった体でドームハウスを殴りつけ、風穴を開ける。

 再生を始める穴からすぐさま飛び出して、外へ脱出する。

 

 地面に着地した黄鬼を待っていたのは、井原電次の子守唄。

 そして、天からの飛来物の衝突だった。

 

(くそ! 歌はやまねえし、よくわかんねえもんがぶつかって来るし! いったい何だってんだ!)

 

 黄鬼は現状を怒り、理不尽に対して怒る。

 

(……いや、これは甘えだ! 俺の無能を他のせいにする、甘えだ!)

 

 が、黄鬼の甘えを嫌う性格が、感情をすぐに沈めた。

 そしてはじき出す。

 人外の解決法。

 

「音が脅威なら、全部避けりゃあしまいじゃねえか!」

 

 黄鬼は、走った。

 音速を超える、マッハ2の速度で。

 井原電次の口から発せられる子守唄より速く、走った。

 

 そのまま、吉備中央風太の背後に回る。

 

「速……!?」

 

「おせえよ!」

 

 そして、音速の一撃で殴り飛ばす。

 

 黄鬼の居場所に気づいた井原電次が、すぐさま飛来物を落とす。

 黄鬼目掛けて落ちてくる飛来物は、黄鬼が躱し、つかみ取られた。

 

「なんだあ、これは? ゴミか?」

 

 飛来物の正体は、スペースデプリ。

 即ち、宇宙のゴミ。

 

 岡山県井原市には、美星スペースガードセンターが存在する。

 美星スペースガードセンターでは、スペースデブリや太陽系内の地球近傍小惑星を常に観測している。

 つまり、スペースデプリがどこにあるかを正確に把握している。

 井原電次は、この技術を応用し、スイッチ一つで任意のスペースデプリを任意の場所に落とす技術を発明した。

 それが、空からの飛来物の正体。

 宇宙さえも利用した、大都会テクノロジーの成果である。

 

「ふざけてやがるな! 俺は、たかがゴミに翻弄されてたってことか!」

 

 黄鬼の姿が、再び消える。

 否、消えたと錯覚するほどに速く、井原電次の背後へと回る。

 

「むむう」

 

 井原電次はこれまで、科学によって鬼を翻弄してきた。

 美星スペースガードセンターによる物質の掌握。

 子守唄による音速の掌握。

 

 黄鬼が井原電次の背後を摂ることに成功したということは即ち、現代科学の敗北である。


「終わりだ!」

 

 

 

 

 

 

『緊急回避システム、作動』

 

 

 

 

 

 

 黄鬼の拳が井原電次に触れる刹那、井原電次が消えた。

 黄鬼の拳は大きく空振り、マッハ2の空振りが周囲に強風を巻き起こす。

 

「消え……!? 馬鹿なっ!」

 

 黄鬼にとっては、想定外の事態である。

 音速を超える一撃が躱されたのだから。

 

「見事」

 

 世界には、音より速い物が存在する。

 その一つが、光だ。

 

 光都市、井原市。

 岡山県井原市の美星町びせいちょうは、天文の町。

 日本で最も美しい星空を持つ都市の一つである。

 中でも、日本初の対光害専門条例を制定した都市として有名であり、天文マニアの中では知らぬ者がいない程である。

 どこよりも光の魅力を知り、どこよりも光を守ろうとした都市が、美星町である。

 

 その結果が、大都会テクノロジーを支える、超未来テクノロジー。

 

 再度問う。

 なぜ、岡山県だけが、かつて描いた夢を全て叶えることができたのか。

 大都会テクノロジーは、いかにして実現に至ったのか。

 その核の一つに、岡山県の誇る偉大な市の存在がある。

 

 未来創造都市『井原市』。

 井原市の都市開発の軸には、現在『井原市第七次総合計画』が座している。

 井原市第七次総合計画とは、平成三十年からの十年間のまちづくり計画である。

 教育と文化。

 産業と交流。

 健康と医療と福祉。

 環境と防災と防犯と都市基盤。

 井原市の過去、現在、未来を構成する全てが詰まっている。

 誰もが不可能だと断じた、『全て』の要素を、井原市は計画に取り込んでいる。

 

 井原市は、未来創造のために掲げた計画を達成するため、現代の課題だけでなく未来の理想を叶えるテクノロジーを発展させてきた。

 その過程における、音の掌握と光の掌握。

 そして、宇宙の掌握。

 蓄積された未来創造の技術は、岡山県が誇る大都会テクノロジーの土台としても機能し、岡山県を大都会へ押し上げる一助となったことは言うまでもない。

 

「さあ、未来を作ろう」

 

 井原電次が行うことは、黄鬼がやったことのやりかえし。

 マッハ2の速度で黄鬼が背後を執ったように、光速で井原電次が黄鬼の背後を執る。

 即ち、マッハ88万の速度で。

 

「さっさと鬼を退治して!」

 

 光の蹴りが、炸裂する。

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