天上人の回転寿司と、危険なレクチャー
日曜日の朝。
御影様のお部屋で寛いでいると、彼がふと思い立ったように尋ねてきた。
「なぁ、初音。廻る寿司屋って……行ったことあるか?」
「ええ、何度もありますよ。逆に、廻らないお寿司屋さんの方があまり行ったことがありませんね」
「そうなのか。……金は俺が全部持つから、今度連連れて行ってくれねぇ?」
真面目な顔で頼み込んでくる御影様に、私は思わずくすっと笑ってしまった。
「もしかして行ったことないんですか? 天上人なんですね、御影様は」
その時、廊下からするすると足音がして、襖が静かにすーっと開き、そこから顔を覗かせたのはハザマ様だった。
「御影、私がレクチャーしてやろう」
「いいよ、初音に教えてもらうから」
即座に拒否する御影様にも顔色一つ変えず、ハザマ様は低く静かな声で続けた。
「そうか……。一つだけ教えてやろう。回転寿司のテーブルについたら、端に小さな蛇口がついている。まずはそこで手を洗うんだぞ? 寿司は手で摘むものだからな、ちゃんと手を洗わないとな……」
「……?」
それだけを真顔で告げると、ハザマ様は再びすーっと静かに襖を閉めて去っていった。
取り残された部屋の中で、御影様がどこか不安そうにこちらを振り向く。
「……なぁ、初音。ハザマの言ってること、ほんとか?」
「……御影様。テーブル席についている蛇口で絶対に手を洗ってはいけませんよ? あれはお茶を入れるための熱湯が出るので、大火傷しますからね」
………………………………静かな朝の風景だった……




