28.錨を引き抜く
「さあ、始まりました。今週の『大和エリア』決闘大会、決勝。総勢四百数十名の戦士の頂点に立つのは誰なのか」
「勝者にはギルド新設の権利と、報酬金が与えられます」
宙を舞うスピーカーから、そんな男女の無機質な声が聞こえてくる。
ライカはため息を吐いた。
…さっさと始めて欲しい。
アンカーはそうでもないようで、杖を撫で、その声を聞いていた。
「アンカー様ーっ!」
「頑張ってーッ!」
そんな黄色い歓声が上がる。
…いつも私は応援されないらしい。
「ファイトー!」
「頑張ってください!」
「頑張れー!」
「アンカーなんかぶちのめせーッ!」
振り返ると、ベルカ、ペネロペ、リン、ラックランドが並んで私を応援していた。
少し…嬉しくなった。
そして、胸が暖かくなった。
「始めッ!」
アンカーは初めから魔法を放ってきた。
恐らくライカの攻撃を受ける前に決着をつけるためだろう。
巨大な青白い光線がライカを包み込みかける。
ドンッドンッドンッドンッ!
『弾性魔法防御』と『弾く』がそれを弾いた。
光線は乱反射し、四方八方に散る。
アンカーは驚愕した。
ライカもまた、驚いた。
『弾性魔法防御』と『弾く』だけでアンカーの攻撃を防ぎきれた自分の能力に。
ライカは歩き出した。光線を乱反射させながら。
そして、立ち止まって、指を鳴らす。
ドンッ!
アンカーの攻撃は中断された。
ライカは咄嗟にMPを見る。『弾く』はさておき、『弾性魔法防御』は魔力を消費する。
その消費原理は分からないものの、光線の攻撃は本来、ライカのHPを一瞬で削りきるような威力を持っているため、その防御のためにそれなりにMP消費が激しい可能性がある。
MP130/220
この一瞬で…90…?
ライカは動揺した。ただ、行動は変わらない。
ペネロペの時と同様、スキル『反重力防御』を発動した。
ライカの後ろにいたアンカーは舞い上がる。突然のことにアンカーは驚いた。
…勝った。
ドンッ!ドンッ!ドンッ!
アンカーは攻撃もできず、ただ瞬間移動を繰り返した。
そして、MPが切れた。
…正確に言えば、2人のMPが切れた。
ライカから見れば、突然、アンカーが反重力防御を突破したように見えた。
アンカーから見れば、突然、ライカが浮遊魔法を解いたように見えた。
アンカーは落下しながらも姿勢を立て直す。
次の瞬間移動はできないだろうが、まだ少しのMPは残っている。
ドンッ!
その攻撃はライカが指を鳴らしていないにも関わらず、繰り出された。
アンカーは気づけば観戦席に飛んでいた。




