義父と魔法士
前回は故意だったのですが、今回他の小説を巻き込んで事故で全消しになりました
・・・なのでなろうさんに上げてあるのがすべてです・・・
辺りは騒然としていた。それもそのはずで、王様は白目を向いて口から泡を吹いて倒れているし、護衛は何処から来たのかオースに猿轡を嵌められ縛り上げられている。わらわら集まってきた――当然だけど――近衛兵士たちは氷の分厚い壁によって阻まれてこちらへ来ることもできないようだ。その前でしたり顔をしているのは当然ユスリハである。
どこから来た。は置いておいて。
「王様、死なないよね?」
「死なない、しなない。死ぬわけない。存外しぶといよ、その爺。まぁ、死なせるわけもないんだけどねぇ」
優しいなぁ――とカラカラ笑っているのは魔法士の首根っこを掴んで捨てているおじさんの姿だった。魔法士も気を失っているのだろう。声もなく、地面に倒れこんでいる。
ぱんぱん。と埃を払うようにおじさんは手を叩いていた。
「で、なんで、ここに居るんすか? 打ち合わせではぎりぎりまで来ないはずでは?」
オースの声におじさんは肩を竦めてちらりとユスリハに目を向けた。口を孤にして笑っているが目が笑っていないのは何故だろう。
答える様にユスリハも人のいい笑顔を浮かべる。
「うーん。だってせっかくボクが地図を渡したのに使わないから。計画狂うんだよねぇ。その上、真正面から入るって何? 協力者ってなんだっけとボクは思うんだけど」
は。とユスリハは馬鹿にしたように笑う。
「あの落書きがいつ『地図』になったのかこっちが聞きたいなぁ。つぅか、どうせ強力な魔法でこの爺の許可が無ければ入れなかったんだわ。まぁ、おねーさんを呼ぶことは見え見えだったから無理な労力使う事もないだろうよ。こっちのが簡単てね」
爺は当然王様である。王様のはずなんだけど、二人にはもはや敬意の欠片も無かった。おじさんはゆったりと辺りを見回してからユスリハに目を戻していた。
にっこりと笑顔を深めたのが怖い。少し青筋浮いているような。
「このざまなんだが?」
「アンタさえ来なければ上手くいったろ?」
「ぁあ。そうだね。そうかも。でもこの後の事は知っていたかい? 一体どうするつもりだったのかな? エリアル君をそのままにするつもりだったのかい? 其れだとこの状況は良くならないと、君が知らないはずはないだろう?」
笑顔のまま押し固まるユスリハ。何も言うつもりは無いらしい。オースの冷たい視線がユスリハに突き刺さるが、気にも止めない。
私はくいっとオースの裾を引っ張っていた。
「どう言うこと?」
さぁ。とオースは肩を竦めた。
「俺は知らねぇけど、良いことではないだろ。あれ、だし」
〆ますか? そうおじさんに聞いたオースにおじさんは大丈夫と返した。『後で〆る』と小さく聞こえたのは気のせいではないだろう。
おじさんは髪をかき上げながら私に目を向けた。
「ったく。その爺。君にあの子を止めろ。と言っただろ? それはそのままの意味だよ。あれはこの国が置かれている状況があの子がワザと起こしたものだと思っているのさ。呪って世界に災厄をもたらしたと思っている」
「でも、精霊の話は――」
「うん。この国は精霊信仰は無い。それは王族にとってもね。なのでその資料も存在しない。魔法の国。精霊とは仲が悪いからねぇ。あるのは竜の古びた伝承と資料のみ。その資料では災厄は番によって収まると書いてあるのさ」
「番……」
おじさんは空を仰ぐ。その視線の先には浮遊島が見えた。
「そこからがまぁ酷くてね。どんな手を使ってでも番に止めさせたんだよ――番がボロボロになってもね。それを知っていたかい? 君。いや、愚問かな。知っているはずだよね。王家に文献は無くても、王家より古くて大陸に情報網を持っている魔法院にいたんだもの」
「……」
ユスリハは答えることが無かった。それをじっと見て、諦めたかのように溜息一つ。
「まぁ、結局のところ。精霊士が関わって収めたことがサマールの文献には書かれているんだけれども――さぁ。無駄話はここ迄のようだねぇ」
何かに気付いたようにオースは眉を顰めて辺りを見た。釣られるように視線を動かしてみるが氷の壁の奥で喚いている兵士の姿しか見えなかった。でも微かに。微かにだけれど氷が解けている様に見える。
「ま、魔法院に入る許可が出ないならそれごと持っていくと良い。オース君。出来るね?」
「了解」
言われる前にオースは王様を抱えあげ荷物のように肩に担いでいた。ついでにまだ意識があった護衛の顎を蹴り上げている。
「僕は?」
「君はここでボクと足止め。強いんだろ? なら、実力を示せ」
ざりっとおじさんは地面を踏みしめて前を見据える。何かがそこにあるように。いるように。すっと手を空中に浮かせて水平に移動すれば淡く輝く光の円がいくつも浮かび上がった。そのどれもが細かく幾何学模様と見たこともない文字で構成されている。それはとても美しく不思議な光景であった。
魔法士や魔法使いが使う魔法陣――というものだろうか。
「おじさ……」
刹那――。
轟音と共に辺りが爆風と高熱に包まれていた。




