扉
短いのでもう一話更新しますm(__)m
「走れ!! そのまま真っ直ぐ。次の扉を開いて――そこから『跳べ』」
「でも――」
「大丈夫だ。俺もすぐ」
絶対嘘だ。だってどんな物語も――。だとしても今ここで私に出来ることは何もない。見捨てるわけではないけど、無いけど。
ごめんなさい。
私は消えかけた体力全部使って走りて出していた。このままではきっと死ぬ。止まったら絶対即死だと確信するしかない。
魔法士の戦いなんて初めて見たけどあんなもの歩く兵器だと思う。しかも大変コスパのよろしく、こんなもの国が手離せるはずがないという先輩の説にようやく納得する。
ちらりと振り向けば轟音を立てながら私を追うように足元が溶けて崩れ、轟音を立てながら蛇のような炎が私を捕まえようとしてくる。小さな炎の欠片がな<・>ぜ<・>か私の手前で消えるのだけど……。力尽きたのかな。
とは言えあんなのに飲み込まれたら死ぬって、死ぬ。そして乙女にあるまじき顔で逃げている気がする。
あれ。乙女って何だっけ。
じゃなくて。
辛うじて氷が防いでいてくれるが足を止めたら終わりだ。ちらりとオースがいたところに視線を向ければお互い足場など気にしていない。足場を自身で作りながら攻防戦を繰り広げていた。接近で、あるいは遠近で。私はぐっと口元を結んで喘ぐような息を飲んだ。
空気が足りない。バクバクと早鐘のような心臓が酸素を欲しがっている。
鉛が乗るように重い脚。止まりたい、休みたい。
死にたくない――。
まだ生きたいんだよ。この先を。私はまだ。
次の。扉。扉と呪文のように唱えながら漸く見えてきたノブに大袈裟と思われるかも知れないが縋りつくようにして開けていた。とても重いのは体力が消耗しているからなのか。ぐっと開けて身体を滑り込ませる。
胸が無くて良かった。
……ちがう。
ガチャンと押し込めるようにして閉め、私は大きく息を付いていた。ごっと何かが扉にぶつかる音が衝撃と共に伝わってくるが、扉が壊れると言うことはなかった。
息を飲んでそろりと扉を見る。諦めたのだろうかと思うほど静かだ。
ここは、安全、なのかな。
暗い部屋。入り口近くに埃が被っていたカンテラを見つけてのろのろとノズルを捻った。かちりと音がしてぽうっと淡い明かりが灯る。
何でもない部屋だ。誰かの私室で暫く使われていないのだろう埃が被らないように布が家具に被せられていてた。
「ここは」
特別なものなど何もない。窓からは静かな海が見えている。まるで何事も無かったように。
これからどうすればいいんだろう。『とべ』って。――窓から?
ずるずると引き摺るようにして窓に身体を持っていく。これだけでも一苦労でひどく疲れる。それでも。震える手でカチンと窓の鍵を開けて――幸い嵌め殺しではなかった――私は身を乗り出していた。




