第73話 最後のメッセージ
私が信じた神は、私が何十年も憎み続けてきた神でした。
聞こえないはずの耳に、「休ませてあげます」と聞こえさせた神です。
そしてその神は、人生の最後に、ひとつの願いと使命を私に与えてくださいました。
このノートを通して、あなたに真実を伝えることです。
それは、私に託された、やり遂げなければならない使命だと感じています。
私は、日本の神を裏切ってアメリカの神になびいたのではありません。
唯一の神を信じたのです。
特定の民族の神など、神ではありません。
このことに気づくまで、私は何十年もかかってしまいました。
あの日、砂浜に打ち上げられたハーモニカを拾ってから、私は毎日あの海岸で吹き続けました。
前にあなたにお話ししたように、私はハーモニカを吹きながら、神と向き合っていたのです。
会話というよりも、感謝を捧げていたと言った方がふさわしいかもしれません。
優しかった両親も、愛しい妹も、そしてこの私も――
神によってこの世界に生まれ、命を与えられていたのだと、ようやく理解できました。
両親や妹は、あのような悲惨な最期を迎えました。
それでも私は、それを受け入れることができました。
人の目にはあまりにも残酷に見える出来事であっても、神はどのような方法を通してでも、ご自身を現してくださる――
今の私は、そう信じることができるのです。
私は家族を、真実の神に委ねることができました。
神は愛です。
そして、すべてをご存じです。
そのことを理解した時、私の中から神への問いは消えていきました。
あなたや私が、あの「休ませてあげます」という声を聞いたのも、決して偶然ではありません。
そこには、確かな意味があったのです。
あの時ほど、神を身近に感じたことはありませんでした。
この世界には、確かに神が存在している――
心から、そう思いました。
部屋で休んでいた時のことです。
以前から患っていた心臓に、締めつけられるような激しい痛みが走りました。
その瞬間、私は思ったのです。
この使命を果たすまでは、死ぬわけにはいかないと。
あなたにお伝えしたかったのです。
神は唯一で真実なお方であり、知性と感情と意志を持った存在で、決して宇宙の法則のような無機質なものではないということを。
私が倒れた日、あなたが海岸に来られる気がして、私も向かおうとしていました。
しかし途中で倒れ、動けなくなってしまったのです。
この痛みは、これまでとは違う。
時が来たのだと、私は悟りました。
そして神に祈りました。
どうか、最後の使命を果たさせてください。
それをやり遂げたなら、いつ終わりが来ても構いません――と。
そして、あなたが用意してくださっている故郷へ帰ります、と祈ったのです。
気がつくと、私は病院のベッドにいました。
看護師さんにノートと筆記具を用意していただき、残された力を振り絞って、ペンを走らせました。
今、あなたが読んでいるこのノートです。
書き終えようとしている今、私は心の底から満たされています。
心残りはありません。
私は、安心して本当の故郷へ帰ることができます。
あなたと出会わせてくださった神様に、心から感謝を捧げます。
あなたが問いかけてくださったことで、神が私の内におられることを確かめることができたからです。
まもなく、私はこの人生の幕を閉じるでしょう。
おそらく、もうあなたにお会いすることはありません。
私が神に心を開くまで、長い時間を痛みを持って
潜り抜けなければなりませんでした。
少しでもあなたに愛の神をお伝えする事が出来たなら、この老人の苦悩の時間も役目のひとしずくになれるでしょう。
父も母も、妹も――
それぞれの最期の時に、神は訪れてくださったのだと。
同じ言葉ではなかったとしても、それぞれにふさわしい方法で、神はご自身を現してくださったのだと。
なぜなら、聖書の神は愛だからです。
私には、もう時間がありません。
どうか、最後にもう一度だけお伝えさせてください。
神は、宇宙の法則のようなものではありません。
生きて働いておられるお方です。
知性と感情と意志を持った、愛の神です。
私は、聖書に記されたイエス・キリストの十字架こそが、救いの道であると信じて、この世を去ります。
私からあなたへお伝えしたいことは、これですべてです。
このノートがあなたの手に届くことを願い、これで筆を置きます。
あなたに、神の訪れがありますように。




