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44 正直

ももちゃんを床に置き、カールの頭やほっぺや首、それから背中をゆっくり撫でてあげた。


カールはセラピードッグとして去年まで別の病院で働いていたらしい。


今は引退しているので、甘えん坊になっていると看護師さんが言う。


2人に会えると思ったら、また来たいと思ってしまう。


老人と海岸で話した時もそうだったが、こうして看護師さんと知り合えたことも偶然だとは思えない。


世の中は優しい人ばかりではないが、私は人に恵まれていると思う。


仕事場では怒られるのが苦しかったが、今は信じられないほど優しい人に囲まれている。


まだこれからどうすればいいか何も分からないが、なんかやっていけそうな気がしていた。


気がつくと、7:00になろうとしていた。もう1時間も経っている。


看護師さんの心臓マッサージのことを聞いて、やはり偶然とはいえないことが、この世界で起きているんだと思う。


人生が思い通りにいかないことや、計算通りにいかないことは決して悪いことではない。


神が軌道修正されているのかもしれないからだ。


私の適応障害は単なるストレス以上の理由がある気がしてきた。


看護師さんの表情が好きだ。優しい。

私を見て言った。


「ももとカールはここで晩御飯を食べてゆっくりして帰るから時間は気にしなくてもいいのよ。


私は4:00からの会で軽くみんなで食事済ましているから ...あなたは?どうする?食事...」


「はい、私は帰ってから食べます」


「じゃあ、急がないんだったらゆっくりしていっていいからね...


私は主人がいたんだけれど、2年前に亡くなっています。


娘がふたりいるけど、ふたりとも結婚してそれぞれ家庭を持っています。


だから、今の家族はももとカールだけだから...

帰っても誰も待ってないので時間は気にしなくていいからね。


この部屋は21:00まで使っていいことになっているから」


「ありがとうございます。

じゃもう少し居させてもらいます。

私のこと話してもいいですか?」


「もちろん!

どうぞなんでも話してください。


ここでの話は誰にも何も言わないから安心して話してください。


ももとカールも口は固いから安心していいからね...」


「はい。じゃあ、安心してお話しします。


私は仕事上のストレスで適応障害になって、退職しました。


今はその真っ最中で、摂食障害もあって、食事もあまり取れなくなっています。


「さっき、心臓マッサージの話の時、何かの導きのようなことを言われていましたが、神様はいると思われますか?


私は神様のことあまり考えたことがないのでよく分かりません。


本当にこの世界に神様はいると思われますか?」


「質問、ありがとうね。

正直にお答えします。


私は神様はいると思っています。


でも、特定の神を信じているというのとは少し違います。


仏教徒でもキリスト教徒でもありません。

でも、神様はこの世界にいると思っています。


そしていつか、もっとはっきりさせなければならないと感じています。


私は今58歳で、残りの人生を自分の思うように生きたいと思っています。


そして神とは何なのか?

特定の誰かなのか?

それとも宇宙の法則のようなものなのか?


答えを出せるような生き方をしていきたいと、願っています」


この人は本当に正直な人だと思った。

正直な人はやはり表情にも声にもはっきり現れる。


そのことが聞いていてよくわかる。

自分も正直に話してみよう。


「私は今まで神のことを考えたことはありませんでした。


でも適応障害になり、自分で自分がコントロール出来なくなるという体験をしました。


私にとってとても大きな出来事でした。

自分が自分でなくなる感覚を初めて味わったのです。


分かりやすくいうと不安と恐れ、多分それは自分が壊れてゆくような感覚です。


私の場合、特に恐れを感じている時は、身体が地面にめり込んでいくような、沈み込んでいくような感覚になるのです。


地獄に落ちていって二度と戻れないような、気が遠くなるような恐怖です。


適応障害と診断される前には一度も味わったことはありません。


誰とも共有できないと思います。

分かってもらえる気がしません。


そのような体験からだと思いますが、天国や地獄は本当にあるんだろうか?

神は本当に存在するんだろうか?

とよく考えるようになりました。


今日、看護師さんの心臓マッサージのことや手を引っ張られるような体験をされたという話が私の心に刺さりました。


時間をかけてゆっくり考えてみたいと思っています」


私は自分が思っていることをこんなに正直にストレートに話せていることに驚いていた...


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