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第141話 胸の高揚

その日の夜だった。


看護師さんがカールを散歩に連れて行く。


その間、ももは私たちと一緒に留守番をすることになった。


彼女と私はももといっしょに、屋上に上がって待つことにした。


彼女が聞いてきた。


「ひとりでこの近くに住んでるんだよね。」


私は入院患者のままだと自由に動けない。


外泊許可とかいろいろ。


もともと家族からの暴力から逃れるために看護師さんの計らいでここにいるわけだから。


精神が不安定だという理由でここにいさせてもらっていただけで、体が悪いわけじゃない。


それにこれ以上看護師さんに面倒かけたくないし......」


「看護師さんは面倒なんて思ってないよ。


思うわけないよ」


「分かってる、分かってる」


「私の部屋に泊まるのは全然問題ないよ。

あなたがいっしょだと心強いし」


「ありがとう。


娘さんを見つけるのは簡単にはいかないかもしれない。


腰を落ち着けて、長期戦も覚悟してやろうと思っているの。


でも、あなたと力合わせてやれば絶対見つかると思うの」


「私もそのつもりだから、

娘さん、必ず見つけよう」


彼女が言う。


「食費は半分出します。


お金の貸し借りはしない。


家賃は払わない。


娘さんが見つかればすぐ出て行く。


それでいい」


「それがいい」


「決まりでいいね」


「決まりでいい。


娘さんが見つかって部屋を出て行っても、ずっと友達でいよう」


「もちろん、神の子ども同士、信仰の友になるよ」


*


看護師さんとカールが屋上まで上がってきた。


「やっぱりここだった」


「さっきの話......

娘を探してくれる話だけど、


最初嬉しくて涙が出そうだった。

でも、遠慮すべきだと思ったの。


「えっ!」


彼女も私も熱くなっていたものが、突然冷や水をかけられたようなショックを受けた。


私たち2人を見つめて、笑顔で言った。


「でも、考えた直した......


あなた達2人に甘えたることにする。


神の子どもの力にかけてみたい」


そう思ったの。


彼女は看護師さんを何も言わず抱きしめた。


私は看護師さんに期待されたことが嬉しくて泣き出してしまった。


会社勤めしている時、誰かに期待されたり、頼られたことがなかったことを思い出していた。


カールも尻尾を強く振って嬉しそうだ。


動物は特に飼い主の心の動きは手に取るように感じ取っているようだ。


私は頼られると言う感覚、


力になれるという自分に対する期待感に胸がいっぱいになっていた。


それもひとりではない。


彼女と力を合わせてやれることに新鮮な高揚があった。


何かいいアイデアを下さいと初めて祈った。


祈っている最中にスッと思い浮かんだことは本当に不思議だった。


上手く言えないが、神に触れたような、触れられたような感じだった。


祈りは本当に神様に聞こえている気がしていた。


看護師さんと彼女はまだ抱き合っている。


それを見て、ももが初めて私の胸にジャンプして飛び込んで来た。


ももは、寂しかったんじゃない。


私が寂しそうに見えたようだった。


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