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第140話 アクセルとブレーキ

居場所が分かる?


まだ何もしていないのに……


私は驚いていた。


彼女は私の話を聞きながら、


もう頭の中では次の行動を組み立てている。


戸惑っている看護師さんに向かって言った。


「娘さんの結婚式の写真、


見せてもらえませんか?」


「あっ……」


看護師さんは少し戸惑いながら、


スマホを取り出し、


画像を開いた。


「ちょっと失礼します」


そう言って、


彼女はスマホを受け取る。


何枚も写真を見ていく。


「あった、あった。


これだけあれば十分です」


看護師さんを見上げる。


「この写真の中で、


連絡先が分かる人は何人くらいいますか?」


すぐに続けた。


「私たちが勝手に連絡することはありません。


それは約束します」


そしてもう一枚写真を見つめる。


「娘さんの顔がよく写っている写真、


いただいてもいいですか?」


「いいけど……」


彼女は自分のスマホを取り出し、


娘さんがよく写っている二枚を選んだ。


「この二枚だけで十分です」


看護師さんは小さく頷く。


「うん……


いいよ」


私も看護師さんも、


彼女のスピードについていけなかった。


でも、


一つだけ確かなことがあった。


看護師さんの表情に、


希望が戻っていた。


娘さんに会えるかもしれない。


そんな光が宿っていた。


彼女の勢いは、


看護師さんの迷いまで吹き飛ばしてしまった。


私も圧倒されていた。


彼女は私を見て言う。


「完璧な計画なんていらないの。


やりながら考えればいい」


少し笑って、


続けた。


「一緒にやるのよ。


そうでしょ?」


「うん……」


「私とあなたで、


娘さんを見つけるの。


きっとできる!」


私は思っていた。


彼女は、


私が持っていないものをたくさん持っている。


彼女はアクセル。


私はブレーキ。


そんな気がした。


彼女の行動力は本当にすごい。


でも、


その力は使い方を間違えれば、


危うさにもつながる。


私は、


あの日、


柵を乗り越えようとした彼女の姿を忘れていない。


だからこそ、


私の慎重さも必要なのだと思った。


二人で補い合えばいい。


私はそう思った。


看護師さんは、


私たちの命の恩人だ。


胸の奥から、


熱いものが込み上げてきた。

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