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第139話 祈りの力で

「今、祈ってた?」


「そうみたい……」


「……へぇー……」


彼女が興味深そうに聞いてくる。


「それで、なんて祈ったの?」


「何かいいアイデアをくださいって」


「それだけ?」


「それだけ」


「それで? アイデアは?」


「まだみたい」


「……祈りか……」


少し考えてから、


私は口を開いた。


「でも、祈っている時、ちょっと思いついたことがあるの」


「何?」


私は頭に浮かんだことを、そのまま話した。


「娘さんが住んでいたところへ行ってみるの」


「もう住んでないのに?」


「マンションじゃなくて、その周り」


彼女は黙って聞いている。


「看護師さんに娘さんの写真を借りるの。


それを持って、


マンションの近くで聞いて回る。


ゴミ置き場で会った人とか、


クリーニング屋さんとか、


美容院とか……


娘さんを知っている人がいるかもしれない」


彼女は少し身を乗り出した。


私は続けた。


「どうしても連絡を取りたい人がいるんですって、


正直に話すの。


とにかく手がかりを見つける。


小鳥だって見つかったんだから……」


彼女は小さく頷いた。


その時、


私は何年も前、


引きこもっていた人が、


近所のボランティア活動をきっかけに、


少しずつ外へ出られるようになった話を思い出していた。


そして、


自分の適応障害や摂食障害のことを考えた。


そういえば、


症状が軽くなっている。


いや……


気にならなくなっていた。


頭も少しずつ回るようになってきた気がする。


自分のことではなく、


誰かのために動こうと思う時、


人は少しずつ変わっていくのかもしれない。


ひょっとすると、


人は最初から、


そのように造られているのだろうか。


そんな気がしていた。


     *


カールの尻尾が激しく揺れている。


いつもの小刻みな足踏みも始まった。


私には聞こえない。


でも、


カールには分かるのだ。


看護師さんが戻ってくる。


ドアが開いた。


看護師さんは笑顔だった。


でも、


無理に笑っていることは、


すぐに分かった。


カールも、


それを感じ取っているようだった。


「あの……」


彼女が看護師さんのそばへ歩いて行く。


「私たち、


看護師さんの力になれると思います。


やっと、


その順番が来たんです」


看護師さんは少し困ったような顔で聞き返す。


「どういうこと?」


彼女は微笑んだ。


「娘さんの居場所が分かるかもしれないんです」


「えっ!」


看護師さんと私は、


ほとんど同時に声を上げていた。

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