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第137話 親子の絆

---------------


二日間お休みをいただき、ありがとうございました。


おかげさまで少し体調も戻りました。


今夜から、また心を込めて続きをお届けします。


-----------------




長い夜が過ぎた。


私たちは一緒に涙を流し、


一緒に笑った。


利害関係のない人との時間は、


こんなにも心地いいものなのかと思った。


部屋へ戻り、


それぞれ就寝の支度をする。


ももとカールも同じ部屋で眠る。


私は、


まるで家族になったような気持ちでいた。


みんなが布団に入り、


「おやすみなさい」


と言って静かになった頃、


彼女が口を開いた。


「ひとことだけ言っていいですか?」


「なに?」


看護師さんが優しく答える。


「子どもさんに電話する時、


本音だけを話してくださいね。


悪いと思っていないのに、


『ごめんなさい』って、


絶対に言わないでください」


部屋が静まり返る。


看護師さんは何も言わなかった。


彼女は静かに続ける。


「子どもさんが、


看護師さんに謝る機会を奪ってしまうからです」


それだけ言うと、


小さな声で、


「おやすみなさい」


と言った。


私は天井を見つめながら、


彼女が


「謝りたい人がいる」


と言っていたことを思い出していた。


     *


翌朝、


目を覚ますと、


ももとカール、


そして彼女はまだ眠っていた。


看護師さんの姿はない。


もう勤務に入ったようだった。


テーブルの上には、


病院一階の喫茶店で使える


モーニングセットのチケットが二枚置いてある。


甘えてばかりではいけないと思いながらも、


ありがたく使わせてもらうことにした。


チケットの下には、


小さなメモが添えられていた。


今日の勤務は夕方までです。

それまでゆっくりしていてください。


     *


夕方、


看護師さんが部屋へ戻ってきた。


表情は暗かった。


子どもさんへ電話をしたが、


つながらなかったという。


携帯も自宅も、


「この電話番号は現在使われておりません」


という案内が流れるだけだったらしい。


看護師さんは、


私たちに向かって言った。


「ももとカールをお願いね。


ちょっとマンションまで行ってくる。


心配だから」


そう言うと、


急いで着替えを済ませ、


部屋を出て行った。


夜九時を過ぎた頃、


看護師さんは戻ってきた。


肩を落としていた。


もう別の人が住んでいて、


管理人さんに尋ねても、


行き先は分からなかったそうだ。


引っ越したのは、


半年前だという。


看護師さんは、


畳の上にぺたりと座り込んだ。


誰もすぐには声をかけられなかった。


やがて彼女が口を開く。


「お手紙を書いてみたらどうでしょうか。


引っ越していても、


転居届を出していたら、


一年くらいは新しい住所へ届くはずです」


看護師さんの表情に、


少しだけ光が戻った。


今まで連絡しなかった看護師さん。


でも、


いざ連絡が取れないとなると、


こんなにも心が揺れるのだ。


彼女は、


まるで看護師さんのお姉さんのような眼差しで見つめていた。


その痛みを、


自分のことのように受け止めている。


それが私にも伝わってきた。


私に何ができるだろう。


何でもいい。


力になりたい。

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