第133話 老人の手紙 ⑭
神はすべてをご存じだということが分かったからです。
神がすべてを知っておられるということを理解した時、私の神に対する質問は止みました。
あなたが、あの休ませてあげますという声を聞いたと告げて下さり、何かご存じですかと私に聞いて下さいました。
私はあの時ほど神を身近に感じたことはありませんでした。
私が何か知っているとあなたが思われたことが嬉しかったのです。
神でなければあなたにそのような思いを与えることはできません。
この世界には確かに神が存在している。
そう心から思いました。
*
部屋で休んでいる時のことです。
以前から悪かった心臓に締め付けられるような強烈な痛みが襲ってきました。
その時、私はやるべき最後の使命を果たすまで死ぬわけにはいかないと自分に言い聞かせたのです。
あなたに神は唯一で真実な方であり、知性と感情と意志を持った存在で、決して宇宙の法則のような無機質なものではないことをお知らせしたかったのです。
私が倒れた日、あなたが海岸に来られるだろうと思って、胸を押さえながら私も海岸に行こうとしていたのです。
しかし、道の途中で倒れ込み、動けなくなりました。
私は、この胸の痛みはいつもと違う、時が来たのだと覚悟しました。
そして、神様に祈ったのです。
最後の仕事をさせて下さい。
それをやり切ったらいつ終わりが来ても満足ですと...
あなたが用意して下さっているふるさとに帰って行きますと祈ったのです。
*
気がつくと、病院のベッドに寝かされていました。
看護師さんにノートと筆記用具を用意していただき、最後の力を振り絞ってペンを走らせました。
今書いている、このノートのことです。
このノートを書き終えようとしている今、私は心の底から満足しています。
心置きなく、本当の故郷へ帰ることができます。
あなたにお会いさせてくださった神様に、心から感謝をお捧げします。
あなたが質問してくださったことによって、神様が私の内に住んでいてくださることを、あらためて確かめることができたからです。
あなたにお伝えしたいことは、これですべてです。
私の地上での歩みに、もう思い残すことはありません。
ひとかけらの悔いもありません。
人生の最後に、あなたにお会いし、神様の真実をお話しできたことを、私の大きな喜びとしてここに筆を置きます。
あなたにも、神様の訪れがありますように……
ハーモニカの老人より




