第132話 老人の手紙 ⑬
この人生は、天の故郷に帰っていく旅だと思うのです。
私の場合は、その人生のほとんどを戦争がもたらした混乱によって、安らぎのない時間を彷徨い続けてきました。
神に対する怒りが私を支配していました。
それは原爆を落としたアメリカの神に対するものであり、また神風を吹かせなかった日本の神に対する怒りでもありました。
しかし、私のこの人生のいよいよ終わりの季節に、ほんとうの神が私を訪れてくれたのです。
それはアメリカの神、日本の神といった特定の民族の神ではありません。
すべての人の神でなければ神ではありません。
本当の神とは聖書に書かれている神だと信じます。
休ませてあげますと言われた生きている神です。
そして、その神は私にひとつの願いを与えて下さいました。
それは休ませてあげますという声を聞いたあなたに神の真実をお知らせしておくことです。
神が私に委ねて下さった人生最後の使命だと感じました。
私は日本の神を裏切って、アメリカの神になびいたのではありません。
特定の民族の神など神ではるありません。
このことに気がつくのに何十年もかかってしまいました。
私はこの世界におられる唯一の神を信じたのです。
あの日、あの砂浜に打ち上げられたハーモニカを拾った日から、毎日あの海岸でハーモニカを吹き続けました。
前にあなたにお話ししたように、あの海岸で私はハーモニカを吹きながら、神と会話していたのです。
神との会話というより、感謝を捧げていたと言った方がいいかも知れません。
あの優しかった両親や可愛い妹、そしてこの私自身も神によってこの世界に生まれ、命を与えられていたことを理解したのです。
両親や妹はあのような悲惨な死に方をしましたが、それも受け入れることが出来ました。
真実の神に私の家族を委ねることが出来たのです。
神はすべてをご存じだということが分かったからです。




