表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神威(カムイ)の流転と聖なる詩片  作者: カムイ ピリマ(神はひそかに教える)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

50/50

第25倭 想い交歓し慈悲で直霊せん

其之壱 隠蔽の刃を消さん独白の闇


 『不殺の闘い』を誓うヤチホコ達に、四大王は容赦なく輪を廻らせんと攻撃を放ってくる。

 廣目天ヴィルーパークシャから、己を覆い隠すような暴風が巻き起こり、瞬時に強大な竜巻へと変貌する。

 天界の石畳全てを巻き上げんばかりの勢いで猛り狂う。

 巻き上げた石畳と共に観えざる刃が襲い掛かる!


「キクリおねえさまぁっ! ミヅチの大海アトゥイを受け止めて欲しいですのっ!」


 刃に向かい巨濤おおなみを大瀑布として掲げる。


「任せると良いわ! 全部受け止めて抱っこしちゃう……わ!」


岩塊を巨大な器にして、ミヅチの巨濤おおなみごと減衰してなお襲い掛かろうとする観えざる刃を受け止める。


「う、上手くいったわ……! しかし、毎度毎度全力で氣力トゥムを放出していたら、さすがに持たない……わ!」


「……ヤチホコ殿。雷鳥フミルィ殿を用いて、以前のワラワの姿、廣目天ヴィルーパークシャ殿へ送れませぬか?」


 ヤチホコは即座に雷鳥フミルィへ願い出る。


(……出来ますか雷鳥フミルィ?)


(……想念者マスター、もちろん可能です。お待ちください……準備完了しました。直接手を触れ想い籠めた瞬間流れて伝わります……)


 全てを見抜く眼を持つ相手に「触れねば」ならない。


「……稚拙ですが良き術がございます。ヤチホコ殿は迷わずお進みください!」


 ヒメの言葉でヤチホコは迷わず氣力トゥムを全解放し全力で駆け寄る。

 すぐさま廣目天ヴィルーパークシャは身体中に『眼』を展開してヤチホコを追従する。


「今です! 輝きを放て我が七絃!」


 ヒメより放たれた強烈な虹光が、天界(カンナ=モシリ)を染め上げる。

 あまりの眩さに廣目天ヴィルーパークシャは全ての眼が眩んでしまう。

 眼が眩みやみくもに観えざる刃を放つも、ミヅチとキクリが必死に防ぐ。


「……お受け取り下さい……ヒメさんがあなたに伝えたき想いを……!」


 それは、ヒメが産まれし刻から今までの記憶。

 生後間もなくミケヒコの炎に焼かれ身体を喪い、木彫りの彫像となった日々。

 奇異の眼を向ける行き交う民衆ウタラ達。国を斎護る中での影なる罵倒。

 それでも、懸命に国の為、そして自らを焼き尽くし輪を廻らんとさせたミケヒコを、次代の王として護り育てる苦悩……。血を分けし半身故の愛憎。

 

「……乙女メノコの柔肌……如何程強く望みしか……。

 ですが、この木彫りのワラワですら一個の乙女として接してくれた御方こそが……ヤチホコ殿、我等が統治之神威シュメールカムイでございます……。

 其方など生身であり、神威でありましょう!

 身体ケゥエの眼は己が想いで自在ならば、何を隠す事などありましょう……。 あなた様のその眼は、ワラワ同様『万象を見抜きし眼』。ならば己が素晴らしさもその眼で見抜かんといたして下さいませ!

 ワラワにはあなた様は……この天界(カンナ=モシリ)を護りし、『立派な四大王が一柱』、そうとしか観えませぬ……!」


 ヒメの真寧な想い籠めた言葉に、廣目天ヴィルーパークシャの動きが鈍る。

 静かにヒメは暴風へと歩み寄る。法衣も身体も観えざる刃で引き裂かかれるも、構わず近寄る。

 美しく輝く炎の様な髪が斬り刻まれる。


「ヒメさん!」


 思わず駆け寄るヤチホコを、恭しい微笑みを湛え、掌を翳し静止する。

 尊敬と慈愛、己の本心を胸に廣目天ヴィルーパークシャを抱擁する。

 徐々に、渦巻く風が穏やかに静かに微風へと直霊されてゆく……。



其之弐 想い重なり契り直霊す


「――今でございます。皆の! ヤチホコ殿へ全てを集め皆で詠うのです!」


 集まる権能、重なる想い。それをヤチホコが自神の虚空ニスで束ねてゆく。


「「「「「「「万象見抜きし千里眼に誇りと愛着を! 


想愛開(イレンカ アシ)闢呪(リパ イノミ)』!!」」」」」」」


 それは彼の刻、悲恋の二人を救いし神呪。

 今、廣目天ヴィルーパークシャ自神、そして彼に憑かされし「虚栄之虚飾(ニグ=ガラーム=マ)」の八大罪障、イナ・グロリアを救う為に放つ。


 彼女の真名は……『謙虚乙女ヴィナーヤー』。

 生前、とても聡明で高潔な乙女であった。

 ただ……生後間もない刻、親の不注意から煮え湯をこぼされ、顔の半分が爛れてしまっていた。

 九死に一生を得た彼女は、勉学に励む。片方だけ遺された目を酷使して。

 しかし、周囲は冷たく、両親にも見限られるも、めげずに彼女は励む。

 いつしか、神智都タクシャシラーの大学へ入る事が叶い、喜び勇んで向かう途中……「自分の娘の見た目の醜悪さ」を、智の極みである神智都タクシャシラー民衆ウタラに知られる事を恥じた両親に輪を廻らされてしまう……。


「……さぁ、この衣装を纏えば……キミの一番観られたくない処も、すべて覆い隠させるさ。所詮この世の『駒』如きに、『真理』など解るはずもないって訳だよ! だったら……僕と一緒に苦しみを与える側に回れば良いのさ! ヒャハハハ!」


 彼女は……いつになく憂いを籠め、憤りすら観じさせる道化師ジェスターの、独善なる慈悲とも言える誘惑(ピリマ)を拒まなかった。

 己より愚かでありながら、下らぬ見栄に捉われている者達を、見つけ次第輪を廻らせてきた。


「くだらないわ。自分の中身の無さを恨むのね……ふふ、うふふふ、あっはははっ!!」


 そんな彼女に下された最後の指令。それがこの神威との『御陰之目合みとのまぐわい』による融合であった……。


「……万象を見抜けるのに……姿形が気にくわぬ自信を持てず覆い隠さんとするなんて……。良いわ。私はあなたと一つになる……そして能がないくせに下らぬ見栄に塗れた存在を悉く輪を廻らせてあげるわ……!」


 より強く想いを重ねる為に必要な儀式。執り行う事によって二柱の権能は並の魔王さえ凌駕する程であった……だが、今……同様の境遇にありながら、負けずに真っすぐ歩んできた魂が、自分達を認め、労い、想い籠め抱擁している……。

 しかも彼女は清廉潔白などではない。

 今、完全に打ち開かれしヒメの心、そのすべてが流れ込んでくる。


(……何? とんでもない闇を抱えているわね貴女……それで世界を救うって? そう……そうか、そうよね……誰しもが内に秘める昏き闇……あなたはそれすら抱き締めてくれているのね……そしてそれを可能にしてくれたのが……)


(……左様でございます……我らが不器用ながらも泥臭く直向きな敬愛すべき統治之神威シュメールカムイ、ヤチホコ殿でございます……。 彼ならば……全ての闇を抱えし存在を……認め、抱き締め、救って下さります! お二方、お目覚め下され! 己が『素晴らしき聡明さと慧眼』を認め、真なる自分へと……『己が想い』で詠い直霊するのです!)


 ヒメの祈りにも似た想い……それは七絃の輝きとなり、ヤチホコによって緋緋色金ヒヒイロカネへとさらに磨かれ直霊されてゆく……。


「左様であったか……我はとんだ下らぬ事への拘りを……内なる娘、其方もであるな? 我等の素晴らしさ……姿形などの些末な事に阻まれるものなどでは無い!」


 観る間に、廣目天ヴィルーパークシャより輝く純白の旋風が吹き上がる。

 それは、万象の真理を見抜く廣目天ヴィルーパークシャの放つ、すべてを想いの通りの姿へと導き直霊す『清浄之大凬』。

 その浄化の旋風が、想愛開闢呪の神力を受け、自神と共にイナ・グロリアも浄化してゆく……!


 「ここです! 翻し直霊し給え!」


 ヤチホコの想い籠めた掛け声と、刮目した廣目天ヴィルーパークシャの神威で、虚栄之虚飾(ニグ=ガラーム=マ)謙虚ヴィナーヤーへ翻ってゆく。


「……こ、これは? 私……! 戻れ……た……?」

 

 満面の笑みで迎えるは廣目天。


「元の姿に直霊されて何よりである。先の契りの儀……その責を取らせてはくれまいか? うら若き美しき乙女よ」


 イナ・グロリア……いや、謙虚乙女ヴィナーヤーは、片目で苦笑して応える。


「気高く尊き神威さまが何を……。私は産まれて間もなく顔を焼かれ……」


「些末な事である。そなたの持ち得しラマトゥの輝き、直向きに精進叶う想いの強さ、智慧の優れたる事に比ぶれば……実に些末な事なり……!」


 そう言うと廣目天ヴィルーパークシャはしっかりと謙虚乙女ヴィナーヤー抱擁する。


「え? な!? あ、ちょっとお待ち下さ……!」


 廣目天は、想いを伝える様に口伝に神威の息吹を吹き込む。

 戸惑うも謙虚乙女も……静かに受け入れる。

 全身を翔け廻る神威の浄化の大凬レラ

 それが今、想愛開闢呪の権能により、相手を想い分かり合い分かち合う。


「『眼』など……肌など……いくらでも交換せん。受け取られよ!」


 廣目天は、想いを籠めて迸る神呪の権能へ願い奉る。

 すると、彼の神体に数多ある眼の一つが彼女に宿り輝きを放ち始める。

 そして焼け爛れていた顔の肌は彼の肩の肌と入れ替わっていく……。


「……! えぇ? なんで!? 両の眼が……観えるわ! か、顔も……やけどが無い!!」


「……これでラマトゥの姿、正しく顕れしなり。改めて願いしなり。我と共に……永久に歩んではくれまいか?」


 溢れる想いを顕す、両の眼より流れ落ちる涙。

 

「――喜んで! 私もあなた様のような、聡明で美しい神威さまに見初められるなんて……光栄の極みですわ!」


 一瞬戸惑うも、力強い笑みを浮かべて応える。


「左様、であるな……。肝要は、想いの清き事なり! 故、我、廣目天、其方のに寄り添いす事に於いて、恥ずべき事無からん想念イレンカにて、歩み征き精進せんと誓おう! 新たなる統治之神威シュメールカムイ、そしてその『いも』……であるか? 有難き! さすれば一つ願いあり。今なお苦しみの中に沈みし同胞も救い給えと願わん! 何卒願い聞き届け給え……!」


 廣目天はヤチホコに対し、片膝をついて深々と長揖し願う。

 真寧な他者を慮る想念イレンカ

 想いに応えるかの如く、遥かな虚空から、柔らかくも力強き陽光(トカㇷ゚チュㇷ゚)が一筋差し込んでくる。

 それは、まさに救いの掌の顕れとも言える様な荘厳なる輝き。

 光が指し示す先……そこにいるは、未だ苦しみの闇の深淵にいる四大王の二柱。

 ヤチホコは、穏やかに、しかし断固たる決意を秘めた眼差しで彼等を見つめ、真寧な祈りを捧げ続けている廣目天へと向き直る。


「お顔を上げて下さい……。お約束します! 必ずや遺る彼等も本来の正しき四大王へと詠い直霊せんと! 征きましょうみんな!」


 ヤチホコは斬り裂かれたヒメの髪に手を伸ばす。それは彼女の魂の誇りの輝き。

 ヒメを感謝の想いで認めて微笑みかけ、ヤチホコは、己の放った言葉を魂に刻む様に、想いを更に強めてゆく。

 呼応して、真輝銀シキンナカネの髪が自然に光を放つ程に輝きを増してゆく……。

 それは、彼が纏いし氣力と共に究極の朱金まで高まる。

 

(――絶対に救ってみせます!)


 瞬間、星の誕生の如く、この四大王天さえも覆い尽くさんばかりに爆発的に氣力が放出される。

 噴き上がる中、見る間に煌きを増して研ぎ澄まされていき、究極の緋緋色金ヒヒイロカネの輝く火柱となって迸る。

 それは、透き通る紺碧の空差でさえ貸す程の天空に舞う、天超飛翔神(カンナ=カム)威之城(イ・チャシ)にでさえ届く力強さ。

 ヤチホコは、振り返り慈しみを籠めて微笑みを湛え廣目天達を見つめ、すぐさま向き直り、今なお苦しみの深淵にいる増長天(ヴィ=ルーダ=カ)の下へと駆け寄ってゆく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ