3 夏の虫
討伐対象になっているとマリエールは言う。積もり積もった害悪が討伐という形になった。罪を償えとマリエールのご宣託だ。
3 夏の虫
元婚約者の呆れた発言に、マリエールは、
「言っておきますが、あなた方は討伐対象ですよ。私が討伐の指令を出せばあなた方は討伐されますよ。国も何もかもを敵に回したあなた方に何ができるのですか。ただ自滅の道を歩むかいっそのことここで討伐されますか。飛んで火に入る夏の虫ですね。好きな方を選んで下さい。どちらにしてもあなた方の未来はありません。今日死ぬよりも幾らはましでしょう。領民のためを思うなら今日死んだ方がましと思いますが。」
辛辣なマリエール言葉がそれが事実である事を如実に証明している。元婚約者の母親は、
「あなたを婚約破棄したのは悪かったと思います。しかし何故私達が討伐対象なのですか。わけが判りませんよ。必死に領民のために頑張ってきたのに、何が悪いというのでしょうか。やはりあなたを婚約破棄したのが罪なのですか。」
如何にも領主夫人という感じの威厳たっぷりの体格の夫人のものいいは人怯ますのに十分だ。
「直接的には元婚約者のしつこい求婚が原因ですが、原因は他にもあります。例えばワインを鉛コップで飲む問題です。不味いワインを鉛コップについで苦味や酸っぱさを和らげる鉛コップを流行させたのはあなた方の領ですね。鉛コップには毒性があります。そんな事も知らず廃人になったワイン愛好家が幾人もいます。鉛コップも不味いワインもあなた方の領で作られた物です。償いはされるべきでしょう。」
元婚約者の父親の領主が、
「鉛コップの毒性は我々は知らなかった事だ。知らないで犯した過ちで討伐うんぬん言われるのは納得できん。もしマリエール令嬢が我々の立場なら納得するのか。」
マリエールはちょっと困った顔をして、
「鉛コップは氷山の一画です。積もり積もった害悪が一気に吹き出して討伐という結果になっただけです。全ての罪を認めて罪を償いうべきです。」
諦め切れないという顔で三人はマリエールを見た。元婚約者は、
「仮にもお前は次期領主の婚約者だった女、同罪だろう。」
マリエールの父親のこの領の領主が、
「口が過ぎるぞ。即刻討伐の指令を出すぞ。」
元婚約者の父親が、
「お待ち下さい。マリエール令嬢に一切関わりのない事は明らかです。我々だけの罪です。お前も謝りなさい。」
元婚約者は、父親に言われて
「申しわけありませんでした。カッとしたばかりに心にもない事を申しました。」
マリエールの父親の領主は、
「この場で殺されるか、領に帰って罪を償うかの二択だな。」
既にマリエールの婚約継続の選択肢はない。元婚約者の父親は、
「領に帰って罪を償います。」
翌日、元婚約者等は帰途についた。元婚約者は、
「腹わたが煮えくり返る思いですよ。領に帰って領軍を集めてこの領に攻め込んでマリエールを奪い返しましょう。」
この子にしてこの父親ありというところか。
「それはいい案だ。このままではジリ貧だ。その手しかない。」
その頃マリエールは、
「このままだと隣の領が攻めてきますよ。領境に防衛の兵が必要です。」
状況は一気に緊迫した。
元婚約者はマリエールも次期領主の婚約者だった女だ。同罪だと言った。マリエールの父親は口過ぎるぞ。即刻討伐するぞと言う。




