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服がないだけで牢屋はつらいよ

「やだぁぁぁ!」


私は全力で街へ向かって走る。

おっそいっ!なんだこれ?

4本脚で走れないってこんな遅いの?

このままじゃ、捕まる。


「待てぇぇぇ!!」


「もうちょっと!いや~この遅さヤバイ!

だけどあの門まで行けば何とか……!」


城門がだんだんと大きくなる。


「助かったぁ!」


追手たちは城門を目前にすると、ぴたりと足を止めた。

「くそっ、城門内までは追えない!」

そう吐き捨て、来た道を引き返していく。

しかし、先頭を走っていた少女だけは、そのまま門を通過しようとするが

「とまれーー!!勝手に通……………………

……お、お、お前ぇぇぇぇぇ!!」

頭から足先まで視線を動かした後、門番の顔が真っ赤になる。


「なんて破廉恥な格好だ!!!」

「え?」

「服を着ろぉぉぉ!!」

「服??いつもと一緒だよ?」

「言い訳するな!」

「違う違う!本当にいつもと一緒なの!!」

「裸で街に入れるわけないだろうが!!」

「え?ダメなの?」

「当たり前だ!!」

「犬の時は大丈夫だったのに?毛があるかないかで違うの?」


門番は槍を持つ手を震わせた。

「……おまえ、頭がおかしいやつか!?」

「違う、まとも!」

「もっとダメだろうーー!公然わいせつ及び城門騒乱罪で拘束する!」

「えぇぇぇぇ!?」

「奴隷じゃなくて、そっちで捕まるの!?」


数十分後――ガチャン

「なんでぇぇぇ……」


私は牢屋を見渡すと、ため息をつきながら、愚痴をこぼす。


「人間って服一枚ないだけで牢屋なの?

めんどくさすぎる。はぁ……でもまぁ、屋根は有るし、いっか。

んーーーお腹すいたなぁ、ミルク飲みたいよぉ」


(はやくご飯出てこないかなぁ)

淡い期待をしつつ部屋の片隅で、丸まって眠りにつく。


その頃、牢番は業務日誌を書いていた。


業務日誌 〇月〇日

全裸で城門へ突撃した謎の少女、1名を保護。

全裸(下着の着用も無し)、所持金、身分証なし。

街の公序良俗を保つため服を一枚貸し出し。

鑑定タグを装着。一晩様子を見る。

明日、鑑定者立ち会いのもと尋問予定。



ギィィ……牢の扉が開いた。


「おい、これを着ろ」

「ご飯!」

「違う!服だ」


私は服を持ち上げ、匂いを嗅ぐ。

一応服は知っているが、


「これ、食べられないよ!?」

「食べられん」

「ミルク入ってる?」

「入ってない」

「じゃあいらない」


ポイッ。

看守が額を抑え、困り顔をしているが、知りません。

別に服無くても生きていけるし。


「着ろ」

「お腹すいた」

「着ろ」

「ご飯……」

「まず服だ」

「お腹すいた……服より……ご飯だよぉ……変だよ」


ぐぅぅぅぅ……

サリーは手渡された服を見つめた。


「ううぅ、これ着たら……ご飯出る?」

「……出る」

その返事を聞いた途端、服を抱きしめた。

さっきまで食べ物ではないと見向きもしなかった布切れが、

今では空腹を満たすための大切な物。


「最初からそう言ってよぉぉぉ!」


安堵したせいか、目の奥が少し熱くなった。

鼻をすすりながら、慣れない服に手を通していく。

看守は、そんな彼女を呆れたように眺めていた。


「……お前、本当に変なやつだな」

「人間って……服のほうがご飯より大事なんだねぇ。めんどい生き物だよぉぉ」


納得はしてないが、ご飯のためだ!我慢!


翌朝――カチャリ。

再び、牢屋の鍵が開いた。


「出ろ」

「ねぇ!ご飯は?」

「昨日、服を着たらご飯を出すって言ったよね?」

「言ったとも」

「ただし、今すぐ出すとは言っていない」

「屁理屈ぅぅぅぅ!!」

「それ、出すって言ったことにならないでしょーが!!」

「出すとは言った」

「そういうところだよ、人間はぁぁぁぁ!!」


私の怒声は、牢屋中に響き渡った。


「ミルクもない! ご飯もない!服だけ着せて、あとは放置!?

なにこれ、待遇の説明と違いすぎるんだけど!?」


「待遇の説明などしていない」

「ブラックじゃんかよぉぉぉ!!もう帰る!!」


私は右手を突き出す。


「第三封印――解除!」


シーン


「第三封印――解除!」


シーン


「あれ?」


目の前に、半透明の文字が浮かび上がる。


《ERROR》

《魔力不足》

《第三封印は現在使用できません》


「え?」一瞬固まるが、


「じゃあ……出力を落とせば……第一封印解除」


《ERROR》

《魔力不足》

《第一封印は現在使用できません》


血の気が引き、指を折って数え始める。


「第一解除……三十階で一回

第一解除……十五階で一回

第三解除……魔王戦で一回

そして、管理人との鬼ごっこ

これは……短期間で使いすぎ?!」


うがぁーー


「魔力空っぽじゃん!

しばらく回復しないやつじゃん!

やっちまったぁぁぁぁ!」


私の悲鳴は、牢屋に響き渡ったが、看守は呆れたように、


「おまえさん、さっきまで威勢が良かったのにな」

「ご飯を食べれば回復するもん」

「その前に、働かないとご飯は食べれん」

「やだぁぁ!結局そこぉ!?働いても契約違反は人間がするじゃん!」


元・最強犬、サリー。

所持金――ゼロ。

満腹度――ゼロ。

魔力――枯渇。

食欲――MAX


「ミルク飲みたいよぉぉお」

その一言だけが、虚しく牢屋に響いた。


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