ここでキレたのは、ギルド長
ギルド内は、無言であったが、誰も何も納得などしていないことは、
床を乱暴に蹴る音や、大きな移動音、物が当たる音などで確実に伝わっていた。
Sランカーチームや、Aランカーたちは、
ギルド内で上位ランカー特権としてそれぞれのタブレットでボードの記録や、持ち帰られた映像関連資料を長い間見つめたままだった。
やがて、ゼルクが口を開いた。
「女の子だから、子供だからと舐めて、
はなっから何も聞かず信じなかった俺たちが悪かったよな」
「それは……否定出来ないが今回のはちょっと」
「深淵で、見た目と強さは関係ない。知識もそうだっただろ?
花でさえ喋り……散々思い知らされたはずだったのに」
「うん、花が道案内始めた時は、常識とは?って意味調べる程だったのにな」
「あぁ、フリフリドレスのフリフリ日傘の女の子に、手も足も出ないで悔しかったよな」
「『おまえら綿あめのようにすぐ溶ける』と、笑われて」
さっき知った事だが、あの女の子は冒険者登録時に1度騒ぎをおこしていた。
最初から知っていたら、もっと疑った、いや、クソ……言い訳だ。
俺らはなんで見過ごした。
せめてグレン・ハルヴァードが、あの場を立ち去るまで居れば……
そして考えれば考えるほど、あの女の子の言動は異質だったのに。
Aランカーが本気で止めに入ってる怒号を間近で聞いて、普通だった。
萎縮もせず、普通に反論までしていた。
あんな小さい子が相手に反論させない言葉を言っていたのに
バカか本当に俺は……ゼルクは後悔してもしても悔しきれなさが、溢れる。
魔髄が手に入れば、自分達はもっと深淵に潜れる、だから焦ってはいた。
誰よりも早く多くの魔髄が欲しかった。
だが謎のボードには、グレンと言う名前が並び続けた。
アレクはアレクで、自分が言った言葉すら忘れ、
「あいつはなんで教えてくれなかったんだよ?」
「またそれかよ」
「いや、だっておかしいだろ!俺たちが知らない方法で、いきなり25本の魔髄取るなんて!」
「そりゃーでも教えないのも当たり前じゃね?」
「なんでだよ!和ってもんあるだろよ!」
「いや、でも多分あなたやらなかったわよね?」
「そこは、きちんと説明されてたらやった」
「それは無理だろ、お前はやらないよ」
「決めつけんなよ!」
「お前の性格を俺たちが知らないとでも?
ハルヴァードにいつも突っかかるお前が?この壁を殴ると好きな階に行けますの一言でやるか?」
「そうよ!情報聞きたくて見つけたハルヴァードさんに開口一番『生きてたんですか?』って言う貴方が?」
「関係ねぇ、話するなよ!納得いかねぇんだよ!」
「誰も納得なんかしてねーよ」
「じゃーなんで、独り占めなんかしてるんだよ!」
「知らねーよ!冒険者だからだろ!」
「取りすぎだって言ってんだよ!」
2つの上級チームが声を出す事で、
あちらこちらから声が飛び交う状況に移行した。
「そもそもショートカットって何なんだろうな?」
「俺は、話なら聞いた事あるぞ、短く切るんだろ?」
「嘘つけよ、お前だって笑ってたし知らねんだろ?」
「なぁなぁすっげーお宝持ち帰って来るのかな?」
「知らねぇーでも魔髄何本よ?」
「ボード見ると、23本か?」
「25本だろ?俺たちも知りてぇ、ギルドからは未だに発表とかないよな。ギルドも全く知らなかったのかな?」
「ギルドが隠してたら、贔屓だろ!」
「ありえるよな?だってそんな情報なんで知ってるんだよ」
納得しているようで、していない、
反省しているようで、しておらず、文句は言いたい。
何故教えてくれなかったのか、独り占めはズルい、その気持ちに見ないふりをするループ
ギルド内は再びぐちゃぐちゃになっていく。
その少し離れた場所で、メリッサも自分の思考を持て余していた。
(やっぱり……あの子、関係してたんだ。
なんで私はあの時あそこを離れたんだろ、
あのまま残っていたら、私が発見者で違う発見をギルドに持ち帰れていたかもなのに。
研究者が言っていた、『この子はこの文字が、読めてるのか?』
……そうよ、私あの子が変だって知っていたのに!
あの子が書いた文字は、あまりにもお手本の様に綺麗だったから、『綺麗な字ですね』って言ったのよ!
でも、綺麗なのはたまたまじゃない、
字は勝手に綺麗にはならない。
当然、練習しなければ書けない。
あの歳であそこまで綺麗に、もっと、あの時疑えば良かった。
人型と表示される前に違和感はあった、人型ばかりに気を取られ、敵だと決めつけて、勝手に全部決めつけて、なんて愚かなんだろう。
でも、グレンさんは違った。
『サリーの邪魔しないで』たった数日前に出会った子を信じてた。
私とグレンさんの何が違うの?!小さいからってバカにしなかったのなぜ?……あれほど綺麗な字を書いたのを見ても信じなかった私と何が……)
混乱が収まらない中、ギルド受付に居たギルド長の通信機に、
『ギルド長、グレンと連絡がつきました』との文字が流れ
「副ギルド長、よくやった。
グレン・ハルヴァードはいつ来ると?あいつの様子は?何か言っていたか?」
「あの……ギルド長、その……グレンは、ご飯を『ご飯?』あの……その……ご飯を食べたらギルドへ来るそうです」
ボキッ。
ギルド長の手の中で、ボールペンが折れた。
「ギルド長?なんか変な音が、」
「ふざけるなよ……クソAランカーがぁぁぁ!!お前を中心に世界は回ってるんじゃねーんだよ!」
普段なら冷静沈着で知られてるギルド長の怒声が響き渡った。




