最後に不穏な事言われました!怖いです
「起きろ!ネメシス!あれが敵だ!」
ゴォォォォォン
ゴォォォォォン
ゴォォォォォン
低く重い音と共に巨大なパイプオルガンの音色が空気を震わせる。
グレンの斜め前に白い光が降り注ぎ、その中からネメシスがゆっくりと姿を現した。
長い黒髪を揺らし、静かに天秤を前へ差し出
す。
『私は、報いを司る女神』
その声と同時に、古代竜が咆哮を上げ、巨大な爪をグレンへ叩きつけた。
剣で受け止めるが、間髪入れず尾が襲いかかる
「ぐっ!」
立ち上がった瞬間、再び迫る爪をかわし、懐へ踏み込んで剣を振り抜く。
だが古代竜は怯まず、グレンを吹き飛ばす。
その向こうで、ネメシスの天秤が大きく傾いた。
「くっそ……痛ぇ……ネメシス、俺の痛みを敵に返せ!」
『我が契約者が受けた攻撃、痛み、怒りをすべて量り、本人へ
まぁ、トカゲごときで理解できないでしょうがね』
優雅に口元を隠していた扇子が、パチンと閉じ
古代竜へ向かい扇子を軽く一振り後、
魔髄が転がり出た。
「え?はへ?」
グレンが呆然と立ち尽くしていると、
耳元で、『後でお茶ですよ? ふふふ』
ゾクリとし、振り返るが、誰もいない。
あっ、ごめんなさい。
そういうの無しで、俺、耳は弱いんです。
「魔髄~グレン、この魔髄飲んでもいい?」
「お、おう、いいけど、お前ってネメシス見ても驚かないの?しかもその魔髄強かったヤツ……慣れない……お前のミルク感覚」
ゴクゴクッ、ぷはぁ!
自分の手をニギニギしながら、
「やったぁああ!久しぶりの15レベル!
これで、第1ぐらいまでは使えるかなぁー
深淵行って倒したら溜まるはず〜」
「お前、さっきまで魔力足りないって落ち込んでなかったか?」
「落ち込んではいないよ?」
「そっか?」
【クリアーおめでとう。散々クソクソ言ってたけど、クリアーはクリアーだよ】
「あっ、よわよわコア君」
【文句言うならもう来なくていいし!
最後に、君、人間の事わかってないよね?
だから、君こそクソだよ!
そこの人間そんな風にしてさ!
クソサリーバイバイ、2度と来るな!】
「はっ?おい、急に何言ってるんだ?!」
いくら待ってもダンジョンからの返答は無い。
そのうち何となくグレンは、
「サリー、あなたは色々な方面で問題児ですか?」
「グレン、私は、いい子だよ?」
「ダンジョン怒らせて拗ねさせて、来るなって言われてるが?」
―ピンポンパンポン―
『ダンジョンボーナスは只今をもちまして、全て終了とさせていただきます。
沢山のご参加ありがとうございました。当ダンジョンは明日朝9時より再稼働させていただきます。
また明日以降は通常運転となります。あらかじめご了承ください』
―パンポンピンポン―
「ダンジョンアナウンス2回目。サリー俺の知ってるダンジョンが壊れていく」
「グレン、色々あるんだよ。でも強くなったからね!」
「あぁ、うん。でもなんかダンジョンが俺の事言ってたよな?大丈夫か?」
「大丈夫だよ、まだまだだよ。こんなクソ雑魚しか出さないダンジョンの言う事なんて当てにならないから」
【ミシッ】
空気が鳴り、グレンはダンジョンの怒りを感じたが、ニコニコしているサリーを見ると何も言えず、
そのままアナウンスが2度繰り返されるのを聞いていると、足元に転移紋が現れ、
次に感じたのは頬に当たる風、そして目の前に広がる数多の人々の姿だった。
「どういう事だ!?」「なに?また何があったの?」
「宝箱ーーせっかく開けたのに!」
「おい!入れろよ!」
「誰かグレン・ハルヴァードを知らないか!」
「てぇめー足踏むんじゃねーよ」
「ダンジョンに戻せーー」
グレンは喧騒の中で自分の名前が聞こえた瞬間、
咄嗟にサリーを抱え上げ、気配遮断を使うと、素早くその場を離れた。
(あの場にいたら絶対、絶対監禁コースだろ!
どうする?家に帰るか?ホテルか?いや、街を出るか?)
「グレン、どうしたの?」
「まだ喋るな。気配遮断をかけなおす」
街の一角にある大きい公園の噴水まで来た時、グレンはようやく足を止めた。
「いいぞ、喋って」
「グレン、怖い顔してるよ」
「そうか?いやー、どうしようかなと。これ、相当な騒ぎになるだろ?」
「なんで?ダンジョン、明日から平常だよ?」
「いや、そっちじゃない。俺らだよ」
「私達、なんも変わってないよ?」
「いや、変わったとか変わって無いとか……」
「だってレベルアップなんて普通でしょ?」
「普通か?……いや、なんか違うような?」
「普通だよね?グレンだってレベルアップしてきたでしょ?」
「してきた。普通なのか……」
(何となく腑に落ちないが、確かにレベルアップは普通にしてきたし、気にし過ぎだったのか?)
「グレン、ミルク飲みたい。だめ?」
「そうだな……俺は風呂に入りたい」
「……」
「サリーお前もだぞ」
「また濡れるの……ぢぐじょう」




