初めての邂逅
「サリー、これ、飲んで本当に死なない?」
「死なない」
「暴走は?」
「しない」
「なんでだ?」
「一撃で倒したボスのだから」
「一撃って大事なんだ」
「うん。目安だから」
「目安?」
「そう、だから最後に出たのは最初に飲んじゃだめだよ?
それは5撃のやつ。もしかしたら膜の一部が破れるかも?
でも痛いだけだし?死ぬことはない……よぉ……」
サリーはそう言うと、
そぉーっと最後の魔髄を真ん中に混ぜニマニマしてる。
「えっ?サリーさん、今それ、真ん中に動かしたよね?」
「えへへへ、ちょっとした遊びだよ、グレン」
ゴン!
「痛い!」
「人の生死で遊ぶな! バカもんが!」
「えー、痛いだけで死なないよ?」
「そういう問題じゃねぇ!はぁぁ……」
「本当に死なない?」
「私、そんな駄犬じゃないよ!」
「また、そうやってわけのわからんことを……」
(でもなぁ、銀髪の子になったときもそんなこと言ってたな
『私は主人を悲しませる駄犬じゃない!』って
飼い犬ごっこが流行りなのか?
はぁ、考えてもわからないし、痛いだけで死なない。
サリーが言うならそうなんだろうな)
グレンは、悩みに悩んだ末、覚悟を決めた。
真ん中の魔髄を避け、順番に飲み続け――
熱い。焼ける。熱い。
痛熱い、内側から無理やり外へ出ようとしているような
ピキーーーーーーーン
脳へ痛みがダイレクトに走り、引き裂かれるような痛みが更に追従して走る。
「痛い、痛い痛い……っ!」
かっこ悪い所は見せたく……いってぇんだよ!!!
「ぐっ……あ、あああああっ!」
痛すぎて漏れる声
痛い。痛い。痛い。
なんで?た、た、助けて
どこを?身体?なにを?腹?頭?
「待て、これ……む、り」
弱音が出るが、サリーの真剣な目に
なんで?
俺が何をした?痛い痛い
どうして俺だけが痛いんだよ!
なんで俺がこんな目に……
なんで?もうやめたい!嫌だ、帰りたい。
痛い。
熱い。痛い。
苦しい。
「グレン」つぶやく声が聞こえ、紫の目が俺を見つめ続けている。
「……た、す、ッ……」
次の瞬間、グレンの身体が大きく跳ねた。
サリーの手前、あまりに格好悪い自分を見せたくない。
そんな気持ちが、残っていた。
見苦しい自分を、見せたくない――
――痛い、いた……あれ?痛くない?ん?
真っ白な空間?え?ここなに?
ここはどこ?……俺……死んだ?!
サリー?俺死んじゃった?!
「あら、珍しい方ですね。こんにちは」
「……あっ、こんにちは?」
目の前に、見知らぬ美人の女性がいた。
「ふふふ。あらあら、魔力の器を伸ばしてるの?
ふふ、サリーちゃんの前だから、格好よくいたいの?」
「……」
「素敵ね。それでこそ男の子」
女性は楽しそうに笑う。
「そうねーもう一度ここに来れたら――」
何かを言いかけた女性の声が、遠ざかっていく。
「グレン!」
「いでぇぇぇぇぇぇ、痛い!痛いです!」
「んーーー?吸う?」
「吸わねぇーよ!!!毎回アホなこと、いで!痛ててて、
あぁ、痛いけど喋れる、ハァ……終わったのか」
まだ痛いが、我慢できない痛みでは無い。
目の前にはサリーがいて、ダンジョンだった。
「グレン、タオル使って!」
グレンは差し出されたタオルを受け取り、ぐちゃぐちゃになった顔を拭った。
「サリー、俺、心折れそう」
グレンはぐったりと座り込む。
「痛すぎて、もうやだ……」
「でも、10本は最低飲まないと」
「拷問だって……やめたい」
「グレン……」
「……」
「じゃあ、グレン。
次の7回目が一撃で倒せるかだけでもダメ?」
「…………」
「…………」
「…………」
「……わかったよ」
グレンは重い身体を起こし、回復ポーションを飲んだ。
「なら、7回目!グレンいくよ!」
ボス部屋が開くが、あっさり過ぎた。
「ほへ?」
グレンが振り返りサリーを見る。
「サリー今の……なに?」
あまりにも軽かった。
ただ、剣を振った。
精神統一も見極めもしなかった。
本当に剣を振っただけ、
それだけで倒していた。
7体目よ?7番目よ?ななよ?
「どう?グレン、凄いでしょ?」
サリーが嬉しそうに笑う。
「うん。なんだ、これ……」
自分の手を見て、剣を見る。
俺こんなに強くなったの?
サクっと切れたよ?
あっ、これヤバい、やっぱり魔髄は麻薬だ!
「もっと試したい!貪婪の焔も」
ほら、言ってしまった。
だって、痛いけど死なないなら……飲み放題?
「グレン、8体目、行ってみよぉおお!いぇーい」
「おう!」
グレンは進んでボス部屋へ向かった。
8体目、1撃。
9体目は2撃で倒し、
もう、あの激痛にも耐えられる。
痛いが、そりゃ痛いですが!
でも、耐えられる。
そう思えるようになったグレンは、
魔髄を2本連続で飲み――
「楽しぃぃぃぃぃぃ!サリー!楽しいぞ、これ!」
今までの苦痛など、すっかり吹き飛び、
どんどんこ~いと浮かれていたが、
「じゃー、50階ボス行こうか!」
(ん?50階?なんで?)
「えっ?11体目、ここでいいだろ?」
「無理かな」
「?」
「10体で打ち止め。もう出てこない」
「あっ、そういう仕様なのか?そ、そうか
50階かわかった。またどっかで壁殴るのか?」
「違う」
「違う?」
「単純〜50階まで最短で走るー」
「走るのか!」
「そう、グレン走るよー」
グレンは走りながら、ふと思った。
サリーがあまりにも迷わず、まるで既に道を知ってるかの様に走る。
なんで知ってるのかな?
この疑問も多分想像つかない出来事で消えるんだろうなぁ
サリーいつか本当の事教えてくれよ
50階・ボス部屋前到着
「結構走ったな」
「早くしないと固定されたら、他の人間も来るからね」
「でも、俺らが40階に居たことすら知らないだろ?まわりの奴ら」
「グレン、ダメ!ショートカットを見つける人は見つけるの!」
「おっおぅ。すまん」
(いや……いないと思うぞ?
まず出てきた壁の文字読めないからな)
「グレン、いくよ~」
サリーが扉を開き、グレンは構えた先に現れたボスは
フェンリル。
(貪婪の焔試したかったけど、
フェンリルは物理でぶん殴る方が早いからな)
1体目、1撃
(フェンリル、サクッは気持ちいい~)
2体目、5撃
(調子に乗りました。すみません)
「……きたか……この地獄タイムが」
「グレン、溜まってる分一気に行ってみよう〜
ただし、最後のはダメだよ」
「わかった 」
激痛。
3体目、1撃
走る。
4体目、2撃
走る。
5体目、3撃
飲むと地獄。熱い、焼けるように痛い。階層が上がると痛みも上がる仕様勘弁
叫びたいけど、我慢しなきゃ、震えながら大粒の汗が流れる。
そしてだんだんと、
ギュンと縮んだかと思うと次の瞬間ポヨーーンと、
何故か痛みの引き際が感覚として伝わり、
(あっ、終わる)
「よし、だんだん終わる時の感覚もわかって来たぞ。
ふぅ、ポーション飲むか」
「ねぇ、グレン60階、行こう。ここは捨てよう」
「えっ?」
「もっと早く行こう。こんな雑魚で他の冒険者に追いつかれても困る。ここは捨てよう」
50階だよ?
フェンリルは雑魚?
……やっぱりこいつの『ねぇ、グレン』はヤバい




