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捕獲はするもので、されるのはいやです

突然、ダンジョン中へ機械的な声が響き渡る。


『――対象確認。』


『捕獲対象を確認しました。』


『これより捕獲行動へ移行します。』


教師の顔色が変わる。


「なっ……捕獲対象!?」


王子も周囲を見回す。


「誰だ!何をした!」


その場にいた全員の身体を、

青い光が順番に照らしていく。


教師。


「……違います。」


王子。


「……違います。」


エマ。


「……違います。」


お嬢様。


「……違います。」


サリー。


『捕獲対象、確認。』


『対象名・サリー。』


「……は?」


サリーは自分の鼻先を前足で指した。


「私?」


『対象を捕獲します。』


「えっ。」


サリーは額に冷や汗を流す。


(やっべ。)


(《穿天》やりすぎた?)


(十五階で封印解除したのがまずかった?)


すると、続けてアナウンスが流れる。


『原因を解析します。』


数秒の沈黙。


『解析完了。』


『イベント進行率、四九・七%』


『悪役令嬢シナリオ、不完全』


『五〇%以下の為、物語の維持が不可能と判断』

 

『当該物語を破棄します』


『修正対象を捕獲します。』


サリーは間抜けな顔で


「そっちかよぉぉぉぉ!!」


「ラスボス倒したからじゃないの!?」


「イベント壊したからぁぁ!?」


頭を抱えて絶叫する。


「いやいやいや!

それなら最初から言えよ!」


「私、ただ返品セットを埋めようとしただけじゃん!」


「なんで私が捕獲対象なんだよぉぉぉぉ!!」


その瞬間。


ダンジョンの壁一面に、無数の魔法陣が展開された。


サリーは青ざめる。


「……あ」


「これ、本気のやつだ」


「かったりぃぃぃぃくっそぉぉぉぉ!!」


サリーは一目散に駆け出した。


「逃げるぞぉぉぉ!!」


ダンジョン中に警告が響く。


『捕獲対象、逃走。』


『追跡を開始します。』


「うっさい!」


「この馬鹿管理者ぁぁぁ!!」


「〇.三%ぐらい融通きかせろよぉ、見逃せぇ」


光の鎖が次々と飛んでくる。


サリーはひらり、ひらりとかわしながら振り返った。


「お嬢様!」


突然呼ばれ、お嬢様が顔を上げる。


「半月間、ミルクありがとーー!!」


「え……?」


「毎日のミルクとおやつも!」


「ふかふかベッドも!」


「最高の職場だったーー!!」


「サリーーーーー!」


サリーは避けながら、


「じゃあね!元気でね!」


「もうイベントは破棄されたみたいだから」


「好きに生きなよーー!!笑いたい時は笑って!」


「泣きたい時は泣いて!もう誰にも縛られんなーー!!」


そう言い残すと、サリーはさらに加速する。


『対象との距離、拡大。』


『追跡レベルを上昇します。』


「やだーーー!!」


「捕まってたまるかーーー!!」


「次のミルク探すんだからーーー!!」


泣きそうな顔で叫びながら、

最強の従魔はダンジョンの奥へと消えていった。


お嬢様は、涙を拭う事なく


「ありがとう!!!!サリーーーーー!!」


「私、返品頑張るわーーー」


大きく手を振りながら、叫ぶお嬢様。

それは解放された、彼女自身の笑顔だった。

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