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顔面偏差値Sの主人公

「どこだ!? どこぉ出口ぃぃぃぃ!!」


ダンジョンを全力疾走するサリー。


『捕獲対象、停止してください』


「やだぁぁぁ!!」


ビュンッ!


光の拘束鎖が飛ぶ。


「ひょい。」


ビュンッ!


「ひょいっと。」


軽いステップで避け続ける。


「めんどい!」


『追跡レベルを上昇します』


「上げんなぁぁぁ!!」


「出口どこだよ! 一本道じゃなかったのかよ!」


振り返れば、通路という通路が捕獲用魔法陣。

天井も、壁も、床も。


「多すぎでしょ!」


ピタッと止まる。


「よし。実力で出る」


『対象、停止を確認』


『捕獲を──』


「《第一封印解除》《穿天》」


銀髪の少女へ姿を変えた瞬間。


ズガァァァァァァァァン!!


白い閃光がダンジョンを一直線に貫き、空まで大穴を開ける。


「出口できたぞぉぉぉ!!」


『致命的損傷を確認』


『ダンジョン管理システム、緊急修復を開始します』


「追いかけるから悪いんだろーー!!」


そのまま穴へ飛び込む。


「でぐちぃぃぃぃ!!」


ひゅぅぅぅぅ……


「わぁぁぁぁ!!」


ドサッ。


「いてて……って、痛くない?」


顔を上げる。


燃え盛る城壁、爆発音、空を舞う黒い飛竜。


「えっ……犬?」


誰かに抱えられていた。


「どこから現れた!?」


騎士たちがざわつく。


サリーは見上げる。


白銀の鎧。銀髪・碧眼の、

絵画から飛び出してきたような美青年。


(きたぁぁぁぁ!!)


(顔面偏差値S!!)


「殿下!! お逃げください!!」


「魔王軍が、すぐそこまで迫っています!!」


青年は静かにサリーを降ろす。


「民の避難が終わるまでは退かない」


騎士たちが息を呑む。


(……あっ、察し)


(顔面偏差値S。)


(王子気質S。)


(主人公気質SS。)


(責任感SSS。)


(自己犠牲SSSS。)


(これSSS案件じゃん!!)


(絶対イベントの中心人物!!

関わったら世界救うやつ!しかもタダ働き!!)


そーっと後ずさる。


(よし。見なかったことにしよ)


だが、半歩遅く、


「君、その怪我人を守っていてくれないか」


サリーは天を仰いだ。


(終わった……ご主人ガチャ、またハズレ?!

普通、犬に『怪我人を守って』って頼む!?)


(いわね~よ!!私、まだ聖なる光とか 、

勘違い系とかで問題解決してませんけど??)


「殿下ぁぁぁ!!」


「来ました! 魔王軍です!!」


「突破されます!!」


青年は白銀の剣を抜く。


キィン……


「私が時間を稼ぐ」


「殿下!?一人では!」


「構わない」


(だから退けって!!)


(死亡フラグ自分で立てんな!!)


(……んー、ちょっと待て確認しよう。

イベントは、どこまで進んでる?

序盤イベントなら、最弱四天王なんだけど)


巨大な黒い玉座。

その上に座る男。

黒いクセに輝いてる王冠。

黒くてゴージャスな外套。

退屈そうな金色の瞳。


(違う違う違う。四天王じゃない、魔王!!)


(詰んだ。開始五分でラスボスとか聞いてない

この世界のバランス調整したやつ誰だよ!

テストプレイしろ、大事だぞ!)


王子が一歩前へ。


「私が食い止める」


(いや食い止められねぇって!)


(レベル差見ろ!)


(赤ネームどころじゃねぇ!!)


(名前がドクロ色じゃん!!)


魔王がこちらを見る。


「ほう。珍しい魔力だな」


(見るな。気付くな。お願いだから)


金色の瞳がサリーを捉えた。


(終わったぁぁぁ!見つかったぁぁぁ!)


「犬……いや、その姿は偽りか、面白い」


「ま、魔王様が犬に!」


四天王らしき者たちがざわつく。


王子も眉をひそめる。


「君を知っているのかな?」


(知らない、知らないことにしよう)


「クゥン?」


魔王は笑った。


「アハハ! まだ犬のフリか! 我が軍へ来い」


「断る!!」王子がサリーを庇う。


「この子は渡さない!」


(えっ?いや、一応私の意見聞いて?)


「では貴様を殺してから回収する」


「そうはいかない」


(はい?、何これ!?選択肢イベント!?)


(どっち選んでも戦闘じゃん!!

クソゲー!!)


「……君だけでも逃げるんだ」


(だから、お前が逃げろよ)


「私は、この国の王子だから、民を守る!」


魔王が腕を組む。

戦場が静まり返る。

全員がサリーを見る。


(どっちもめんどくせぇぇんだよ!!)


「犬よ。我が軍に来るなら、待遇は、食事付き、報酬あり、残業なしだ」


「魔王よ! 犬にまで手を掛けるとは卑劣な!」


「余は待遇を言ってるだけだが?」


「言い訳は聞かぬ! この犬は私が守る!」


(誰か、このイケメン返品してくれ。

マジで人の話聞かねぇ)


魔王を見る。

王子を見る。


(よし! 寝返ろう)


スタスタと魔王の前へ。


「い、犬?」


ビシッと敬礼


「わん」


(本日よりお世話になります。ぺこり。)


「犬ぅぅぅう!!何故?!」


(だってどう考えても、お前タダ働きさせるタイプじゃん!!

その正義を人にも押し付けるタイプ!!

私、知ってる!それ、お腹膨れないやつ!)


(魔王軍は、ボーナスでミルクあるかな?)


ぐぅぅぅ……

サリーのお腹が鳴った。


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