ダンジョン前で広げる大風呂敷
そして、ダンジョンに近付くにつれ、人混みが激しくなっていく。
「グレン、かなりの人が来てるね」
「まぁーな、ハイリスクハイリターンだからな。ボーナスダンジョンは」
「うん。どうしよ?」
「どうするって言ってもなぁ」
「このダンジョンって、あの弱い魔髄出した子だからなぁ」
「弱くなかったぞ?」
「時給以下は弱い」
「へいへい。でもその後は帰路喰いだぞ?」
「う~ん、グレンはあの文字読めなかったんだよね?」
「あぁ。タブレットの速報見ると、国から来たヤツらも読めなかったらしいぞ」
「んー」
「どうした?何を悩んでる?」
「魔髄の事……どうやって沢山取ろうかなと」
「お前に今更言ってもな感はあるけど、
そんなホイホイ出ても飲めるもんじゃ……」
グイッとグレンの顔を自分へ向けたサリーは、
「グレン、いい?魔髄タイムはRTAでもあるの、
取れるだけ取るの、目指せ10本!」
「何言ってるのかわからん」
そして、それを聞いていた周りの冒険者たちが、
「おいおい、随分と大風呂敷広げるねー、お嬢ちゃんはよーガハハハ、Aランカー様は子連れで10本魔髄取るってよぉ!!」
その大笑いにつられ周りから失笑と苦笑いが起こったが、
サリーはキョトンとしグレンは、威圧を乗せ睨んだまま、それ以外の反応はしなかった。
「こ、子連れなら、こ、こいつら敵じゃねーぞ!邪魔だけはすんなよな」
震えを抑えながら、相手は仲間の方に体を向け話始めた。
(なんでだろ?10本取るって言うとだめなのかな?)
「気にするな」とポンポンとサリーの背中を叩きゆっくりと進む。
「うん!グレン、私頑張って見つけるからね」
「あぁ、頼りにしてるよ」
(魔髄は落とすから何を見つけるのかな?
宝箱と勘違いか?
時々ズレるからな……俺たち)
やがてギルド側から、
『あとしばらくすると入場になります。
先着での入場です。
潜らない方は、入口付近に並ばずに横道にそれてください』
などとアナウンスが流れる。
周りを見渡すと、前回脱出で使った入口の上にまで街の人の姿や、
所々に屋台まで出ており、本当にお祭り騒ぎになっていた。
30分ほどかけて2人はゆっくりと入口まで来ると、
入り口付近のギルドテントにいた職員が、サリーとグレンを二度見し
「Aランカーのグレン・ハルヴァードが子連れで潜る」
「馬鹿なのか?!深くまで潜らないってことか?」
「こんなチャンスに?!……なぜ?」と、
声が聞こえるが、グレンには雑音でしかなく、
「グレン、進もう~進もう~」
「だな……しかし10階は固定に入ったからな」
「うん。10階までは固定で、この魔髄タイムのパターンが分からない以上、
ヒント大事になるからね!独り占め型なのか、万遍型なのか」
「サリー、詳しく」
「んー、やらないと分からないってこと」
「説明面倒くさがるの、だめだろ」
話をしながら時々魔物を倒し、5、6階と降りてくると、人混みも緩和され始めた。
ここに来るまでに、明らかに宝箱やドロップが、いつも以上に多い。
しかし、サリーは要らないと捨てて行こうとする。
「荷物になるからいらないよ?」
他の冒険者達がいいんですか?!と驚く中、
グレンもまぁ、10階層程度のドロップ品ならとそのまま放置なり他の冒険者に渡した。
「8階まで来たぞ」
「グレン!7階に戻ろう」
「7階?」
「うん。多分、7階が怪しい!」
「?」
「7階で私を降ろして」
「はいはい、サリーさん、お前の言う通りにするよ。ただ、説明は省くな。とりあえず言ってくれ」
「うん。なんか7階だけ違うの。作りが」
「作りが違う?……違ったか?」
「うん。違う。だから7階なんだよ。ショートカットがあるのは」
「はい?」
「ちょっとグレン、黙ってて」
「……いや、説明を求め……はい。黙ります」
サリーは、7階をグルグルと周り始めた。
一時間ほど経ったところで、
「ここだ!ここだよ!絶対そう!魔力がスカスカするもん!」
グレンは壁に触れたり、その辺を叩いたり、魔力がスカスカとは?
念の為、索敵も数回かけるが、
「何か変化あるのか?何もないぞ?」
「ある!絶対ここ!!!」
そう言うと、サリーはいきなり壁に向かって正拳突きを始めた。
「えっ?えっ?えーー??今度はなに?」
ドンッ!
「いち」
「に」
ドンッ!
「さん」
ドンッ!
「サリー!?何してるんだ!」
「ゲームと同じ!」
「…………ゲーム?」
「うん。何回かここでボタン押したら、隠し通路が開くやつ!」
「…………?」
サリーは首を傾げるグレンを見て、
「ゲーム、知らないの?」
「知らない」
「そっかぁ」
サリーは特に気にすることなく、また壁を見る。
「だから、何回かやれば開くかもしれない!」
「…………」
グレンはもう何も言わなかった。
いや、言えなかった。
何の話をしているのか、一切分からない。
それでもサリーは、
「このダンジョン、元気に準備中とか、元気に開店中!
ボーナスタイム付とか言ってたでしょ?」
「あぁ、お前が言うにはそう書いてるんだろ?」
「だから、このコアは遊んでるんだと思う」
「……落ち込んだり、遊んだりするんだ……」
「なら、開発者の遊びを取り入れてる可能性があるんだよ。
で、実際見つけちゃったの。ここだよ!絶対!
それと、文字の下に数字があったの。あれ魔髄の残量だよ」
「…………」
グレンは無言でサリーを見た。
何一つ理解できない。
ただ、一つだけわかってるのは、
こいつは今、壁を殴っている!
「……サリー」
「グレンもやらないとだめだよ?」
「俺もやるの?!」
ここにきて、壁殴るのか……




