食べたい、お腹痛い、ダンジョン行きたい
「お腹すいたよぉ、体濡らしたんだから、ご飯ちょうだいよ~」
「どういう理屈だよ」
「だって、お風呂入ったよ?」
「入ったからって飯が増えるわけじゃないだろ」
「でもお腹すいたぁぁぁ」
グレンはサリーのお腹を見て、それから先ほど吐いたことを思い出す。
「ダメだ、今度はちゃんと胃に優しいものにする」
「パン?」
「ダメ」
「ミルクは?」
「それは、少しだけな」
「やったぁ!」
「ただし、ゆっくり飲めよ」
「うん!」
グレンは、ぬるく温めた羊のミルクと重湯を少しづつだけサリーの前へ並べた。
「よし!これならいいだろう」
「グレン、ミルクだけでいいよ。なに、このどろどろとした水は?」
「重湯だ。消化にいいんだぞ。
弱った胃腸は、こういうものから慣らすんだ」
「え~もっと食べたい」
「無理だ。今はこれが最初」
サリーは渋々、重湯を口に運びながら、
隣のミルクをちらちらと見てある事に気付く、
「ミルク、少なっ!なに?もうブラック?労基案件?」
「はっ? 何がブラックなんだよ?……ろ、労基?なんだそれ」
「ミルクが少ない事に異議を言う所!」
「だから今は胃を慣らしてるんだって」
グレンは呆れながらも、
「ほら、元気になったら飲めるように、
羊のミルクはこれだけあるぞ」
「あ~!!ある!グレン〜大好き〜飲む〜」
「だめだっ!それ食べてから!」
「飲みたいぃぃ……」
ミルクに突進するもあえなく撃沈のサリー
グレンの足元で涙目になりながらも、しぶしぶテーブルに戻り、
重湯をちびちび口に運ぶ。
「……ミルク……」
「まずはそれを食べて、様子を見る」
「……ミルク……」
「聞こえてる」
「いっぱいあるのにぃぃ」
「あるからって全部飲んでいいわけじゃない」
騒がしい食事が終わり、ソファで丸くなるサリー
「もうやだーこの身体マジ弱すぎ!
なんで、ミルク飲む前にお腹痛いのよ!意味わかんないよ!」
「いや、お前ミルクも少し飲んだろうが」
「う~お腹痛いよぉ、なんで〜?」
小さな手でお腹を押さえ丸くなるサリー
「この体、不便すぎるぅ。
ちょっと寝ただけでミルク飲めなくなるなんて、
管理者馬鹿じゃん」
「な~に、ぶつぶつ言ってんだよ」
グレンは片付けながら、ちらりとソファを見てる。
「そんだけぶつぶつ言えれば元気だな」
「グレン、燃やさないでくれて、ありがとう」
「……あのなぁ、燃やされたら死んでる
……いや、死んでるから燃やされるんだよ。ばーか」
「……?グレン、難しいこと言う」
「お前が変なこと言うからだよ」
グレンは片付けが終わり、ソファでタブレットを眺めていると、
丸くなっていたサリーが顔を上げた。
「グレン、何見てるの?」
「ん〜ダンジョンのリアル映像。今日の昼から解放なんだ」
「ふ~ん」
そう言いながら、何気なくグレンの手元を覗き込んだサリーは、
画面に映ったものを見た瞬間、表情を変えた。
「グレン、これ!」
サリーが指差したのは、ダンジョンの入口に刻まれている誰も読めない文字。
「ん?」
「これ!これ!」
サリーは画面へ身を乗り出し、食い入るように見たあと、グレンの服を掴む。
「グレン、早く行こう!!」
「え?」
「ダンジョン行かなきゃ!」
「いや、昼からだぞ?今まだ、10時前」
「早く!早く早く!」
「ちょ、待てって!お前、さっきまで腹痛いって丸まってただろ!」
「もう大丈夫!これは行かないとだめなやつ!」
「大丈夫って……」
「グレン、早く!!」
サリーはグレンを急かすように、ぐいぐいと服を引っ張り始めた。




