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そのダンジョン、調査して大丈夫?

「どうして、こうなる……」


ギルド長の疲弊した声と共に、会議室は重い空気に包まれていた。

ダンジョンの封鎖が、限界を迎えたのだ。


厳重な警戒態勢を敷き、誰一人として中へ入れないようにしていたが、

それも今日の昼までがリミットとなった。

それ以降は、封鎖を維持することは難しいと、

調査団とSランカーチームそしてギルド判断が一致した。


その原因の一端となったのは、

調査員が白銀の戦慄と一緒に持ち帰ったアイテムを

街中から注目を集めている、ダンジョン入口前で、


「10階層で、魔髄が出た!」


と、興奮しながら大声で言ってしまった。


「馬鹿が!魔髄ほどの高レアアイテムを大声で漏らすとは」

ギルド長は思い出すだけで腹が立ち、

机を強打しながらイライラを発散させていた。


そして、次々と明らかになる事実。


通常なら、階層を攻略すると階層停止のアナウンスが流れ、

攻略者は専用の転移門から地上へ戻る。

ところが今回は、そのアナウンスが流れず、

入口付近で見張っていた冒険者たちが、

攻略者が転移門ではなく通常の入口から戻ってきたことで異変に気づいた。


さらに2陣目、3陣目と続いてもマップに変化がない事を、

研究者に同行していたランカーから情報が漏れ、

魔髄まで立て続けに報酬として出たことで、

隠し切れる状況ではなくなっていった。


そうして一つ、また一つと情報が積み重なり、

やがてダンジョンを知る者たちの間では、

一つの可能性が浮かび上がり――それが、ほぼ確定した。


過去にも、ごく稀に確認されたことがある。

通常のダンジョンとは異なり、階層を攻略しても停止せず、

ボス部屋もマップも罠も何も変化しない。

それでいて、通常では得られないほどの資源が発生する。


通称――ボーナスダンジョン


その存在が確実視された瞬間から、街の空気は激変した。

冒険者だけではなく、街全体が一刻も早い解放を求め始めた。


ギルド全体が、重いため息を吐いた。


封鎖を続ければ、今度は街そのものが持たない。

かといって解放すれば、冒険者だけでなく、

低ランクの者や一般人までもが一攫千金を夢見てダンジョンへ群がることになる。


しかも、ギルドが最後の頼みとして期待していた、

ダンジョン入口に現れた文字すら、未だに解読できていない。


研究気質の調査員は、ダンジョン内部に

文字を読み解く手掛かりが残されているはずだと考え、

白銀の戦慄と共に10階まで調査した。


未知の文字が出現した場合、

これまでの例では、ダンジョンそのものにも何らかの変化が、

起こっていたからだ。


たとえば1階に入れば、それまで「一階」を意味していた文字とは異なる文字が同じ場所に現れる。

そこから階層ごとの変化や仕掛けと照らし合わせていけば、

「この文字は1階を意味しているのか」と、

既知の情報を手掛かりに少しずつ対応関係を推測できた。


ところが今回は、何も変わらない。

入り口以外の文字のみ未知。

それ以外は全て既存文字。


「まったくの未知は、初めてです!答え合わせが出来ないんです」

研究気質の調査員は、困り果てているというより、むしろ嬉しそうだった。


研究者にとって、それは途方もなく厄介で

同時に、これ以上ないほど興味深いダンジョンだった。

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